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テイラー・スウィフトの「ハリス支持」表明から24時間で動いた40万人の「未登録者」層

2024年09月20日 18時05分56秒 | 文化と芸能







テイラー・スウィフトの「ハリス支持」表明から24時間で動いた40万人の「未登録者」層 ファンが語る「リベラルと保守両方にアピールし得る影響力」
9/19(木) 7:02配信




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AERA dot.
「カマラ・ハリス支持」を表明したテイラー・スウィフト(写真/アフロ)


 11月の米大統領選に向け、歌手のテイラー・スウィフトが「カマラ・ハリス支持」を表明した。情勢に大きな影響を与えると見られるこの動き、米国のテイラー・ファンはどう受け止めたのかを取材した。


【写真】テイラーが「ハリス支持」を表明した画像


*  *  *


「この声明、かなり綿密に計算されたタイミングで発表された感じ」


 ミシガン大学の4年生で21歳のオリビア・ケインは、テイラー・スウィフトが、9月10日の大統領選ディベートTV放映の直後に、インスタグラム上で「カマラ・ハリス支持」を表明したのを見て、そう感じた。中学生の頃からテイラー・スウィフトの曲を聴いて育ったケインは、今年5月にフランスのパリで行われたスウィフトのコンサートに米国から飛行機に乗って駆けつけたほどの大ファンだ。


 ケインは、ドナルド・トランプ陣営が、生成AIによって加工を施されたスウィフトやファンたちの画像をSNS上に掲載し、あたかも、テイラー・スウィフト本人がトランプを支持しているかのようにネット上で演出していたのを見て、驚愕し、憤慨した。テイラー・ファンたちの間では「なぜテイラーはAI加工された自分の顔写真を勝手に利用したトランプ陣営を法廷で訴えないのか。こんな行為をされても沈黙したままで、なぜ反論しないのか」という疑問の声がかなり出ていた。


 だが、ケインは、今年8月にオーストリアのウィーンで開催予定だったスウィフトのコンサートが「テロ攻撃計画」を受けて中止になった事件が、全てを変えたのだと分析する。


「自分だけでなく、ファンの命も狙われる可能性があるとわかった以上、テイラーはかつてないレベルで自分の行動に慎重にならざるを得なかったはず。だから批判されても長い間、沈黙していたのだと思う」


 そしてハリス支持を表明するのに、最も安全なタイミングを計算した結果、ディベート終了の直後との判断を下したのだろう、と語る。


 ボストン在住の臨床心理士で、心理学者でもある35歳のクリス・サーピーも、大のテイラー・ファンだ。「1989」のアルバムが一番好きだと語る。彼女は、スウィフトが「ハリス支持」を表明した24時間以内に、40万人以上が、スウィフトがインスタ上に張ったリンク経由で「有権者登録」手続きをうながす政府サイトを訪れた社会現象を、複雑な気持ちで見つめていた。


「セレブリティが自分のプラットフォームを使って、民主主義をポジティブな方向に動かしていくのは好ましいこと。でもその一方で、セレブに言われなきゃ動かない人がこれだけ多いというのもちょっと悲しい。この切羽詰まった時期に、まだ有権者登録をしていなかった市民がこれだけ多数いた、ということは、もしテイラーが呼びかけなければ、貴重な票が無駄になっていた可能性もあるわけだから」


 一方、大学生のケインは、政治に無関心な人々に「有権者登録」をさせるのが、どれだけ至難の業か、実体験から骨身にしみて知っているだけに、40万人がスウィフトによって登録をうながすサイトに誘導されたという事実の重さをかみしめた。


 ケインは高校3年生だったコロナ禍中に、地元政治の行方に強い危機感を抱き、出身地であるニューヨークの路上に立ち、民主党の地元候補者のボランティアとして、市民に有権者登録をよびかける活動をした。「道行く人々に『有権者登録しませんか?』と呼びかけても『ニューヨークはどうせ民主党が強いんだから、自分ひとりぐらい投票しなくても結果に影響ないから』と多くの人に素通りされてしまった」と言う。


 アメリカでは有権者登録をしない米国市民は選挙で投票できない。それが実は結構なハードルなのだ。


 では、ハリス陣営がのどから手が出るほど欲しいであろう「トランプ支持者だけどテイラーが好き」という人の票や「トランプかハリスか迷っている」という人の票の行方は、このスウィフトの「支持声明」によって影響を受けるのだろうか?


 ケインとサーピーは「トランプかハリスかの選択で迷っている人を、自分の周囲ではひとりも見たことがない」と言う。


 また、サーピーは昨年、ミズーリ州のカンザスシティーで開催されたスウィフトのコンサートを観に行った時のことをこう説明した。


「ミズーリ州は言わずと知れた共和党の牙城。つまり政治的には真っ赤な保守の土地。この地に住んでいた私はそれを当然熟知している。でも、テイラーのコンサート会場内では、トランプ支持者っぽい人は見かけなかった。もしかしたら、私のアンテナが鈍いだけかもしれないけど、テイラー・ファンたちの中にトランプ支持者が存在するのか、謎」


 その会場内では、ファン同士がフレンドシップ・ブレスレットを交換し合う光景が見られ、後にスウィフトの恋人となるNFLアメリカンフットボールチーム「カンザスシティー・チーフス」の選手、トラヴィス・ケルシーが、この会場で、スウィフト本人にフレンドシップ・ブレスレットを手渡していたとも伝えられている。


 サーピーは会場の様子をこう語る。


「多くの米国でのテイラーのコンサートは、白人女性の観客が大多数。はっきり言って人種の多様性はそれほどなく、均質な集団で、その点はあまりいいことではないなと思う。ただ、ファン同士の仲は良く、非常に楽しくて和気あいあいとした安心できる空間であることは確か」


 そう語るサーピー自身も白人女性だ。


「テイラーの恋人の選択に多くのトランプ支持者たちが驚愕して真っ青になっていたのが印象的だった。これ以上なくアメリカ的で、愛国的という形容詞さえ似合ってしまうカップルだけに、保守派は自分の領域に、リベラルなテイラーが突然土足で入ってきたように脅威を感じたはず」


 だが、カリフォルニア在住で71歳の歌手のキャシー・ロックスは、やや違った見方をしている。


「テイラーが育った土地は南部のテネシー州。南部の歴史は、壮絶な黒人差別の歴史でもある。1950年代に生まれた私にはその当時の記憶が鮮明にある。そんな中で、テイラーは南部の良心の部分を体現してきた典型例。しかも彼女の歌手としての出発点はカントリー・ミュージックだったことを抜きには語れない」


 保守派と親和性が高いカントリー・ミュージックというジャンルで人気を得て活躍し、その後、世界的なポップスターへとキャリアの変遷を経てきたスウィフト。


 カントリー・ミュージックを聴くのが好きで、公立高校や大学のスポーツ行事に招かれて、アメリカ国歌を観客の前で歌ってきた歌手のロックスにとって、スウィフトがリベラルと保守派の両方にアピールし得る最大の魅力とは、コロナ禍中、コミュニティーのフードバンクに多額の寄付をしたりするなど「自分が得た名声や金銭を人々のために使おうと行動してきた利他行為」だと言う。


 カトリック教徒の両親の元、4人きょうだいと共に育ったロックスは、1970年代に自分が同性愛者であることを告白すると、世間からさまざまな差別を受けた。ストレス解消のためにお酒に稼ぎを注ぎ込んだ結果、「ベビーブーマー世代でありながら不動産を購入しそこない、月1400ドルの賃貸アパートでギャングの襲撃も時には起きるような地域に住んでいる」とジョーク交じりに自虐的に語る。


「だから、今の若い世代が、物価の高騰に悲鳴を上げ、いくら働いても家を買えない苦しい生活で政治的無気力に陥ってしまう気持ちが、手に取るようにわかる」


 ロックスは、ケインやサーピーと同様、白人女性だが、スウィフトのコンサートチケットを買う金銭的余裕はない。だが、スウィフトのドキュメンタリー映像を見て、その中で、過去にスウィフトが、トランプ支持者から批判を浴びせられるとしても、自分の政治信条を明確に主張したいと発言していたことに感化されたと語る。


 また、10代の頃からスウィフトの音楽に浸ってきたというサーピーは「ネット上のリベンジポルノ」というインターネット社会の深刻な問題を題材に司法心理学の研究をし、博士号を取得した。さらに臨床心理の専門家としても、これまで、さまざまなトラウマを抱える患者たちと向き合ってきた。 


 そんな彼女がスウィフトに惹かれるのは「自分で詞を書き、音楽を作ったアルバムの原盤権を失うというかなり精神的につらい目に遭っても、新たにアルバムを録音し直すというど根性を見せ、自分の尊厳を失わなかったところ」だと言い、また「今後、生成AI画像などのフェイク画像で受けた被害に対し、もし彼女が本気で訴訟を起こしたら、今後の重要な判例になり得る闘いをしそうな予感がして、多くの同様の犠牲者を救う法律の制定に繋がるのではないか」と期待もしている。


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 スウィフトのハリス支持表明という後押しによって、ハリスはトランプに勝てると思うか?ーーという質問に、マサチューセッツ州ボストン在住のサーピーは「その可能性はあると思う」と答える一方、ミシガン州という激戦地に住むケインは「テイラーのハリス支持が勝利の決め手になることはない。民主党にエネルギーを注入する効果はあるけど」と即答した。


 コロナ禍中、高校の授業がリモートで行われる中、毎日スウィフトの音楽を聴いて慰められ、喜びと希望を忘れずにすんだと語るケインは「テイラーのコンサートに行くとファン同士の連帯を強く感じられて、政治的に分断された世の中の現状とは全く違った景色が見える」と語る。  


 その一方で、ケインは、ガザに住むパレスチナ人たちがイスラエルからの爆撃を受け、すでに大量の死者が出ていることに、スウィフトが沈黙していることには失望した気持ちを抱いてもいる、と吐露した。


 サーピーも、スウィフトのファンならばスウィフトがすることを全て肯定すべきという崇拝型のファンとは自分は一線を画している、と言う。


「いくらスターであっても彼女はあくまでひとりの人間。どんなにフォロワー数が多くても、巨万の富を手にしていても、ひとりの女性であることには変わりなく、女性が発言すれば、男性が発言するのとは全く違ったレベルのとんでもないバッシングを受ける。今回で言えば、たとえばイーロン・マスクは早速、性的脅しと取れるメッセージをテイラーに対してX上で掲載した。テイラーがそれに恐怖を感じないわけがなく、彼女が批判を受けずに呼吸ができる日は1日たりともないはず。それでも自分が持つパワーを使って世の中を変えようとする彼女に、私は共感する。私は猫ではなく、犬派だけど、同じ子どものいない女性として連帯したい」と語った。


(在米ジャーナリスト・長野美穂)




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