(2020年訪問)
※青森ミステリー見聞録より記事を抜粋し、加筆・修正しております。
唯一無二!超絶怒涛の圧倒的おもてなし!
妖怪テーマパーク&座敷わらしもいる……?
(青森県むつ市田名部町8-6)
青森県の北の果て、恐山で有名な下北半島のむつ市にあるとてつもないインパクトの旅館である。
私がその存在を初めて知ったのは、フジテレビのテレビ番組「何だコレミステリー」だったと思う。
座敷わらしの噂がある旅館を原田龍二が調査するシリーズで登場し、鏡の隅で動く白いカタマリの撮影に成功していた。
その後も「座敷わらしがいる旅館」としてネットでも度々ヒットしたが、調べていくうち、どうも妖怪のウワサ以前にオーナーがとんでもなく個性的らしいという事に気づいた。
まとめると下記の通りである。
・「とびないさん」という、プラモやモデルガンなど工作が趣味のおじさんが一人で切り盛りしている。
・館内は「とびないさん」のコレクションや創作物で溢れている。
・「とびないさん」はともかく話好きで、チェックインからチェックアウトまで
終始マシンガントークを展開し、付きっきりでおもてなししてくれる。
・そのサービスの特性上、1日1組しか泊まれない。
……以上である。珍スポット好きにはたまらなく気になる場所ではないか。
という事で2020年10月、青森県の摩訶不思議な場所を巡る青森ミステリーツアーを決行する際、旅に最もふさわしい旅館という事で宿泊を決意したのだが、案の定、予約の段階から一風変わっていた。
電話を入れた際、とびないさんが「もしもし」とお出になったので「とびない旅館さんですか?」と聞くと「そうでございますけれども何か事件でございますでしょうか」と訳の分からぬ返答……。
戸惑いつつも「いえ、宿泊したいんですけど……」と伝えると
「大丈夫?ちゃんと調べた?ここ普通じゃないよ??」と半笑いで呆れたようなご様子。
だが、これは想定内。
事前の下調べで、この旅館を利用する際は普通の宿泊客ではない旨、納得してもらう必要があるという事を知っていたのだ。
「日本全国の変わった場所を巡っている」「プラモ製作が趣味で、ぜひコレクションを見たい」「座敷わらしにも会ってみたい」などと慎重に伝えるとようやく「合格!」のお言葉が。やれやれである。
そしていよいよ宿泊当日、2020年10月18日。
恐山の観光を終え、ついにむつ市のほぼ中心部、下北交通のバスターミナルや観光物産館のすぐ近くにある旅館に到着した。
時間は午後4時半過ぎである。
事前情報では、駐車場に車を停めるや否や、音を聞きつけたとびないさんが飛び出してくるという話だったが、車から降りてもしんと静まりかえっている。
しかし、年季の入った外観を何枚か撮っていると、正面のガラス戸がガラガラと開き、開口一番「大変な事に気付きました~」と笑顔のおじさん登場。手にはなぜか猟銃のモデルガンを持っている。
とびないさん(59)だ。
お姿はネットなどで何度も見ているので、有名人に会えたかのような感覚である。
何から突っ込めば良いか分からないが、ともかく大変な理由を聞くと、どうやら夕食の炊き込みご飯に入れるホタテを買い忘れていたらしい。
「あとで一緒に行こうね。これも旅のうちでしょ。まぁ入って」と館内に入れてもらう。
マスクをせずに来客対応ができる最新システム(段ボールを重ね、顔部分に透明シートを貼ったもの)
などの説明を受けながら、とびないさんの事務所(兼制作場所、兼接客スペース)へと案内されると
さっそく荷物を置かせてもらうのもそこそこに仕事の話、政治の話などが次々と飛び出す。
廊下に旧・ヤマダ模型の車のプラモがあったので、私も再販版を作ったことがある旨を伝えると
「話の分かる人でよかった!来るべくしてきたね」と大層喜んでくれた。
気に入ってもらえたようで良かった。
5時半ごろ、ホタテの買い出しのため一緒に車へ乗せてもらい、むつ市内へ繰り出す。
北海道から来た私のために、大間産のホタテをぜひ夕食に使用したいという。
「生は焼くと出汁が出て最高だからね」と話す。
行きつけのスーパーや鮮魚店を巡り、3店舗目でようやく発見。喜ぶとびないさんを見て、
こちらもほっとする。
買い物中も模型の話が尽きないが、レジに並んでいるときに突然表情を変え
「ところで、夜に何か『出る』のは大丈夫だよね?」と念押しされドキッとする。
そういえば「座敷わらし」の存在をすっかり忘れていた。
なぜ座敷わらしだと断定できるのか聞くと、妖怪研究の専門家が調査に訪れ、
その事象の特徴から座敷わらしと断言されたという。
興味深いので後でゆっくりお聞きするとしよう。
旅館へ戻ると「いろいろやってくるのでこれで遊んでて」と戦車のラジコンを手渡され、とびないさんは2階へ消えていった。
なんでも、モデルガンの修理に没頭するあまり、部屋の準備ができていないという……。
チープな戦車のラジコンは、とびないさんの手によって後退時に旋回するように改造されている。
事務所の隣にある、本来であれば食堂……のはずだが、机の上は作業中のモデルガンやプラモに占領されている。
壁には戦隊ヒーローのソフビや、アメコミのおもちゃなどが貼り付けられている。
なかなか立派な受付。薄暗い中でひとり写真を撮っていると、時計の7時の鐘がボーン、ボーンと鳴り出した。
これは結構雰囲気があるな……と急に怖くなる。
廊下には年代物のプラモが山積みに。見る限り、車、銃に限らず飛行機、船、建築など守備範囲はかなり広いようだ。
2階から降りてきたとびないさんが「これからご飯支度だから、それまでコレクション見てる?」と言うので、奥の部屋に案内してもらった。
かなり広い館内を一番奥まで進むと、元は宴会場だったとおぼしき大広間が。
電気が付けられると、ぜいたくに部屋全体にコレクションが散乱……もとい展示されており、圧倒されてしまった。
青いネコは、とびないさんと仲の良い青森のブロガー「ねこぜ」さんのキャラクター。ロボットの前には、なぜかGLAYのサイン入りポスター(2016年)まである。
奥には軍服各種と、戦車を走らせる自作のジオラマなど。
ガラスケースの中には、昭和アニメのキャラクター人形やメカの関連おもちゃがたくさん。特撮もお好きなようだ。
その他、スプレーで着色途中のプラモや制作道具などが机に置かれ、どうやらこの部屋では子どもたちへの制作教室なども開催しているらしい。
そして大広間の最も奥には、宿泊客のお供え物が並ぶ座敷わらしの祭壇があった。
なぜかとびないさんのファン?による肖像画まである。
しまった、私も六花亭のお菓子でも買ってくればよかった。
ご飯支度がひと段落したのか、とびないさんがやってきて展示物をいろいろ解説してくれる。
有線から無線に改造したラジコン戦車、アニメの通りにあらゆるギミックが仕組まれたメカ、苦労した戦闘機やロケットの模型などなど……。
詳しくは割愛するが、嬉々として語るとびないさんは少年のようだ。
午後9時15分、待ちに待った炊き込みご飯の完成だ。
「ほらほら、出来たてのところ撮ってよ」と炊飯器を開けるポーズまで取ってくれる。サービス精神旺盛だ。
そのまま事務所(兼制作場所、兼接客スペース)でとびないさんと一緒に夕食だ。
おっしゃっていた通り、大間産のホタテがごろごろ入ったご飯は香りが最高。
「好きなだけおかわりしていいよ!女性のお客さんだってたくさん食べてくんだから」という言葉に甘え、3杯ほど頂いてしまった。なんとも贅沢。
食後はそのままお酒を飲みながら、とびないさんの息つく間もないマシンガントーク。
政治論、時事問題、地元の市議会議員のココではとても書けないゴシップネタ、土地トラブル……などなど。
ここも詳しくは割愛……というか、覚えてられない。突然話がぶっとぶので付いていくのも大変だ。
「プラモの素組みはただの習作、消費」「落としたプラモの部品を手をかざして、念力で探し当てたことがある」などのありがたい(?)話も頂いた。
話の合間に、とびないさんの秘密のコレクション部屋や、2階の一室に作られたプラモ制作教室なども見せてもらう。
「あぁ~、暗いのやだ」と言って、部屋を去るギリギリまで電気を消さないのが意味深で、少し怖かった。
いよいよ、気になっていた座敷わらしについて聞いてみる。
とびないさんによると、先代から引き継いだ築数十年のこの旅館は、見える人からすれば幼稚園のような場所だという。
かなり広大な建物内にとどまらず、屋外の敷地にも子どもたちが走り回っている状態らしい。
「何か変だな?」と思い始めたのは2009年ごろで、原発の整備員が泊まっていた部屋が
内側から鍵が掛けられ、扉が開かなくなる。
その後、女性の宿泊者がイヤリングや髪の毛を触られる、といったエピソードが増えていった。
体験談から1号室には男の子、2号室には女の子がいるといい、宿泊客の性別によって泊まってもらう部屋を分けているそうだ。
なお、とびないさんはその姿を見たことはなく「足音を2回聞いただけ」。
NHKのドラマ「赤毛の●ン」や「未来少年コ●ン」を見せられながら、なおもトークは続き、時間は深夜1時。
時折うつらうつらするとびないさんを見て「もう、寝ましょう」と提案する。
「ちなみに、きょう泊まってもらう1号室にも出たんだけど」ととびないさんは最後に切り出す。
心霊現象や妖怪否定派の人が冷やかしで泊まりに来て、その日は「いる」「いない」論争で半ば喧嘩状態になってお開きになったらしい。
翌日、とびないさんが朝ご飯の支度をしていると、2階からバタバタと慌ただしく降りてくる音がして
「とびないさん、出た出た!いいことあるかな!」と興奮気味に報告したそうだ。
どんな現象に遭ったのかはあえて聞かなかったそうだ。
かなり信憑性の高い話だが、部屋に行く直前にそれを言うか!
とびないさんにおやすみを言い、ギシギシと鳴る階段を上って2階の部屋へ向かう。
ここまで、とびないさんの明るくにぎやかな人柄でかき消されていたが、
いざ一人になって急にしんとなると、その対比も相まって不気味な雰囲気が漂う。
南北に細長い館内は中央の廊下と共同の洗面所以外、消灯されている。
こんなに部屋数のある旅館なのに、いま館内に居るのは自分ととびないさんだけ。
とびないさんの「物理的に怖い状況だよね」という言葉が頭を巡る。
さて、長い廊下の突き当たり左側「1号室」に到着した。テレビ横の姿見が怖い。
チェックインから約9時間を経て、ようやく泊まる部屋を見たことになる。普通の旅館ではあり得ないだろう。
豆電球が灯された部屋に近づくにつれて、甲高い「ピーーー」という音が大きくなってきて早速身構えたが、部屋に設置された防災無線ラジオから発せられている音だった。もう。
洗面所の細長い鏡の前でぽつんと立って歯磨きしている時は生きた心地がしなかったが、何も起こらなかった。
廊下から部屋へ歩いて行く動画を撮ってみたりもしたが、これも違和感は無し。
セルフタイマーで自撮りしてみたが、何か変わったものは写っているだろうか??
もう少し検証したかったが、怖さがピークなのでさっさと布団に潜り込む。
いつもは完全に消灯するのだが、さすがに今日は豆電球以上に暗くできなかった。
まあ、「何か」がボンヤリと見えたらそれで怖いけれども。
後編へ続く。
※青森ミステリー見聞録より記事を抜粋し、加筆・修正しております。
唯一無二!超絶怒涛の圧倒的おもてなし!
妖怪テーマパーク&座敷わらしもいる……?
(青森県むつ市田名部町8-6)
青森県の北の果て、恐山で有名な下北半島のむつ市にあるとてつもないインパクトの旅館である。
私がその存在を初めて知ったのは、フジテレビのテレビ番組「何だコレミステリー」だったと思う。
座敷わらしの噂がある旅館を原田龍二が調査するシリーズで登場し、鏡の隅で動く白いカタマリの撮影に成功していた。
その後も「座敷わらしがいる旅館」としてネットでも度々ヒットしたが、調べていくうち、どうも妖怪のウワサ以前にオーナーがとんでもなく個性的らしいという事に気づいた。
まとめると下記の通りである。
・「とびないさん」という、プラモやモデルガンなど工作が趣味のおじさんが一人で切り盛りしている。
・館内は「とびないさん」のコレクションや創作物で溢れている。
・「とびないさん」はともかく話好きで、チェックインからチェックアウトまで
終始マシンガントークを展開し、付きっきりでおもてなししてくれる。
・そのサービスの特性上、1日1組しか泊まれない。
……以上である。珍スポット好きにはたまらなく気になる場所ではないか。
という事で2020年10月、青森県の摩訶不思議な場所を巡る青森ミステリーツアーを決行する際、旅に最もふさわしい旅館という事で宿泊を決意したのだが、案の定、予約の段階から一風変わっていた。
電話を入れた際、とびないさんが「もしもし」とお出になったので「とびない旅館さんですか?」と聞くと「そうでございますけれども何か事件でございますでしょうか」と訳の分からぬ返答……。
戸惑いつつも「いえ、宿泊したいんですけど……」と伝えると
「大丈夫?ちゃんと調べた?ここ普通じゃないよ??」と半笑いで呆れたようなご様子。
だが、これは想定内。
事前の下調べで、この旅館を利用する際は普通の宿泊客ではない旨、納得してもらう必要があるという事を知っていたのだ。
「日本全国の変わった場所を巡っている」「プラモ製作が趣味で、ぜひコレクションを見たい」「座敷わらしにも会ってみたい」などと慎重に伝えるとようやく「合格!」のお言葉が。やれやれである。
そしていよいよ宿泊当日、2020年10月18日。
恐山の観光を終え、ついにむつ市のほぼ中心部、下北交通のバスターミナルや観光物産館のすぐ近くにある旅館に到着した。
時間は午後4時半過ぎである。
事前情報では、駐車場に車を停めるや否や、音を聞きつけたとびないさんが飛び出してくるという話だったが、車から降りてもしんと静まりかえっている。
しかし、年季の入った外観を何枚か撮っていると、正面のガラス戸がガラガラと開き、開口一番「大変な事に気付きました~」と笑顔のおじさん登場。手にはなぜか猟銃のモデルガンを持っている。
とびないさん(59)だ。
お姿はネットなどで何度も見ているので、有名人に会えたかのような感覚である。
何から突っ込めば良いか分からないが、ともかく大変な理由を聞くと、どうやら夕食の炊き込みご飯に入れるホタテを買い忘れていたらしい。
「あとで一緒に行こうね。これも旅のうちでしょ。まぁ入って」と館内に入れてもらう。
マスクをせずに来客対応ができる最新システム(段ボールを重ね、顔部分に透明シートを貼ったもの)
などの説明を受けながら、とびないさんの事務所(兼制作場所、兼接客スペース)へと案内されると
さっそく荷物を置かせてもらうのもそこそこに仕事の話、政治の話などが次々と飛び出す。
廊下に旧・ヤマダ模型の車のプラモがあったので、私も再販版を作ったことがある旨を伝えると
「話の分かる人でよかった!来るべくしてきたね」と大層喜んでくれた。
気に入ってもらえたようで良かった。
5時半ごろ、ホタテの買い出しのため一緒に車へ乗せてもらい、むつ市内へ繰り出す。
北海道から来た私のために、大間産のホタテをぜひ夕食に使用したいという。
「生は焼くと出汁が出て最高だからね」と話す。
行きつけのスーパーや鮮魚店を巡り、3店舗目でようやく発見。喜ぶとびないさんを見て、
こちらもほっとする。
買い物中も模型の話が尽きないが、レジに並んでいるときに突然表情を変え
「ところで、夜に何か『出る』のは大丈夫だよね?」と念押しされドキッとする。
そういえば「座敷わらし」の存在をすっかり忘れていた。
なぜ座敷わらしだと断定できるのか聞くと、妖怪研究の専門家が調査に訪れ、
その事象の特徴から座敷わらしと断言されたという。
興味深いので後でゆっくりお聞きするとしよう。
旅館へ戻ると「いろいろやってくるのでこれで遊んでて」と戦車のラジコンを手渡され、とびないさんは2階へ消えていった。
なんでも、モデルガンの修理に没頭するあまり、部屋の準備ができていないという……。
チープな戦車のラジコンは、とびないさんの手によって後退時に旋回するように改造されている。
事務所の隣にある、本来であれば食堂……のはずだが、机の上は作業中のモデルガンやプラモに占領されている。
壁には戦隊ヒーローのソフビや、アメコミのおもちゃなどが貼り付けられている。
なかなか立派な受付。薄暗い中でひとり写真を撮っていると、時計の7時の鐘がボーン、ボーンと鳴り出した。
これは結構雰囲気があるな……と急に怖くなる。
廊下には年代物のプラモが山積みに。見る限り、車、銃に限らず飛行機、船、建築など守備範囲はかなり広いようだ。
2階から降りてきたとびないさんが「これからご飯支度だから、それまでコレクション見てる?」と言うので、奥の部屋に案内してもらった。
かなり広い館内を一番奥まで進むと、元は宴会場だったとおぼしき大広間が。
電気が付けられると、ぜいたくに部屋全体にコレクションが散乱……もとい展示されており、圧倒されてしまった。
青いネコは、とびないさんと仲の良い青森のブロガー「ねこぜ」さんのキャラクター。ロボットの前には、なぜかGLAYのサイン入りポスター(2016年)まである。
奥には軍服各種と、戦車を走らせる自作のジオラマなど。
ガラスケースの中には、昭和アニメのキャラクター人形やメカの関連おもちゃがたくさん。特撮もお好きなようだ。
その他、スプレーで着色途中のプラモや制作道具などが机に置かれ、どうやらこの部屋では子どもたちへの制作教室なども開催しているらしい。
そして大広間の最も奥には、宿泊客のお供え物が並ぶ座敷わらしの祭壇があった。
なぜかとびないさんのファン?による肖像画まである。
しまった、私も六花亭のお菓子でも買ってくればよかった。
ご飯支度がひと段落したのか、とびないさんがやってきて展示物をいろいろ解説してくれる。
有線から無線に改造したラジコン戦車、アニメの通りにあらゆるギミックが仕組まれたメカ、苦労した戦闘機やロケットの模型などなど……。
詳しくは割愛するが、嬉々として語るとびないさんは少年のようだ。
午後9時15分、待ちに待った炊き込みご飯の完成だ。
「ほらほら、出来たてのところ撮ってよ」と炊飯器を開けるポーズまで取ってくれる。サービス精神旺盛だ。
そのまま事務所(兼制作場所、兼接客スペース)でとびないさんと一緒に夕食だ。
おっしゃっていた通り、大間産のホタテがごろごろ入ったご飯は香りが最高。
「好きなだけおかわりしていいよ!女性のお客さんだってたくさん食べてくんだから」という言葉に甘え、3杯ほど頂いてしまった。なんとも贅沢。
食後はそのままお酒を飲みながら、とびないさんの息つく間もないマシンガントーク。
政治論、時事問題、地元の市議会議員のココではとても書けないゴシップネタ、土地トラブル……などなど。
ここも詳しくは割愛……というか、覚えてられない。突然話がぶっとぶので付いていくのも大変だ。
「プラモの素組みはただの習作、消費」「落としたプラモの部品を手をかざして、念力で探し当てたことがある」などのありがたい(?)話も頂いた。
話の合間に、とびないさんの秘密のコレクション部屋や、2階の一室に作られたプラモ制作教室なども見せてもらう。
「あぁ~、暗いのやだ」と言って、部屋を去るギリギリまで電気を消さないのが意味深で、少し怖かった。
いよいよ、気になっていた座敷わらしについて聞いてみる。
とびないさんによると、先代から引き継いだ築数十年のこの旅館は、見える人からすれば幼稚園のような場所だという。
かなり広大な建物内にとどまらず、屋外の敷地にも子どもたちが走り回っている状態らしい。
「何か変だな?」と思い始めたのは2009年ごろで、原発の整備員が泊まっていた部屋が
内側から鍵が掛けられ、扉が開かなくなる。
その後、女性の宿泊者がイヤリングや髪の毛を触られる、といったエピソードが増えていった。
体験談から1号室には男の子、2号室には女の子がいるといい、宿泊客の性別によって泊まってもらう部屋を分けているそうだ。
なお、とびないさんはその姿を見たことはなく「足音を2回聞いただけ」。
NHKのドラマ「赤毛の●ン」や「未来少年コ●ン」を見せられながら、なおもトークは続き、時間は深夜1時。
時折うつらうつらするとびないさんを見て「もう、寝ましょう」と提案する。
「ちなみに、きょう泊まってもらう1号室にも出たんだけど」ととびないさんは最後に切り出す。
心霊現象や妖怪否定派の人が冷やかしで泊まりに来て、その日は「いる」「いない」論争で半ば喧嘩状態になってお開きになったらしい。
翌日、とびないさんが朝ご飯の支度をしていると、2階からバタバタと慌ただしく降りてくる音がして
「とびないさん、出た出た!いいことあるかな!」と興奮気味に報告したそうだ。
どんな現象に遭ったのかはあえて聞かなかったそうだ。
かなり信憑性の高い話だが、部屋に行く直前にそれを言うか!
とびないさんにおやすみを言い、ギシギシと鳴る階段を上って2階の部屋へ向かう。
ここまで、とびないさんの明るくにぎやかな人柄でかき消されていたが、
いざ一人になって急にしんとなると、その対比も相まって不気味な雰囲気が漂う。
南北に細長い館内は中央の廊下と共同の洗面所以外、消灯されている。
こんなに部屋数のある旅館なのに、いま館内に居るのは自分ととびないさんだけ。
とびないさんの「物理的に怖い状況だよね」という言葉が頭を巡る。
さて、長い廊下の突き当たり左側「1号室」に到着した。テレビ横の姿見が怖い。
チェックインから約9時間を経て、ようやく泊まる部屋を見たことになる。普通の旅館ではあり得ないだろう。
豆電球が灯された部屋に近づくにつれて、甲高い「ピーーー」という音が大きくなってきて早速身構えたが、部屋に設置された防災無線ラジオから発せられている音だった。もう。
洗面所の細長い鏡の前でぽつんと立って歯磨きしている時は生きた心地がしなかったが、何も起こらなかった。
廊下から部屋へ歩いて行く動画を撮ってみたりもしたが、これも違和感は無し。
セルフタイマーで自撮りしてみたが、何か変わったものは写っているだろうか??
もう少し検証したかったが、怖さがピークなのでさっさと布団に潜り込む。
いつもは完全に消灯するのだが、さすがに今日は豆電球以上に暗くできなかった。
まあ、「何か」がボンヤリと見えたらそれで怖いけれども。
後編へ続く。
コメント失礼します。
むつ市は地元です。
私も数年前の2月、深夜26時ごろ車でとびない旅館前を
通過する少し手前で、旅館の方から白装束の子供たちが走り回ってすぐに消えたのを見たことあります。
はじめまして!コメントありがとうございます。
あら、イトウさんは「視える人」でしょうか?
やはり何かしら居るのは間違いないようですね…
私は霊感ゼロで不思議体験はゼロだったので、怖いけど少し羨ましい体験です(^^;