
鴨長明方丈記之抄 世の有にくき事1 立居につけて
らず。立居につけて恐れおのゝく、た とへば雀の鷹の巣に近づけるがご とし。もしまづしくして冨る家の隣にを るものは、朝夕すぼき姿を恥てへつ らひつゝ、出入妻子僮僕のうら...

鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震4 心の濁りも薄らぐかと
こゝろのにごりもうすらぐかとみし程 に、月日かさなり年越しかば、後は言の 葉にかけていひ出る人だになし。すべて 世の有にくき事、我身と栖との、はか なくあだなる様、かく...

鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震3 驚く程の地震
に驚くほどの地震二三十度ふらぬ 日はなし。十日廿日過にしかば、やう/\間どを になりて或は四五度二三度、もしは一日 まぜ、二三日に一度など、大かた其名残 三月ばかりや侍...

鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震2 築地の被の下に
ついひぢのおほひの下に小家を作りて、 はかなげなる跡なしことをしてあそび 侍りしが、俄にくづれうめられて、あとか たなくひらにうちひさがれて二の目など 一寸ばかりうち出...

鴨長明方丈記之抄 元暦の大地震1 都の辺には
とはせり。况や都のほとりには在々所々堂 舎塔廟一として全からず或はくづれ、或 はたふれたる間塵灰立上りて盛成 煙のごとし。地の震ひ、家のやぶるゝ音 いかづちにことならず...

鴨長明方丈記之抄 養和の飢饉6 辺地などを加えて
邊地などをくはへていはゞ際限も有 べからず。いはんや諸国七道をや。近 くは崇徳院の御位のとき長承の比 かとよ。かゝるためしは有けるときけど 其世のありさまはしらず。まの...

鴨長明方丈記之抄 養和の飢饉5 仁和寺に隆暁といふ人
なども有けり仁和寺に隆曉法印 といふ人、かくしつゝ数しらず。しぬることを かなしみて聖をあまたかたらひつゝ、其死者 の見ゆるごとに、阿字を書て縁をむす ばしむるわざ...

鴨長明方丈記之抄 養和の飢饉4 濁悪の世にしも生れあひて
濁悪の世にしも生れあひて、かゝる心うき わざをなん見侍き又あはれなることも侍き さりがたき女男など持たる者は、其心ざし まさりてふかきはかならず死すそのゆへは 我身をば...

鴨長明方丈記之抄 養和の飢饉3 いわんや川原などには
かり。いはんや川原などには馬車の行ちがぶ みちだにもなし。あやしき賤山がつも力つき て、薪にさへともしくなりゆけば、たのむかた なき人はみづがら家をこぼちて市に出 てう...

鴨長明方丈記之抄 養和の飢饉2 立直るべきかと思ふほどに
たちなをるべきかと思ふに、あまさへゑやみ 打そひて、まさる様に跡かたなし世の人 みな飢死ければ、日をへつゝ、きはまり行 さま少水の魚のたとへに叶へり。はてには 笠うちき...