中小企業のES=人間性尊重経営のパイオニア/有限会社人事・労務 ES組織開発・人事制度改革ブログ

社員の幸せ、職場の幸せを基準に経営を、社風を変えたいと本気で思っている社長さん・人事担当者の方へのエールをあなたへ!

「地域を活性化する」という役割を担う会社とは

2018-11-29 19:42:52 | 地域貢献
先日、宇都宮にある道の駅「ろまんちっく村」を
視察させていただきました。

ろまんちっく村を運営している会社は、
(株)ファーマーズフォレスト。
自社を「地域商社」と位置づけ、栃木・宇都宮の魅力を、
全国、そして世界に発信しています。

「地域商社」とは、「地域の様々な課題を解決し、
地域を活性化するための仕組みづくりをする」会社のことを指します。
地域と人びとを結ぶ、地域と地域を結ぶだけでなく、
その地域ではたらく人や暮らす人、
つくる人やつかう人を結び、生態系をつくる役割を担っています。



ろまんちっく村を、あえて「道の駅」というように紹介しましたが、
その実情は、「テーマパーク」のようであり、
「地域商社」「栃木の農作物の物流における起点」。
ろまんちっく村の果たしている機能や役割は多様で、
さまざまな顔を持ちます。


ろまんちっく村には、年間に146万人ものお客さんが訪れ、
取引する地元農家の数は300軒。
そして、2000種類もの農作物が、直売所に並びます。
まさに、国内屈指の道の駅といえます。

ろまんちっく村が誕生したのは、今から約10年前の平成20年。
敷地内には、直売所だけでなく、レストランや醸造所、温泉、
宿泊施設、温室植物園、クラインガルテンなど、
さまざまな施設があります。
来場者は、「野菜を買う」だけではない「楽しみ」を求め、
まさにテーマパークのように、地元の魅力を体感します。

ファーマーズフォレスト社は地域商社として、
持続可能な地域活性に必要な「入口」と「出口」の、
主に「出口」の戦略を事業化することで、
地域の重要な役割を担っています。

当社は、ろまんちっく村など道の駅や
直売所、アンテナショップの運営だけでなく
地域の資産である農作物を「中規模流通」に乗せて、
東京など近隣の消費地に展開しています。
ろまんちっく村には、中規模流通の核となる倉庫兼
プラットフォームという裏の顔もあるのです。



中規模流通とは、農協や地方市場を活用した
大規模流通(系統販売)でもなく、
生産者が直接野菜を販売する直接販売でもない、
独自の流通網で地域同士をつなぐ農作物流通の新たな形態です。

農業経営における「入口」である「生産」に関しては、
国を中心に様々な支援がされていますが、
ファーマーズフォレスト社によって直売所&中規模流通という
「出口」が整備されたことによって、
ろまんちっく村に登録する農家は飛躍的に売上が伸びたといいます。


これは単純に「販路拡大」というマーケティングの観点だけで
起きた農業経営の変化ではありません。
大事なのは、「消費者との精神的な距離が近づいた」という点に
あるのではないでしょうか。

これまで主要な流通形態であった「大規模流通」の弊害として、
生産と消費が分離してしまったことが挙げられます。
しかし地域の中で生産した野菜の流通を、地域の魅力を伝える
地域商社に任せることで、まさに地域の魅力の1つとして、
野菜は消費者の元に届けられます。
生産者として、その「誇り」は、まさに「はたらく誇り」となり、
より一層の情熱を、農業経営に注ぐことにつながります。
また、消費者からすると、物理的に生産者の顔が見えなかったことで、
商品の責任は「売り手」となり、クレームは売り手に集められるばかりでしたが、
地域商社としてクレームも生産者に棚卸しすることができるので、
そもそもの意識改善や生産の技術改善につながっています。

また、ファーマーズフォレスト社は、沖縄県うるま市に、
「うるマルシェ」という産直複合施設をオープンしました。
栃木県では冬の期間は農作物の出荷量が非常に少なくなってしまいますが、
沖縄県は夏の猛暑の期間は出荷量が少なく、冬の時期は安定して出荷できるので、
産地リレーの観点から、双方にメリットがあります。

このうるマルシェの運営が表すように、これからの時代の農作物流通は、
これまでのように産地から都市圏への一点集中、一方通行なものではなく、
産地と産地、地域と地域をつなぐような中規模流通が主流となるでしょう。
そのプラットフォームの中核を担う「地域商社」が、地域活性の鍵を握ります。

ファーマーズフォレスト社は、「農」を起点に地域をつないでいますが、
例えば大谷石の採掘場跡地を活用してツーリズム事業を行うなど、
“地域資産を生かす”という視点で事業を展開しています。

個人や会社の資産だけでなく、地域の資産へと視座を上げる。
視座を上げれば、どんな地域の会社でも、地域商社の役割を
担うことができる可能性を秘めています。

日本賃金学会で、自律分散型組織の人事制度を発表しました

2018-11-22 17:39:22 | 組織開発・社風改革
こんにちは。(有)人事・労務 社会保険労務士の畑中です。

11月10日(土)に、日本賃金学会で、
「自律分散型組織への移行と賃金体系の方向性」
というタイトルで、発表をさせていただきました。



日本賃金学会は、大学の教授や研究者、元厚生労働省の官僚の方々などが
会員で、日本の賃金のありかたについて、いろんな発表・議論が
行われる場です。

私も10年以上前から会員にさせていただき、
今回の発表は2回目でした。

今回私が発表したテーマは、最近注目されてきた「ティール組織」のような
一人一人が自律的で自由な働き方を取り入れている企業が
どのような賃金制度や人事制度を導入していくべきかという
かなり、新しい事例や考え方についての内容でした。



・賃金テーブルはない
・評価はランキングをつけないノーレイティング
・働く場や時間は自由
・給与は皆の話し合いで決める
・成人発達理論の基づいた等級基準

といったことが、これまで長く日本の賃金にかかわってきた方々に
受け入れられるのか、かなり不安でした。

ただ、身近に2つの事例があり、その会社が実際におこなっていることを
私たちなりの解釈で、理論づけた発表だったので
「今、実際におこっていることをどう受け止めるべきか」というつもりで
いろんなご意見(ご批判?)をいただこうというつもりで
思い切って、事実そのままにお話をさせていただきました。

結果としては、いくつかの発表の中でも、一番
注目をしていただき、多くのご質問をいただけました。

多かった意見は、
「そのような組織やしくみは、特別な会社でしかまだ運用できないよね」
「一定の業種にしかあてはまらないのでは」

といったものです。

確かに現時点では、日本の多くの企業に適用するものではありません

ただ、企業が抱える課題の在り方、私たちの社会事態の変化、
働く人の意識の変化、などは、ここ数年急激に変化してきています。

ピラミッド型組織がスピーディーでグローバルな今の時代に対応できなくなって
来ているのも事実で、
新しい組織の在り方を模索しなくてはいけないのは間違いないです。

私は、今から5年のうちに、かなりの会社が「自律分散型」組織へと
移行していくと考えています。

「自律分散型」といえば、フラットで、一人一人がドライな働き方をするような
印象を持つ方も多いようですが、
実際はその逆です。

一人一人の個性を生かし、強みを伸ばして弱みを補うためには
周囲の協力が必要です。
これまでの組織以上に、お互いの関係性を強め、信頼をしあうことが
必要になります。

そのような組織風土を作ることを組織開発といいますが
この組織開発を進めていくことが安心できる職場をつくることになるのです。

今回発表した内容は、この「自律した個人が安心して働ける場」ができたときに
最もマッチする制度、といえると思います。

発表内容はこちらで公表しています。
ご興味のある方は、ぜひご覧ください。
https://www.jinji-roumu.com/jinji/

縄文文化に学ぶ コミュニティのあり方(岡村道雄先生セミナーレポート)

2018-11-20 19:14:38 | 組織開発・社風改革
11月3日(土)。10回目を迎える日光街道まるっと学び舎プロジェクト初日は、待ちに待った、考古学者・岡村道雄先生の講演の日でもありました。



私たちの職場で、ご縁があって埼玉に「縄文ファーム」が生まれたのが、3年前。農地を貸してくださった春日部の地域企業・おづつみ園の尾堤社長から、「この場所には、約4000年前の縄文の暮らしのあとがある」というお話を伺い、畑の名前を”縄文ファーム”にしたのでした。



神明貝塚という縄文時代のコミュニティの跡があり、数年前には発掘調査も行われたとのこと。貝殻や土器、貝輪などさまざまな”暮らしのあと”が明らかになった土地の上に、お借りする畑ができたというお話を聴くにつれ、私たちの中で「縄文時代」に対する興味が一気に高まっていたのでした。



一方、働き方改革や書籍『ティール組織』のブームの流れの中で、「縄文からみる組織のあり方」について綴られた記事に出合いました。
そこでインタビューを受けていた方こそ、岡村道雄先生でした。
社長や上司といった階級がないのになぜ縄文のムラは組織として持続していたのか?というテーマを、考古学の切り口で語る岡村先生の姿を拝見し、「これからの新しい時代の働くかたちを、最も旧い縄文時代から学ぼう」ということで、今回の講演のお声がけをさせていただいたのでした。



当日の講演は、岡村先生の少年時代、縄文への興味が高まった頃のお話から始まりました。

多様性に満ちて自然豊かな地域の風土にどう適応しようかを考え実践した結果、縄文の高度な文化がつくられた、ということ。
その自然の循環の一部の存在であることを謙虚に受け入れ身を委ねたからこそ、持続的であった、ということ。
更には、広場を中心としたムラの暮らしかた、「神である自然の一部として山に還っていく」という縄文の死生観、など、考古学の専門的な視点に添えられた、ヒトやコミュニティに対する本質的な捉え方に、非常に多くの学びをいただきました。

縄文を組織づくりの視点で捉えた時に、「リーダー不在の組織が成り立っていた」という点があります。
しかし、実際にリーダーがいなかったわけではなく、リーダー的な役割は存在していた、というのが、岡村先生がおっしゃるところです。



岡村先生曰く、「小学校のクラスのように、学級委員(リーダー)はいるけれども、お互いを認め合う中で得意分野を活かして係になり、お互いの期待にこたえながらワークシェアで協働していく組織が、縄文のコミュニティであった」とのことですが、この学級委員の存在がリーダーであり、そして、係においてもリーダーシップを発揮する人がいて、コミュニティが成り立っていたわけです。
何らかの分野においてうまい人・得意な人がリーダーとなり、その中でもコミュニティの象徴的な存在でまつり(まつりごと)を行なっていたのがシャーマンだと言います。



日常の中に祈りがあった縄文の暮らしにおいては、ハレの場としてまつりが定期的に行なわれていました。
まつりとは、現代に置き換えれば、経営方針発表会や社内運動会のような皆が一堂に会する場のこと。自社の理念やビジョンを共有する場でもあります。
朝礼や月次会議、IRODORI会議などは、いわばケの場として、日常的に行なう機会であると言えます。
そのハレの場をとりしきっていたのがシャーマンであり、コミュニティの皆が”私たちの大切なもの”を確認する機会として、土偶などの道具を用いたまつりが行なわれていたのです。



そして、コミュニティを持続的に運営するために大切にされていたのが、『つながりを大切に共にはたらく機会をもつ』ことでした。
多様性の中でお互いを認め合い、協働しながら価値(狩猟・土器づくりなど)を生み出していくこと。
自然の一部としての自分たちの存在を受け入れていたからこそ、その自然に適応すべく、知性を働かせ、感情豊かに意志をもって物事と向き合っていました。その真善美を兼ね備えたコミュニティのあり方が、持続的で質の高い文化が成り立っていたのです。
まさに、いま問われている自律分散型のES経営のあり方と重なるところが大きく、日頃の私たち自身の職場や関わる企業の組織を頭に思い浮かべながらお話を伺いました。



縄文の思想は、いまも私たちの暮らしに根付いていると言います。
例えば、葬儀を行う際の、野辺送りの風習。長野の御柱祭やどんと祭のような各地のおまつり。
ウチの中にありながらもソトと触れる場である、日本独特の縁側というつくりも、集団の営み方として縄文の思想を受け継いでいると言えるかもしれません。
「発展が良し、ではなく、継続こそ力」とおっしゃる岡村先生の言葉のように、コミュニティを安定的に創り上げることが持続可能性を高め、コミュニティの生産性も高める、という縄文の思想は、今、働き方改革で変化に直面している多くの企業の組織づくりにおいても活かせることがあるのではないかと思います。



さまざまな偉人の足跡が残る日光街道を歩くという当イベント。
そのスタート地点である開会式で、岡村先生から縄文のお話をいただいたことで、参加した皆が「ご縁を大切に共にはたらく」という共通言語をもち、一つの道を共に歩くという共通体験のもとで、ESのアンテナを掲げながら無事にゴールに到着することができました。

沼田JC「ESで地域を元気に!」セミナーレポート

2018-11-16 13:58:00 | ES
沼田JCさんがJC全体でESの取り組みをやるという話が、今年3月ごろに弊社に相談があったのですが、
その1年間の集大成ということで、今回、例会で講演をさせていただきました。



前回の5月例会にも講師としてお話をさせていただき、
若きJCのリーダーたちに語る場をいただくのはありがたい限りです。
そもそもESを取り上げるJCさんが少なく私自身も横浜青年会議所ということもあり、
担当のJCメンバーの彼には大変なテーマを掲げて大変ですが、ぜひ頑張りましょうと4月に東京まで来ていただいたときに激励を送ったほどでした。

案の定、議題を通すのに大変な思いをしたようですが、理論、そしてメンバーへアンケート、今回の11月の例会ではESを実践している企業さんをお呼びしてのパネルディスカッションと、なかなか興味深い活動だなあと私自身勉強になりました。

さて、本題に入りますとアンケート結果からいろいろなことが見えてきました。
ESを取り組んでいる企業は15.9パーセントと、やはりまだまだESは市民権を得てなくCS重視の傾向が見て取れました。



そして、興味深いのはモチベーション施策です。

1位:従業員とのコミュニケーション
2位:給与を上げる
3位:福利厚生を充実させる
4位:残業を減らした
5位:休日を増やす
6位:社内イベントやサークル



と、ほとんどの企業のモチベーション施策は、ハーズバーグの動機付け、衛生理論の言うところの衛生要因でありモラールは高まり、離職率や会社に対しても不満をなくす施策としては有効だが、モチベーションにつながるのはコミュニケーションとイベントの開催のみということで具体的なES施策にはつながらないということが見えてきました。

そして面白いことにESの取り組みをしている企業は今回パネラーとして登壇いただいた高崎のES企業で定評のある株式会社稲荷山さんをはじめ、JCのアンケートからもイベントを頻繁に行っているという結果から見てもハーズバーグの理論を裏付けています。



ここでJCメンバーさんの今回の相談内容にもなっている自立心が高く、自ら動く社員はいかにして育っていくのか?という切実なる悩みです。

実は、衛生要因のほとんどは、外部の刺激で人が行動を起こす要因になっているのです。お金や休み、地位、そして褒める、怒られるなどの承認、非承認の経営などもすべて外部からの刺激による施策でありこれでは自律した社員は育ちません。

心理学の分野での成人発達理論で著名なケンウィルバーは人間性の高まりつまり自律した社員を以下の表のように自己規範をもったレベル4以上の社員と定義付けています。

■組織の変容段階を意識した対話のあり方


では自己規範はいかにして生まれるのでしょうか?
そこには内的動機と大きくかかわってきます。内的動機は、他人から教えられて高まるのではなく、ましてや文字や言葉では伝えることができないものであるのです。



社長である皆さんと皆さんが問題にしている受け身型の社員さんとはなにが違うのでしょうか?そこには自らの仕事、そして人生においての向き合い方、あり方というものを社長である皆さんはお持ちなのではないでしょうか?
その高貴な、ふるまいはきっと師匠との出会いや尊敬する先輩、社会のなかでの経験を通して意識、無意識にかかわらず身に付けてきたのではないでしょうか?

つまりそこには言語を超えた、共感、共振、共鳴などがともなって初めて本人の気付きへと昇華され自らをマネジメントする自己規範となった行動へと高まっていくのです。

さてここでもう一つの質問、ダイバーシティ時代バラバラの価値観の社員はいかにまとめるのか?そして、いかに地域貢献と結び付けるのかという相談についてお話したいと思います。

再度ケンウィルバーの表を見ていただきましょう。ケンウィルバーは、人間性の発達段階によって意識構造の認知の枠組みが大きく変化すると述べています。

1から3のレベルの段階は認知の枠組みが自己中心的なのがわかりますね。しかし、レベル4以上からは私たち、大いなるものへと認知の枠組みが変化していきます。

そうです!実はESが高まり人間性が向上していくと実はまとめようと思わなくても自然とメンバーはまとまるのです。レベル4以上のメンバーは自然とチームの為、地域の為の行動をとろうと自らが動くのです。
チームの為にとか地域の為にとか言葉でいうよりも個人の人間力の向上をはかる試みをしていくことにより自然と組織はまとまっていくのですね。

マズローは実は欲求5段階の自己実現レベルの上に6番目として自己超越があるのだと晩年残しているのです。



自己超越とは、大いなるものに貢献したい意識です。

いまエコシステム、オープンイノベーションの試みを経営の柱に置こうと企業は躍起になっています。そこには、ES=人間性尊重経営の試みを抜きには実現が不可能なのです。

逆に言えば、イノベーティブな経営をおこなっている組織には必ず、強い個人の存在がそこにはあるといえるでしょう。