中小企業のES=人間性尊重経営のパイオニア/有限会社人事・労務 ES組織開発・人事制度改革ブログ

社員の幸せ、職場の幸せを基準に経営を、社風を変えたいと本気で思っている社長さん・人事担当者の方へのエールをあなたへ!

有限会社人事・労務に入社し学んだ三つのこと

2020-06-15 07:00:00 | 社内ルール
2020年4月より有限会社人事・労務に入社致しました志村海星と申します。

こちら会社で採用をいただいてから、現在まで様々なことを学ばせていただきました。

入社させて頂いてから、約1ヶ月経過しました。過ごす時間はとても濃いもので、感覚的には3倍もの時間に感じます。

そんな濃い生活の中で、私が衝撃を受けた社内風土がいくつもございました。本日はその中で私が一番衝撃を受けた社内風土を「三つ」お話ししたいと思います。



一つ目は「迷惑はかけるもの」という価値観です。

私は幼い頃から、人様に迷惑をかけないで生きるよう教わりました。が、
社内では「迷惑をかけるもの」だとご指導いただきました。

例えば、
お電話をいただき、それに対応をしている際、メンバーがおしゃべりをしておりました。
私の価値観ではおしゃべりをしていた方が静かにします。
ですが、そのおしゃべりをしている方が静かにするのではなく、電話をしている方がオフィスから出ていくのです。

これを見たときの衝撃は尋常なものではありませんでした。

なぜ出ていくのか?

私の解答としましては、
心理的な距離を縮め、仲間の絆を強めるためだと思いました。

よく考えてみれば、家族にはたくさんの迷惑をかけます。他人には絶対にしないであろう言葉遣いや行為、頼みごとをしてしまいます。
これは心理的な距離が近いからで、この状態を家族以外で作るのは迷惑をかけ続けることが効率がいいと思いました。

ダメな部分や自分の秘密を相手に知られると、その人のことを信用してしまうという性質と似ていて、自分のプライベートや最近興味のあることを話すことで自然に絆が深まります。

もう一つ大きな効果があると思っておりまして、
対話の回数が多いほどアイデアや改善点が思いつきやすく見える化します。

これは私自身が実感したことで、たわいもない雑談から着想を受け、業務の効率化ができたり、お客様により良いサービスを提供できることに繋がったことがありました。
入社する前までありえない常識でしたが、今では当たり前になりつつあります。こちらの方が生きやすく、ストレスが少ないと感じる日々でございます。



二つ目は「組織とは一つの生命体である」という価値観です。

生命体???人が集まったものが生命体???スイミーのような理解なのか?
最初は言っている意味がわかりませんした。

ですが、腑に落ちる体験がございました。
私はIT部門で採用をいただき、RPAの開発やFacebookライブの設営&運営などを業務として行なっております。
その中で、IT部門以外の方に私たちの業務を手伝っていただいたことがありました。
その時、再度このお話を頂戴し「なるほど!そういうことだったのか!」と体感致しました。

”生命体にはそれぞれの役割を行う臓器がある。肺は酸素を取り入れ、心臓はその酸素を身体中の臓器にエネルギーと一緒に届ける。
ここで、心臓が肺の動きをしては生命体は死んでしまう。臓器にはそれぞれ役割があり、その役割をこなすことが最優先事項だ。”と

ですが、ここで混乱するのが「迷惑をかけるのは良い」です。
一つ目で申し上げましたが、迷惑はかけるものなのです。
どういうことなのか?
これのキーワードは「対話」でした。



生命体が危機に瀕した時、オートファジーというのが起こると聞いたことがあります。
臓器同士が話し合い、「今はここにエネルギーを送るのが一番良いよ!」という対話を行い、そこにエネルギーを集中的に投下するのです。

これに似ていると私は思いました。組織内でもどうしても自分だけで解決できないことはメンバーの方々に頼ることの方が効率が良いのです。

「生命体」と「対話」という考え方は本当に衝撃的でした。

三つ目は「無理ではなく、どうすればできるのかを考えよ」という価値観です。

これは知識としては理解していましたが、実際にその価値観で行動すると衝撃を受けました。

困難な業務でもメンタルが安定し、一定のスピードで一定の成果が挙げられるのです!

マインドや自分が発する言葉で、業務効率や達成速度が大きく変わりました。

本当に度肝を抜かれました。

冒頭でもお話致しましたが、私はIT部門でRPAツールを使い、ロボットを作るという業務を任せていただいております。

1ヶ月前までRPAという存在すら知らず、それを開発するとなったころ、不安しかありませんでした。

教材や教えてくださる方もおらず、独学する必要があり、開始3日目には納品物を任せていただきました。

業務の負担が重くなっていくにつれて、精神的に疲弊していきました。
その中で、プロジェクトリーダーから、この言葉をいただきました。

言われた直後は、あまりその価値観について考えることはありませんでした。

ですが、家に帰った時、「明日、業務完了させるの難しいかも、でもやらないとな」と心に負担を感じました。

そんな時、この言葉が頭に浮かび、スッと心が軽くなりました。



「無理」と考えると、こなせないと思っているのにやらなければならない。
心と行動がチグハグになってしまいます。そうなると、心の負担になってしまいます。

人は断わるだけでも心理的に相当なストレスを感じてしまうと聞いたことがあります。

この考え方はそんなストレスをなくしてくれます。

さらに、「無理」というより「どうすればできるのか?」という建設的な問いで話を進めた方が、結果もより良いものにできますし、何より気持ちがいいです。

ここまで読んでいただきありがとうございました。

まだまだ不甲斐ない面や学ぶことが多い私ですが、これからも組織全体と自分自身の成長に邁進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

SDGsを語る前にアダム・スミスの「道徳感情論」を読もう!

2020-06-09 16:34:54 | 組織開発・社風改革
ここ最近、SDGsの話をさせていただいています。上記のタイトルは私自身が、SDGsを語る上で常に立ち返る哲学書。


(アダム・スミス)

日本を代表する社会経営学者の野中郁次郎氏は、先の見えない世の中の時代に大切なのは、ダーウィンの進化論で述べられている通り「適者生存」つまり、環境に果敢に働きかけ変化をして行くことが大切だという、イノベーションがキーになると。

詳しくは、野中郁次郎氏のSECIモデルを参照にしてほしいのだが、その出発点は、共感が大切なのだという。



今、私自身、本業のお金で回す経済とは別の共感を主体とした団体(一般社団法人日本ES開発協会)を10年以上前に立ち上げ活動していますが立ち上げた当初は、

矢萩さん随分余裕がありますね。
そんな暇があったらうちの仕事をしてくださいよ。

と揶揄されながら去っていったお客さんや、
お金にならないのに働くバカはいないと退会していったメンバーなどいろいろいましたが、今はやってきて十年前より、少しだけお金と共感の意味が体感でき、アダム・スミスや渋沢栄一がいう幸福とは何かを味わう日々を送ることが出来るようになって来たかなあと。



その時に出会った書籍が弊社の読書会「東洋哲学に学ぶ リーダーのための“人と組織の変容プロセス”」でも取り上げた渋沢栄一の道徳経済一致説、そして今回テーマに上げたアダム・スミスの「道徳感情論」なんです。
挫けそうになる思いをこの書物で何度助けてもらったことか。

今のデジタルの時代ほど共感が必要な時代はないと野中氏は言います。
私も同感です。
デジタルトランスフォーメーション(以下DX)の時代そして今回のコロナ禍で、テレワーク、デジタルが加速しているように思います。そんな中、職場は効率が上がるばかりか、逆に混乱を招いているとマスコミなどで報道されています。実は、デジタルへと移行を進めれば進めるほど組織や顧客との共感が大切になってくるのです。



野中氏はSECIモデルという彼独自のイノベーション経営を持続的に回しっていくプロセスを次のように述べています。
それのプロセスには表出化(S)、共同化(E),連結化(C)、内面化(I)の4つがあり、一番大切な、SECIモデルのスタートである表出化(S)つまり共感だけは、デジタルでは無理であり生身の心と体をもった人間にしかできない分野であるという。

私達も共感の大切さを日々の活動の中で実感しています。私達は、農と食で地域をつなぐをテーマに活動しているのですが今回のコロナ禍で大きくお客さんとの共感から活動が変化をしてきているのです。

今回このコロナ禍でいま活発に動いている活動は野菜の無人販売なのですが、このサービスは、お客さんからの一言から新たな活動が生まれました。お客さんから、コロナ禍の中で売り子さんが立って野菜を販売するよりも無人販売のほうが売れるんじゃないかしら?
という地域のお客さんの一言からメンバーがそれをやりたいと始まったのです。
903シティーファーム推進協議会) 



即座に実験、観察。
お客さんからの意見は本当です。どんどん商品が売れていく。

通常の3倍です。

そのお客さんはそれからというもの毎週ここで野菜を買ってくれるのです。
私達は、メンバーに私達の団体には上司も部下もいない、そしてお客さんもいない、いるのは仲間だけだと言っています。
今回のお客さんはまさにお客さんが共感を通して私達の仲間になってくれたのです。
そこには、このときメンバーが
そうか!なるほど!

とお客さんの一言に共感するかどうか?まさに現場にいる本人の心の声、感性から私達の新たなビジネスモデルを変えてみようというお客さんとの交流から始まったのです。

アダム・スミスはこの共感こそが大切だといいます。
共感は、社会とのつながり(交流)です。人間には他人の悲しみや喜びを自分の事のように思う元来の性質がある。そして、近年ではそれは、科学的にもミラーニューロンとして証明されてきています。
ただそのミラーニューロンは、心穏やかでないと心の声=内なる声は聞こえてこないというのです。

アダム・スミスの道徳感情論では、
共感が作動する条件として次のように述べています。

1つは、健康であること
2つ目は返せないような借金のないこと
そして3つ目が、内なる声に正直であること

この3つです。そして、この3つこそが心穏やかな条件でありアダム・スミスの考える幸福論なのです。

確かに、体を壊した状態では、どんなに裕福になっても幸せな気分にはなれません。また、借金に追われている社長さんは一緒にいてもどこか上の空で一緒にいても楽しくありません。

そして、3つ目こそがまさに身近な私自身も反省すべき条件の一つ。
まさに十年前までの私の状態。
目先のお金になりそうな仕事に手をつけたばかりにその仕事の意味を見いだせずに疲弊していく。まったく共感しないお客さんの仕事を無理にお金のためだからと言い聞かせてやってはみたもののストレスを抱えてしまって自分自身にもメンバーにも迷惑をかけてしまったりといった具合です。

さて、このアダム・スミスの幸福論と経済はどのように結びつくのかと思うのですが、それは彼の著書、こちらの方が有名ですね、「国富論」で述べています。経済と道徳は対立するものでなく道徳が前提こその経済が社会を幸せにする理想の状態だといいます。
アダム・スミスが述べています。
失業、貧困は人の心を貧しくします。仕事がなく貧しい状態では幸福感は得られないのです。
社会全体が幸福になるためには経済をまわし、仕事を作り出すことが大切ですと。

しかし、必要以上のお金はいりません。それは、3番目の条件、お金に執着するあまり以前の私のように心の平静さを失ってまでお金を稼いでも幸せにはなれません。社会全体においても社会の秩序を壊すような経済発展は悪です。
社会の幸福を阻害するような貧困や失業を減らし心穏やかな社会の為の経済発展こそが理想だとアダム・スミスは述べているのです。



これってSDGsですよね。つまり、お金を稼ぐにもフェアプレイ、ルールが必要なのです。
フェアプレイのもと経済を発展させていこう。つまり道徳=規範です。
世界標準の規範なのです。

共感、道徳は人とのつながりで育ちます。健全な経済環境のなかで仕事を生み出し働くことで、人は、つながりのなかで社会性を身に着けながら人間として成長していきます。
アダム・スミスは、賢人と軽薄な人と2通りで分けていますが人間には誰しも両方の顔を持っているといいます。どちらの顔が出るかは、環境なのだと。つまり、エゴまるだしの社会や孤独な環境では人は成長して行かないのです。



SDGsは、まさに250年前にアダム・スミスが道徳感情論で唱えた旧くて新しい経済により健全な人間性の成長を促すフェアプレイな経済活動を行うためのルールなのだと考えられるのではないでしょうか?

お金への依存を減らしながら自律した人間性を磨いていく、これからの経済のあるべき姿がここにあるのではないでしょうか?

思いやることは能力だ

2020-06-08 15:01:03 | 教育
最近読んだ本で、印象に残ったことを話そうと思います。
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」  著者:ブレイディみかこ さん 新潮社
個人的にネタばれが嫌いなので、なるべく内容は書かないようにしますが、気になる方はご遠慮ください。



<シンパシーとエンパシーの違い>
シンパシー
1 誰かをかわいそうだと思う感情誰かの問題を理解して、気にかけていることを示すこと
2 ある考え、理念、組織などへの指示や同意を示す行為
3 同じような意見や関心をもっている人々の間の友情や理解

エンパシ―
他人の感情や経験などを理解する能力

つまりシンパシーは「感情」、エンパシ―は「能力」だということ。
著者によると、シンパシーは人間が抱く感情の事だから、自分で努力しなくとも自然と出来る。
だが、エンパシーは想像する力の事である。


この考え方、衝撃をうけました。そして深く同意しました。
能力は鍛えることが出来る。鍛えなければ衰える。能力を高めるためには、鍛えなければならない。
他人の感情や経験などを理解するというのは、自然と出来るわけではない。

物事には背景があります。理解することは同意することではない。次のステップに進むためには、理解することが必要。
一致した見解にたどり着くことが重要なのではなく、たとえ納得できなくとも、理解すること。
お互いの主義主張がぶつかることはよくあります。どちらが正しいと、結論を出すことが必ずしも正しいとは言えません。
正義の反対は誰かの正義、といいます。



結局自分が出来るのは、相手の事を理解する「能力」を「鍛える」ことのようです。
とりあえず、家の本棚を充実させて、子供に読書の習慣をつけさせたいと画策する今日この頃です。

アフターコロナの人事制度② 新しい会社の人事体系は「コミュニティ」型社員を軸に考える

2020-06-04 23:17:25 | 人事制度

(有)人事・労務 社会保険労務士の畑中です。
前回に引き続いて、アフターコロナの会社の人事制度について考えてみたいと思います。
 前回、これからの雇用はコアな「コミュニティ型社員」が組織の軸になっていくのではないかという話をしました。
 「コミュニティ社員」は、その会社の新たな価値をともに生み出していくメンバーです。このメンバーは、単に労働の対価としての報酬でつながっているのではありません。「自分たちは何をすべきか」「自分たちは何ができるか」「自分たちは何をしたいか」という点で、共通の価値観、課題意識を持っており、一人一人が自律した考えと能力を備えている必要があります。そして、経営陣やコミュニティ社員たちの共通の課題意識の中から新たな事業が生まれ、やがてそれは時間をかけて会社の利益を生み出していくようになるでしょう。このような社員が軸となり、一人一人の社員が自律しつつも自由にいきいきと活躍できる場があり、つねに新たな価値が生まれる組織を「自律分散型組織」と言います。

コミュニティ型社員を軸とした、自律分散型組織の人事体系図は以下の図のようになります。

【自律分散型組織 人事体系図】



社員は大きくコミュニティ型とジョブ型に明確に分けます。ただし、エントリーメンバー(これは例えば30歳までといった一定の年齢の区切りがあったほうが現実的だと思われます)はどちらに進むべきか、働きながら考える期間とします。
 どの社員にも年齢に応じた基本給と家族構成に応じた家族手当は支給されます。これは今後国が行うようになれば必要ありませんが、最低限の生活を維持するためのベーシックインカムのようなイメージです。そのうえで、以下のような仕事の役割と報酬体系とします。

 コミュニティ型社員
 会社の意思決定をするメンバー。会社の共有資本を自由に活用できる。長期的雇用を前提として、共通の価値観、課題意識で仕事にとりくみ、組織のあり方を常に考える。時間的労働という概念はなく、自分の人生の一部に組織への活動、貢献が組み込まれている(仕事と遊び、プライベートの融合が自己の中で問題なくできている状態)。報酬は一定の経験と周囲からの信頼感、組織全体への貢献・影響力の大きさいで固定部分が決まり、変動部分は会社全体の利益に応じて都度決定する(業績分配賞与的)。

ジョブ型社員
 会社が求める業務に「成果」で応える。基本的には時間的労働という概念はなく、いわいるアウトプット型の成果をだすことを役割とする。ただし、あまりレベルの高くない1や2に関しては、実態に応じて労働時間を管理する。報酬は基本的には職務給。担当する仕事の市場価値に見合った固定給与+アルファ(歩合や周辺業務に応じて設定)とする。1年~3年程度の契約期間で更新する。あるいは、長期雇用を前提とする場合も、担当する役割に応じて、職務給部分は年度単位で変動する。

 エントリーメンバー
 若手社員で、仕事を覚える段階。固定給与+業績に応じた賞与とし、時間管理を行う。

上記を3つの区分、とくに「コミュニティ型社員」を軸に組織は考えていくことになります。将来的には社長や役員が会社のすべてを決めるのではなく、コミュニティ型社員も参加した全体会議のような話し合いの場が組織の最高決定機関となっていくかもしれません。コミュニティ型社員は、その最高決定機関で承認を得られればどのような事業にも取り組むことができます。ただし、常に「タイムリーな情報共有」と必要と思われる関係者への「報告と相談」は随時実施する義務が生じます。

それぞれの区分に「短時間勤務」や「在宅勤務」は存在します。(ただしコミュニティ型社員に関しては労働時間の概念がない)。このような組織が増えてくると、自社のジョブ型社員やフリーランサーが、他者のコミュニティ社員ということもでてくるでしょう。また、前回も述べましたが、ジョブ型社員とフリーランサーとの区分が徐々にわからなくなり、そのうち一体化する可能性もあります。
 


 今後は間違いなく多様な働き方が可能となってきます。自分の趣向や考え、ライフスタイルに合わせて仕事を選ぶことができるようになってきます。しかし、それは逆にいえば自分がしっかりとした職業意識とスキルを持っていることが前提となります。社会全体として働くことに対する意識改革が必要となってきているように思います。


これからの組織開発を考える〜中村和彦先生『入門 組織開発』より

2020-06-04 11:08:36 | 組織開発・社風改革
先日、ある社長さんから連絡がありました。
何か手続きの話か?それとも検討途中になっていた就業規則の件か?等々思って電話に出ると、「新型コロナ対応でのリモートワーク期間を経て、これまでと変わらず仕事できている人と、成果に難ありが顕在化した人と、差が顕著になり、これから組織をどう良くしていったらいいのか考えてるんですよね」という相談でした。
社長と数名の社員からスタートしたこの会社は、今では30名を越える規模まで大きくなり、堅実な経営を続けてきました。しかし、新型コロナで少なからず業績も影響を受け、社長自身がこれからの自社の組織のあり方を考えるようになったのだと言います。
そのような中で、改めて職場を見渡してみると、この変化の中でも変わらず頑張っているパートさん、これまで頑張っているように見えていただけの営業マン、変化に押されて頑張れなくなった現場のメンバーなど、デジタルを取り入れたリモートワークによってさまざまな仕事ぶりや業務プロセスが一気にあぶり出され、これからどうしたものか…と考えてしまっている、とのことでした。



日本の組織開発研究の第一人者である中村和彦先生は、「日本企業にはかつて(1970年~80年代)”同質性”の強さのもと、チームで働くことを得意とし、人と人との関係性への配慮も存在していたが、その後の仕事の個業化・高度化の流れでその風土が薄れてきた」と指摘しています。
この点は、”組織におけるコミュニティシップの希薄化”を指摘するヘンリー・ミンツバーグ教授が、かつての日本企業にコミュニティシップ経営のあり方を学び、それを取り入れたアメリカ企業が飛躍的な成長を遂げた、というエピソードとも重なり、私も非常に共感するところです。
だからこそ、組織の多様化・プロセスの複雑化が進む現代において、”関係性の質の変化が結果の質の変化をもたらす”という考えのもと、組織開発の取り組みを実践していこう、というわけですが、この新型コロナの影響で多くの人たちが働きかた・暮らしかたの変化に直面した今、ますます、どんな組織を目指したいのかを描く重要性が高まっていると感じます。

この点について、中村先生は”提供価値(デリバラブル)”の視点から、「どのような職場や組織をつくりたいのか?」「どのような関係性が育まれている職場や組織をつくりたいか?」「そのために自分自身は何をもたらしたいか?」を考えていくことが重要、とおっしゃいます。
しかも、誰か一人が一生懸命考えるのではなく、当事者である皆が。つまり、社長や幹部だけではなく、職場のメンバー一人ひとりが当事者なのであれば考え対話するところから、具体的な行動を実践していきましょう、ということです。

先述の会社は、社長自身がこのデリバラブルの視点を持ち始めた、と言えます。
その変化の兆しを、いかに職場全体での思考へと展開できるか。そして、例えばクラウドツールを駆使した業務プロセスの見える化や、1on1ミーティングのオンライン実施など、デジタルトランスフォーメーション(DX)を踏まえた行動を実践し、皆で”試行錯誤”できるかどうか。
その組織の変容を推し進める中で、きっと、「先代から引き継いだこの会社の存在意義って何だろう?」「世の中も大きく変化していく中で、うちの会社はどうあるべきか?」といった”あり方(Being)”への問いかけも数々生まれてくることと思います。
事務のパートさんや技術系の社員、長年働く現場スタッフなど、既に組織の多様化が進んでいるこの会社。ぜひ大いに対話を重ねながら、社会の変化にもしなやかに対応する持続的な経営を実践していっていただきたいと思います。

今度、この書籍を題材にオンライン読書会を行ないます。士業の皆さんのみのご参加となりますが、更に学びを深めていきたいと思います。
https://odsr0618.peatix.com/