中小企業のES=人間性尊重経営のパイオニア/有限会社人事・労務 ES組織開発・人事制度改革ブログ

社員の幸せ、職場の幸せを基準に経営を、社風を変えたいと本気で思っている社長さん・人事担当者の方へのエールをあなたへ!

1対99の幸せをそれでも目指しますか?

2020-11-30 19:22:22 | 地域貢献

日光街道143キロを歩いて13年、今回あるいてみて感じたことは、コロナ禍にも関わらずこれほど自立し頑張っている都市と荒廃が進んでいる都市の差を感じた年はない。

 

中央に頼りきりの地域と自分の街のことは自分たちでなんとかしようと言う街の姿をまざまざと見た。これは毎年歩いているからわかることだが、街に落ちているゴミの量が違う。

今回、古河の街では、コロナ禍にも関わらず地域の青年会議所がブースを設けてウォークラリーをやっていた。

草加の街や春日部の街では、地域のお店が、私達に中継点で今年も変わらずに声援を送ってくれる。

 

今は亡きスマートテロワールの著者 松尾氏は、もとカルビーの会長でこの書籍は松尾会長の遺言のような書籍。

松尾会長はこの書籍が書かれた2014年当時の経済偏重、都市化の影響による日本の農村の荒廃していく現状を憂いこの書籍を書き記した。

私はこの書籍に書かれている内容は農村に対する無策が都市に及んだ結果だと見ている。国に依存して来た地方や企業の状態。まさにここで記されている状態は、今まさにこの日本でそして都市でおきていることである。

ところで、松尾会長は奇しくも著書の中この日光街道を世に知らしめた探検家のイザベラバードの言葉を紹介している。

イザベラバードがみた 日本の大地そしてはたらく豊かさ

130年前山形置賜盆地

「米沢の平野は南に反映する米沢の町があり北には人々がしばしば訪れる湯 知場のあかゆがあり、まったくエデンの園である。豊根にして微笑む大地がありアジアのアルカディアである。繁栄し自立しその豊かな大地のすべては、それを耕す人々に属し、圧制から解き放たれている。これは、 専制政治下にあ るアジアの中では注目に値する光景だ。美しさ勤勉安楽に満ちた魅惑的な地域、どこをみわたしてもうつくしい農村」

 

これが130年前にイザベラバードの目に映った日本の姿。

日本奥地紀行は、1878年に発刊された。産業革命から120年余たったイギリス人であるイザベラバードは何を思い日本にやってきたのか?日本の大地、働く農村の人々の姿を目にしてここは理想郷だ!と彼女の感嘆の声が今でも聞こえてくる。

日本の近代化はまさにイギリスから遅れて始まった。その前年の1877年は西南戦争の年、本格的に日本の近代化が始まる。あれから130年今、イザベラバードがこの日光街道を歩いたらなんと言うだろうか?

 

松尾会長は次のように述べています。

「日本そのものに問題があるというより米国が抱える経済 的思惑に振り回された結果である。米国は目指す理想に近 つきつつある。しかしそれは、米国民の1パーセントにも 満たない支配層、超富裕層でしかない、それは、その道しか進むべき選択肢がみえないからではないのか?」

(書籍:P108)

続けて日本の大切にする道を述べている。そこには日光街道に縁のある二宮尊徳の思想をあげている。

 

富豪の世界、一円融合の世界

二宮尊徳を敬うように上杉鷹山の業績を受け継ぐように日本人はそこへ向う道を敬ってきた。その道はどんなに努力しても富豪にはなれない。農村では、富は隣人との協働で生まれる富。地域社会に富を生むほどの多く 消費者はいるわけではない。

でも、自由がある。自らの自由な選択が他者に及ぼす影響にたいしてしっか りと責任を持つことで約束される自由がある。(書籍:p200)

 

毎年日光街道を歩き美田100選に選ばれる田川の地域を眺めながら今市にある二宮尊徳記念館に行く。

素晴らしい田園風景が広がっている。かつて二宮尊徳が村人と対話を繰り返しながらこの田川の治水工事にあたったという。その三百年前の光景が、いま私の目の前に広がっている。

コンビニとフランチャイズのお店と自動車会社のショールームと街道のお決まりの郊外を走る街道の光景とどちらがこれから先の日本に遺したい光景か?

1%の為の経済とつながりを大切にした互酬経済。毎年日光街道を歩けばきっと誰もが思うだろう。

何を私達は後世に遺すべきかを!


想いと行動が全ての始まり。地域とつながる牧場経営。 ~ちぃちゃんに学ぶ循環型農業~

2020-11-27 19:08:31 | 地域貢献

みなさん、こんにちは。有限会社人事・労務の山﨑です。

 

11月21日(土)をもちまして、一般社団法人 日本ES開発協会 主催の日光街道まるっと学び舎プロジェクト「太陽のもとのてらこや2020年度」が様々な方のご協力のもと無事終了しました。

今年は、オンラインセミナーやオンライン配信など、このような世の中だからチャレンジを、ということで新たな試みを始めました。

また、オンラインセミナーは今後開催されます12月~1月読書会の始まりになっています。

終わりが始まりに・・・そしてまた新たなご縁に繋がっていくのでしょうか。

 

今回は、その読書会のオープニングセミナーについてのブログになります。

オープニングセミナー、特別講義ともにテーマは「地域のつながりを起点として幸せな経済のまわしかた」です。

オープニングセミナーのゲストは、栃木県大田原市の前田牧場さん。

循環型農業を実践し地域のつながりの基点として活躍する前田牧場の専務前田智恵子さん(ちぃちゃん)にZOOMにてお話いただきました。

循環型農業を営む前田牧場さん。

有限会社人事・労務との出会いは、地域を舞台にしたワークショップを行う越後湯沢での合宿研修。

その時の研修に参加してくださったのが出会いです。

 

第一部は、前田専務から事業内容のご紹介や循環型農業についてお話いただきました。

後継者として厳しく育てられた前田専務は、27歳のときに祖父が亡くなったことを機に祖父が大切に育てていた牛24頭を世話したことで、牛との親密なふれあいに心を動かされたこと、命が食べ物に変わるまでの長い間、牛に関わる人達の想いに触れ、そこに感動し就農を決意。来年25周年を迎えます。

 

終始、こちらまで笑顔になってしまうような、きらきらとした笑顔でお話される前田専務。

そんな前田専務も「昔はむすっとしていた時期もありました。」と仰っており、お客様に

「笑顔」と「健康」をお届けしたい、と思ってから変わっていったとのこと。

 

なぜ赤身のホルスタインを??

  • 良質な動物性タンパク質を手頃な価格で提供でき、多くの人の健康に貢献できるから
  • 再現性が高い飼育方法だから
  • ホルスタインが大好きだから

 

牧場なのになぜ野菜作りを??

  • 堆肥を活用して作物を作る
  • 近所の農家に後継者がおらず、田畑を借りてほしいという声が上がってきた
  • 堆肥の処理がスムーズになれば牛を増頭できる
  • 野菜作りは人手がかかるので雇用を生み出すことができる

  ↓

年間を通して野菜作りができる環境を作ることで

・スタッフの生活が安定する

・堆肥を使いきることができる

・野菜作りは仕事を選べば高齢者でも可能

 

まさに、マイナスをプラスに。

いろんなものを循環させている様子がうかがえました。

 

「いくら本を読んでも、行動がすごく大事。

格付けと美味しさは別のもので、世間の評価だけではなく自分の思い、自分が良いと思ったことを。気持ちが根底にあるのであれば、我儘とは区別し気持ちを貫くことが重要。」

 

私が感じたのは、自分も含めて普通、人は世間の評価に自分の思いを合わせがちだと思います。

なぜならその方が楽だから。

ですが、根底に「好き」という強い思いがあることで、長続きし、イノベーションを起こす原点になるのかなと思いました。

 

第二部は903シティファーム推進協議会の矢尾板と台東区での実践の話も織り交ぜながら

対談形式で行いました。

 

台東区で野菜販売からカフェへ、大田原で牧場経営からカフェやバーベキュー場へ、

場をつくることでさらに地域との交流を深めているお二人。

 

「場をつくる上で大変だったこと」

「地域とつながるために意識したこと」

「今にいたるまでの間でどういう個人の変容があったか。」

などのお話をお二人に伺いました。

前田専務から出た大変だったことや、地域とつながるために意識したことの中で特に印象的だったのは、まず雇用した人との意識の差です。

 

自分だったら出来る仕事ではなく、シンプルに簡素化し、その土地にあったお仕事の方法を考えた。

それを話す前田専務は、まさに経営者の顔であり、それを「なんちゃって智恵子スタイル」と楽しそうに呼んでいました。

 

また、繋がりたい、知ってほしいのならどこにでも顔を出すしかない!と断言。

これは第一部で本ばかり読んでいても、行動しなければ始まらない、と仰っていた言葉と繋がるものがありますね。

 

矢尾板からの変容の話のなかで、カフェで初めて売上が3万円あがったとき、5000円の使い方をみんなで話し合ったことから、自分事に捉えられるメンバーが増えていき、言葉を発しやすい空間が出来ていったとのこと。

カフェが目指す、対話を大切にいるだけで安心する、ほっとするような場づくりがスタートしています。

 

お二人とも、「好き」や「想い」が根底にあり、まわりの人や地域を巻き込んで活動していることは共通していますね。

お金だけに縛られているビジネスのやり取りしかなければ人は心が動かされないので、人や地域を巻き込むのは難しいでしょう。

 

高校2年生の参加者からは

「牛をペットのように大切に育てているのに、食用とするのは悲しいに気持ちになりませんか?」

という素朴な、他の大人も気になっているものの聞きづらい質問が出ました。

前田専務からは「よくぞ質問してくれました!この話は聞かれたときしか言わないのですが。」と。

前田専務も以前は、出荷の際、号泣してしまい仕事にならなったそう。

そんな中、実際に自分で屠畜の現場を見に行き、真剣に命をお肉にしようとしている職人の姿に感動し、嫌だからといって逃げちゃだめだ。と思ったとのこと。

今は、2年間を通じて様々な人が関わる牛を、寂しいけれども、そのために生まれてきたのだから役割を全うさせてあげるのが私たちのお仕事だ、と。

 

この質疑応答には、会場にいた皆さんそれぞれ想いを巡らせ、温かく深い空気が流れました。

 

前田専務、お話いただき本当にありがとうございました!

私個人として感じたこと。自分が北海道から出てきた身として、大田原という東京などの都会とは違った気質を持った土地の中で、周りが行っていないチャレンジをし続けている、その心意気に感銘を受けました。

前田専務は終始笑顔でお話されていましたが、今の循環型農業を営むしくみづくりが軌道に乗るまで、たくさんの苦労があったのだとお察しします。

 

それでも行動し続けることが大切だよ、と仰る前田専務の姿を見て、私も日々の行動を大切に、前に前に進んでいこうと思います!ありがとうございました。


浅川先生から学ぶ!903的スマートテロワールづくり

2020-11-25 20:22:55 | 地域貢献

太陽のもとのてらこや!日光街道まるっと学び舎プロジェクトの最終日。

 

日光東照宮の客殿にて開催される特別講義。

今回は、法人設立のサポートをさせて頂いた、一般社団法人スマートテロワール協会の顧問をお務めの、浅川先生にお話を伺いました。

コミュニティ運営に活きる学びを多く頂きましたので、私からは903シティファーム推進協議会・コミュニティの立場から、学びのシェアを出来ればと思います。

 

 

新たな地域自給圏をゴールとする「スマート・テロワール」

 

はじめに、その道のりで大切にされていらっしゃるスマート・テロワール的『真善美』のお話。

“90”分圏内にもう一つの居場所を持ち、つながりで循環する自律した暮らしを実践しよう!その割合は“3”割程度。

 

私たち903シティファーム推進協議会は、このゴールに向けて試行錯誤しながら歩み進めていますが、

私たちは、まだ、自分たちの真善美を言語化する手前の段階。

小さな実践(と失敗)を繰り返しながら、自分たちが大切にしたいものを互いに問うて、異なりを受け容れ、少しずつ歩みを進める段階だなぁと。

 

 

個人でない!時代は団体戦

この9月より、コミュニティカフェ「田心カフェ」が始動。

日光街道まるっと学び舎プロジェクトの4日目を共にした旧くからのメンバーも、月一店長にチャレンジしたい!との声があがりましたが、

田心カフェは、複数のメンバーが自ら出資し、自ら店長を務め、共感を軸に場が出来ています。

プロはいない。

プロが入ると、一時は良いけど、依存が起き偏りが生じ、コミュニティ全体の成長にはならない。

これが、今時点の私たちならではの、過去からの教訓。

素人のため、早くも資金ショート…といった事件もありますが、相互扶助のマインドで、歩みを進めています。

 

 

最短で30年後。テロワール、文明・土壌をつくっている。

903シティファーム推進協議会を立ち上げたのは2015年ですが、

その7年前から続いてきた、日光街道まるっと学び舎プロジェクトがあったからこそ、9月に立ち上げたばかりの田心カフェに、日光街道沿いの歴史を重ねたこだわりの逸品を置かせて頂くことが出来たり、MIKADO珈琲を提供することが出来ています。

今後、田心カフェでは、共感コミュニティ通貨 eumo を導入し、越境したつながりも深めていく最中ですが、

この日、大自然の複雑で美しい紅葉する日光街道を、リアルに心地よさ=真善美をメンバーと共有する、そんな時間を今後も大切にしながら、次代へと続く豊かなつながりを醸成していきたいと思います。

 


浅川先生をお招きしての日光東照宮社殿での記念講演。スマートテロワールの書籍から、テーマは国も会社も頼りにならない時代の生き方、働き方。

2020-11-25 13:39:48 | 組織開発・社風改革

今回143キロを最後まで歩き切った参加者は2名。

最高齢参加者の本領さんと、徒歩行軍リーダーで学生の高橋くん。

まさに、自分の足で自力で歩き続けた二人に拍手を贈りたい。

そして全行程でなくともこのコロナ禍に自分の意志で参加し一日だけでも自力で、

歩いた全ての方々に拍手!

毎日のようにこのコロナ禍、

国は何をやっているんだ!

私の給与はどうなってしまうの?

まちに人が来ない。金が落ちなきゃまちは崩壊してしまうよ。

と国や会社に助けを求める人で溢れかえっている。

このような時代、私達はいかにして働き、生きていくのか?

 

まさにこの143キロを自力で歩くその意志力ではないかと改めて思う。

 

ジャーナリストであり、いまは、仕事の問題から国際問題まで様々な事象におけるアドバイザーとして活躍しているがそんな浅川先生が大切にしていることは、周りの情報に流されずに自分の目で現場に立ち、そして確かめ自分の感じたことを大切にして情報を編集すること。

まさに自分が何を感じたかが大切だという。

四年前のアメリカ大統領選挙では、世間がヒラリークリントンさんが次期大統領になるだろうという世間の情報を鵜呑みにすることなく、アメリカに渡って現地の様子からトランプさんが当選するはずだと予測しそれを書籍にしベストセラーになったというエピソードは、自分が現地に立ち情報に流さず自分が何を感じ何を思考するかの大切さを教えてくれる。

 

では、皆はこの日光街道で何を感じ何を観たのだろうか?

まずは、私からの皆への投げかけ。

あなたは何を感じたか?

143キロを歩いてみての質問。

紅葉の美しさ

道中の蔵の佇まい

男体山、女峰山の威容

杉並木を抜ける風の音

踏みしめた時の落ち葉の柔らかい感覚

小川を流れる水の透明度

水の冷たさ

この道中色々なことを感じながら歩いた。

こうしてみると半分は視覚からの感覚だと言うことがわかる。

そして、いつもと比べてマスクをつけての行軍のせいか、匂いに関する感覚がないのに今更ながら気がついた。

道中の報徳庵での感覚がいつもと違ったのはそのせいか?

 

そういえば杉並木沿いの民家からの焚き火の匂い、報徳庵の日光蕎麦の香りと私自身無意識であるが私の心は五感が塞がれただけで意識に変化が起こり心にも影響しているのだなあとこのコロナ禍で改めて五感を開く大切さを学んだ。

 

もしかしたらコロナ鬱の原因も五感が塞がっていることから起きているのではないかなあと、ふと思う。

 

人間は意識して五感を開かないとそれでなくとも視覚に頼って心が左右されてしまう。7割が視覚というから大変だ。

日光街道徒歩行軍、感性を研ぎ澄ます。意識の深さは感性に比例する。

ある終末期医療に携わる医師が、亡くなる前に人が後悔することをまとめた。

それは次のような項目だという。

 

*もっと健康に意識を向ければよかった

*もっとゆったりと働けばよかった

*もっと家族や友人と時間を過ごせばよかった

*もっと自分らしく生きればよかった

*もっと自分の言葉で話せばよかった

*もっと自分の幸せを考えればよかった

 

これらの項目から言えるのは、

人は自分自身と深く向き合ってこなかったことを死を間際に後悔するというのだ。

世間の評判、マスコミの情報、学校の先生や政治家、専門家など様々な権威や皆がそうだから自分もそれが正しいと無批判に流され依存してしまうそんな自分がいるのではないだろうか?

 

今回のイベントの参加は皆の意志が感じられる。このコロナ禍での参加。

怖れ、不安が私だけでなく皆にもあったに違いない。ワザワザこんな時期に、と人は言う。

でも私達は参加した。それぞれの思いで。

○自分のリーダーシップのあるべき姿を知りたくて

○自分の体力の限界に挑戦、そして自分への自信へとつなげる

○会社の社長として、社員に自分が仲間に挑戦する姿を模範として示す

 

それぞれがそれぞれの思いで参加したこの143キロの行程。

それぞれが立場を越えて誰かに依存することなくお互いがお互いに参加したメンバーに敬意を払いつつ助けあいながら自立しつつも、つながりあって皆でゴールする。

 

今年、13回目。この光景をみたくて開催したのだった。皆さんありがとうございました。





多様な時代に会社が重視すべき社員のBeing

2020-11-24 19:21:00 | 人事制度

2020年、日本のみならず世界中で「働き方」が激変しています。いうまでもなく、新型コロナの影響なのですが、実は新型コロナ以前の数年間で、静かにその変化の予兆は表れていたように思います。単純労働は次々にシステムやAI、そしてギグワーカーなどの業務委託に置き換わり、「労働者」が行うべき仕事はどんどん少なくなっていっています。一方で労働者は働く場所や時間の選択肢が急激に増え、自分の趣向やライフスタイルに合わせた働き方もできるようになりつつあります。

このような流れが逆戻りすることは考えらません。社員は、今後より複雑で予想のつかない(正解のない)仕事に対して、組織の方針を理解しつつ自ら考え、仲間を巻き込みつつ対応していくことが求められます。社長や上司が答えを知っているという仕事がどんどんなくなっていくのです。

これまでの組織の人事制度において、例えば目標管理やコンピテンシーなどを活用することはかなり効果がありました。目標管理は上司と部下で面談を行い、今期の達成すべき目標を会社目標に沿って設定します。その目標を達成するために部下は1年間活動し、上司はこれを支援します。しかし、これからは立てた目標が1年間(もしくは半年間)も目標であり続けることのほうが少なくなるでしょう。1年後の目標などを具体的に立てることが不可能になってきているのです。

また、コンピテンシーでは、業績の高い社員の行動特性を抽出し、その特性を他のメンバーも実施することで全体のレベルをあげようというものです。これも、職務内容が皆同じで、そのプロセスが変化しない環境なら効果はありました。しかし、今は一人ひとり担当する職務は多様で、しかもそのプロセスも常に変化が起こります。「業績を必ず出す行動特性」を抽出すること自体が難しくなっているのです。

もちろん、今後も、職種、仕事の内容や本人の等級などによっては、これからも有効な手法である場合も当然あります。例えば、入社から3年以内の新人を育成、評価する場合はどちらも有効な手法でしょう。しかし、ある程度、職業経験をつんで、複雑な業務にたずさわるようになると、このような定型的な評価は限界がくるでしょう。

では、会社は社員のどのような点に注目し、評価すべきなのでしょうか。これからはBeingといわれる、その社員の「あり方」(意識・思い・人生哲学・視座など)を会社はもっとも意識すべきです。

人間が仕事で成果をだすには、いわゆるDoingが必要です。具体的に動き、能力を発揮し、自分の役割を果たし、結果をだして組織に貢献する行動です。ただ、この具体的な行動をするためには、その行動のベースとなるKnowingが必要です。Knowingとは、行動するために必要な、過去の経験や身に着けている知識のことです。当然ですが、ある仕事をするためには、それに必要な知識や経験なしに成果をだすことはできません。

よりレベルの高い成果をだすためには、よりレベルの高いKnowingが必要なのです。しかし、ひたすらKnowingを高めていけば、より大きなDoingを生み出せるのでしょうか?そうではなりません。Doing、Knowingの下には、そのベースとなるBeingが存在するのです。本人の人間的な「あり方」です。

 

Beingの一つの指標に「視座」があります。今日や明日のことしか考えずに仕事をしている人が、成し遂げることができる仕事は、限られるでしょう。世の中にいいインパクトを与えるような業績をあげるリーダーは、自分個人のことよりも、組織全体はもとより、地域や社会全体にとって何が最も良いことかという広い視野で行動しています。この人間的な成長がないまま、Doing、Knowingだけを伸ばそうとしても、ベース(Being)が狭ければその上にあるDoing、Knowingを高めることはできません。これは逆三角形や長方形になることはないのです。

これからの組織は、そこに所属しているメンバーのBeingをしっかりと把握し、その高まりに応じた役割を与えていくべきです。また、Beingいかにして高めていくか、その経験と気づきの成長の場をどのようにつくっていくかを重視すべきなのです。