中小企業のES=人間性尊重経営のパイオニア/有限会社人事・労務 ES組織開発・人事制度改革ブログ

社員の幸せ、職場の幸せを基準に経営を、社風を変えたいと本気で思っている社長さん・人事担当者の方へのエールをあなたへ!

”暮らす”と”働く”が融合した新しいEAP活用のすすめ

2021-01-20 13:05:39 | ダイバーシティ

皆さん、こんにちは。(有)人事・労務の金野です。

 

皆さんは「EAP」をご存知でしょうか。

従業員支援プログラム EAP は、もともとはアメリカで生まれた制度ですが、日本の企業でも大企業を中心に取り入れられるようになりました。

アメリカでEAPという概念が生まれた背景も相まって、日本でも主にメンタルヘルス対策として取り入れられるのが一般的ですが、これからは「個が主体的にキャリアを築く」時代。

働く個々がキャリアを歩む上で直面する複雑な課題を解消するスベとして、自ら選択してEAPのサービスを活用していく時代に変化していくのでは、ということで、新たな時代のEAPの導入・活用について、お伝えしたいと思います。

 

働き方改革を経てこのコロナ禍では、リモートワークや時差出勤など働くかたちが変容しました。

在宅勤務時のオンライン会議に子供や犬猫が加わったり、自宅から職場のオンライン忘年会に参加したり、これまでは”通勤”というアクションを通して区切られてきた「職場と家庭との境目」が必然的に変化し、線引きし直したり融合したりしています。

 

その変化に自然となじんでいる人もいれば、何らかの負荷を受けている人も多いはずです。

副業解禁や自律分散型組織への注目の高まりなど、「個としての主体的な生き方・働き方」が社会全体で後押しされ、「会社に雇われて働いてお給料をもらう」という受け身な感覚から、「仕事を通してキャリアを重ね成長・変容していく」という能動的な感覚で仕事人生を歩んでゆく流れが、これから先ますます強まって来るのではないかと感じます。

EAP(Employee Assistance Program)においても、単なる福利厚生的な意味合いではなく、キャリアデザインやライフスタイルなども含めた「社員一人ひとりの“はたらき方と生き方”」全般を取り上げ、それらにおいて生じる問題を解消し、専門分野を組み合わせながら解決の道筋を示すプログラムとしての役割へとニーズが変化しているのではないかと思うのです。 

例えば、社員個人からの相談に上司や人事部だけが対応するのではなく、介護や育児、キャリアアップなど生き方全般に対して、外部のEAPサービスを活用しながら対話を進め問題解消していく、というものです。

そこにはまず、「本人〜会社〜EAP機関」という三者の信頼関係が必要です。せっかくEAPサービスを利用して相談しても、結果その会社を退職することになった、となれば、会社にとっては大きな損失です。かといって、そのような懸念があるために本人から相談の機会を奪ってしまっては、より悩みが深くなり結局退職する、ということになっては元も子もありません。

会社は、社員を囲い込むのではなくオープンマインドでソトに出していく。社員は、自社のメンバーとしての軸はぶらさずに社会性を高める機会として、うまくソトの機関も使いながら、抱える課題の解消に時間を費やしてみる、ということが大切になってくるのです。

 

そして、EAPのサービス自体も変化していく必要があります。

・業務の優先順位の付け方や意思決定の仕方など、”良い仕事”をするためのスキルや心がまえの学び

・「育児休業を経て職場復帰する際の心がまえ」であったり「介護に直面した時に家庭内でどのような話し合いを持てば良いのか」など、”暮らす”と”働く”に関わる相談

・病気を抱える家族との暮らしかたアドバイス

等々。

個人の人生観(ライフスタイル)や仕事観(ワークスタイル)まで、社内においては上司やメンター役、人事担当者、社外においてはEAP機関や属するコミュニティのメンバーなど、接点あるところから必要な情報を得て、自らのキャリアを考えていく時代になってきているのです。

 

この観点からとらえると、私たちもこれまで2万人近い方々にEAPサービスを行なってきました。

そこには、自社に属しながらも二拠点の働き方や本業以外の地域活動をしていきたい人、独立・起業を考えている人、親の介護や育児、障がいを持った子どものこと等なかなか職場の中では話せないが心理的負荷になりつつある案件を抱えている人、など、さまざまな「課題」が存在していました。

「個人的なことはあまり人前で言わない方が良い」「職場と家庭は別」といったこれまでの日本社会に流れる常識から、会社の中では悩みを吐露できぬままに、根深い課題となり、何らかの制約となってやむを得ずキャリアを諦めたり悲観的になってしまっている人も、相当数いるはずです。

このような状態に関して、「ワークライフバランスの推進を」と一言でくくるのでなく、「今の社員の多くは“仕事も暮らしもまぜこぜの中で人それぞれの事情を抱えている”」という前提を理解した上で、仕事=働く内容や働きぶりのみを判断材料に組織変革を推し進めるのではなく、EAPの視点から個々の暮らし方・生き方に関しても問いかけを重ねながら、組織として対応できる解決の道筋を示していくことが重要ではないかと思います。

ある対談番組の中で、哲学者の國分巧一朗さんは、医師の熊谷晋一郎さんの言葉を引用し、

「自律する、というのは、依存先が少なくなることではなくて、依存先が増えてどこに依存しているかすらもあいまいな状態がふわっと現れてきている段階を指す」

と述べ、それを受けて評論家の荻上チキさんは、心理学における「コーピング」という考えを紹介する場面がありました。

ストレスを受けた時に気晴らしをして気分を良くすることをコーピングと言いますが、そのコーピングは「質より量」。つまり、小さなこと(窓を開けて新鮮な空気を吸う、コーヒーを淹れるなど)でも良いからたくさんのコーピングのレパートリーを持っておくことで、ストレスの溜め込みを防ぐことができる、と。

特定のものの道が失われても別の選択肢がある、と切り替えることができる、という点は、「マルチアイデンティティ」の考えにも置き換えることができます。

人にはさまざまな切り口があり、例えば家庭では「母親」、職場では「上司」、地域活動では「一メンバー」、趣味で「陶芸の職人」等々、複数の役割をもち、そこでの顔を持っているわけです。そのようなマルチアイデンティティな自分を認識できると、國分さんや荻上さんが話すように複数の依存先を得ることができ、例えば、「しばらくは職場と家庭中心の時間の過ごし方になるけれどもたまに趣味の時間でリフレッシュしてエネルギーを高める」「一時期だけ異なる働き方を選んで無理なく働きながら生活していく」といった選択肢をもつことができます。

外部EAPサービスの利用は、そのような「しなやかに暮らし働いていく上での依存先の一つ」になり得るのではないかと思います。

 

企業規模の大小や年代にかかわらず、今や働く誰もが多様な課題に直面する時代。

持続的なキャリアを実現するためにも、課題にも柔軟に対応できるしなやかさをもった組織を実現するためにも、EAPを活用してみてはいかがでしょうか。

EAP「はたラボ」


冬休みに読んだ本から思った「多様性を考える始めの一歩は、自分の個性を見つめること。」

2021-01-19 12:56:35 | ダイバーシティ

みなさん、明けましておめでとうございます。

(有)人事・労務の山﨑です。

年末年始、本を2冊読みました。

今回はその本のご紹介と感じたことをお伝えしようと思います。

近年、少しずつ認知度が高まってきている、HSP。

武田友紀著

きっかけは、何となく世の中で「HSP」「繊細さん」という言葉が流行りだした2020年、自分の5歳下の妹がこういう気質あるかもなあ、と興味を持って調べてみると

「なんだかチェックリスト当てはまることが多いなあ。」

「これ私が自分に対して不思議に思っていたことでは?」

「HSPって良いところもあるのか。病気でもなく脳の神経システムによる個性・・・?」

気にしすぎるのは「繊細な人」だから!? HSP度をセルフチェック[精神科医 監修]

もともとメンタル関係や心理学などの話に興味を惹かれる私は本屋に行きました。

そうすると、何とHSP関連の本が多いこと多いこと・・・

それだけ今多くの人が関心を寄せているということですね。

  • HSPとは

アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した「HSP(Highly Sensitive Person)」という概念です。

繊細な人たちの感じやすい性質は、長らく「気にしすぎ」「真面目すぎる」など、個人の性格によるものだと誤解されてきたのですが、アーロン博士が行った調査により「生まれつき繊細な人」が5人に1人の割合で存在することが分かってきたそうです!

HSPな人とそうでない人は脳の神経システムに違いがあり、生まれつき「背の高い人」がいるように生まれつき「繊細な人」もいることが分かってきました。

※この説について、詳しく知りたい方は調べて見てください。

  • 2冊の本について

著者の武田友紀さんは、自身もHSPのHSP専門カウンセラー。

九州大学工学部卒業後、大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立されています。

  • 気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本

②今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト

上記、2冊の本の中で、アーロン博士の唱えた説を武田さんなりの解釈を加えながら、HSPを克服すべき課題ではなくいいものとして捉える出発点として温かい言葉が綴られています。

  • 個性であるという捉え方

①の本では、HSPの気質DOES

D・・・深く処理する

O・・・過剰に刺激を受けやすい

E・・・感情反応が強く、共感力が高い

S・・・ささいな刺激を察知する

について、これはネガティブに捉えることではなく、背が高い、絵を描くのが得意、机に座っているより身体を動かす方が好き、といった各々の特徴と同じで個性であり、長所でも短所でもあり、ただの特徴なのだという発想が目から鱗でした。

  • 得意を伸ばすという捉え方

②の本では、そんな特徴を持ったHSPの人がどうしたらより幸せを感じるのか、について書かれていました。

得意を伸ばす、という発想で足の速い人がそれをきっかけにサッカーに取り組むように、HSP気質を隠し打ち消し、乗り越えるのではなく、受け入れて長所として伸ばしていく・・・それが幸せに繋がるようです。

私が共感したのは、

「考えすぎる」ことは「深く考える」幸せに該当するということ。

思考の深さは、時として考えすぎて動けなくなってしまったり、思考をぐるぐるさせることで頭痛が起きるほど考えすぎてしまうことが、あるのですがそんな経験も長所であり短所で考えれること自体が幸せなんだなと。

もちろん、仕事としては納期を守ったり、行動が大事な場面をあることを理解した上で、

思う存分一つのことについて、考える時間を自分で持つ休みの使い方なんかも良いなあ、と思いました。

  • 最後に

読んでいて心に残った言葉はたくさんありますが、

~我慢しながら「相手のために」頑張ると、見返りが必要になります。~

~迷った時は、頭で考えるよりも、それをやっている最中の感覚を大切にする。~

この言葉はハッとさせられました。

私は、どちらかというとHSP気質かと思いますが、実際はHSPか非HSPかでばっさり分断できるほど人間の性格は分断されていないはずで、どんな方が読んでも自分への理解と他人への理解が進む素敵な本でした。

HSPな人は全人口の20%もいるのですから、世代の違う方への興味、多国籍の方への興味を持つのと同じように分かりやすい違いだけをウォッチするのではなく、こういった繊細な心の動きに着目することも、多様性がある時代の中で大切な感覚になってくるのかなと思います。


高年齢者雇用安定法の改正

2021-01-18 16:03:24 | ダイバーシティ

みなさん、こんにちは!有限会社人事・労務の西田です。

ご存じの通り、日本は少子高齢化が急速に進展し人口が減少する傾向にあります。そんな中で働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、今年の4月から高年齢雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保措置を講じることが「努力義務」となります。

あくまで努力義務でありますので、措置を講じなくても罰則等があるわけではありませんが、法律により各企業に努力を求めることになります。

具体的には、次の①~⑤のいずれかの措置を講じるように努めることが必要となります。

①70歳までの定年引上げ

②定年制の廃止

③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入

 a.事業主が自ら実施する社会貢献事業

 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

現在は、原則65歳までの雇用確保が義務になっており、65歳までの定年制度や継続雇用制度、もしくは定年制度を設けない措置を導入する必要がありますが、今後は70歳までの定年制度や継続雇用制度、もしくは定年制度を努めるようにしなければなりません。また、今回は雇用以外の措置として、70歳までの業務委託制度および70歳までの社会貢献事業に従事できる制度も対象となります。

 

【現行と新設措置の違い】

一般的には、①から③の措置の導入を努めることが多いかと思いますが、④と⑤の「創業支援等措置」を努めることも可能です。ただし、「雇用」ではなくなりますので、制度導入に当たっては、計画を作成して、その計画について労働者の過半数を代表する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数を代表する労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者の同意が必要です。

また、⑤の「社会貢献事業」とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業のことであり、実際に「社会貢献事業」に該当するかどうかは、事業の性質や内容等を勘案して個別に判断されることになります。

このように、努力義務とはいえ、70歳までの就業を各社検討する必要が出てきていますが、気になるのは対象者に対する給与水準かと思います。給与制度を考えずに70歳まで賃金を右肩あがり、あるいは横ばいのまま雇用をすることは、会社の経営を圧迫することもあり得ます。

 下記の図を見ると、60歳到達時に賃金を減額する会社は300人未満の企業だと74.2%にものぼり、その場合の賃金減額後の支給率は減額前と比較して60~69%が39.5%が最も多く、50%~69%に減額する割合が全体の6割弱にあたることが分かります。

今回の法改正による努力義務も、おそらく最も多い対応が、70歳までの継続雇用制度になるかと思います。例えば定年制度は60歳のままで、上記のような賃金減額を行った上で70歳まで後続雇用制度を導入するということも可能です。

【60歳到達時に賃金を減額する場合における減額後の支給率】

「高年齢者の処遇に関する実態調査」労務行政研究所 2019年8月~10月調査実施 

ただし、昨年10月の名古屋地裁の判決では、定年後再雇用された労働者が同じ仕事なのに賃金を減額したことに対して「業務内容や責任の程度に違いがないのに、賃金総額が定年時の60%を下回る部分は違法」とされた判決もありますので、賃金を減額する場合には、業務内容や役割の責任度合いを変更したり、労使で協議して決めることが必要になります。


何故コロナの時代にワーカーズなのか?

2021-01-17 22:57:41 | 経営全般

テーマは「ワーカーズ・コープというコモンズ」

恩師 #辻信一こと大岩先生が世話人を務める ナマケモノ俱楽部主催の学びの場へ。

 

2020年12月4日に可決・成立した「労働者協同組合法」

「労働者協同組合」とその法律「労働者協同組合法」とは何か?

その働き方である「協同労働」とは何か?

 

「労働者協同組合」のはじまりは「日本労働者協同組合連合会」

1970年代、国の失業者対策事業から出発した。

その後、1980年代の制度廃止に伴って「自分たちの仕事を起こそう」と結成された。

 

この起源の通り「協同組合(cooperative)」に「当事者性」を見い出すことが出来る。

 

労働者協同組合 の 目的(労働者協同組合法 第一条)

第一条 目的

この法律は、各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ、組合員が出資し、それぞれの意見を反映して組合の事業が行われ、及び組合員自らが事業に従事することを基本原理とする組織に関し、設立、管理その他必要な事項を定めること等により、多様な就労の機会を創出することを促進するとともに、当該組織を通じて地域における多様な需要に応じた事業が行われることを促進し、もって持続可能で活力ある地域社会の実現に資することを目的とすること。

 

「各人が生活との調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就労する機会が必ずしも十分に確保されていない現状等を踏まえ」

”国が生きづらい働きづらい現状を認めている。”

 

…確かに。

玉木さんのお話を聞いて改めて立ち止まる。

 

そんな現状を踏まえた法律の制定。

 

労働者協同組合は

定款において「どのように意見反映を行うか」を明記する必要がある。(法第29条)

また、総会において、理事は「どのように意見反映を行ったか」を報告義務を負う。(法第66条)

 

そして…この企画。

 

孤立からつながりへ

公と私のあいだへ

あなたの中の自然へ

 

日本に公共という言葉がある。これが問題だと思う。

公を共の中に巻き込んじゃった。

 

また「公私混同」を悪とする日本。

 

そんなに単純に分けることができるのか。

分けること、分断が心地よいのか。

 

この公と私の「間」。

ワーカーズはこの「間-あいだ」改めて作っていく動きなんじゃないか。

 

ワーカーズは、私自身の困りごと・私たちの困りごと…「暮らし」から出発している。ここから「仕事」になっている。

 

変わらぬ大岩節。

 

何故コロナの時代にワーカーズなのか?

自ら仕事を創り出す、時代が来ている。

▼ワーカーズ・コープ 詳細はこちらを通して新しい情報をまとめていければと思います。

https://www.jinji-roumu.com/workers-coop.html


個人情報保護法の改正

2021-01-15 21:02:57 | ダイバーシティ

こんにちは。有限会社人事・労務の髙橋です。

 2021年も何卒宜しくお願い致します。

 今回は2020年6月に施行されました改正個人情報保護法について少し触れていきたいと思います。働き方改革や、このコロナ禍で働き方を変えざるを得ない状況になっている企業も少なくないと思います。特に在宅勤務等のリモートでの業務へのニーズは高まっていると思います。

 確かにクラウドツール等の発達で、いつでもどこでも作業ができるようになってきて、場所に縛られない働き方も需要があります。一方で、リモートでの作業が増えれば、外部との情報のやり取りも必然的に増えていきます。また、会社は直接労働者を管理することが難しくなっていくため、事前のルール作りや体制作りが求められることになります。

 今回は、個人情報保護法が改正点に触れ、今後どのような情報に対して注意を払わなければならないか確認していきたいと思います。

①「仮名加工情報」(改正法2条9項)の新設

今回の改正で新しく追加された規程です。仮名加工情報とは、個人情報に含まれる一部情報を削除するなどして、他の情報と突合しない限り、特定の個人を照合できないようにした情報を指します。仮名加工情報は過去のある利用目的で取得した個人情報を別の目的で使える等若干の規制緩和があります(改正法35条の2の9項、15条2項)

②個人情報利用の規制(改正法16条の2)

こちらも新設の規程です。個人情報の取扱いだけでなく、利用方法について規制を行うもので、「違法又は不当な行為を助長し、又は誘発するおそれがある方法」での個人情報の利用は認めないとするものです。

③情報漏洩等に対する義務(改正法22条の2)

個人情報を取り扱う事業者が、取り扱う個人データを漏洩し、個人の権利利益が大きく害するおそれがある場合は、個人情報保護委員会に報告義務が発生します(改正法22条の2第1項)。また、本人へも同様の旨を通知しなければなりません(同条2項)。

④オプトアウト方式による第三者提供が一部制限(改正法23条の2)

オプトアウト方式とは、事後的に本人からの求めがあれば停止することを前提に、提供項目等を公表の上、本人の同意なく第三者に情報提供をする方法のことです。改正法により、(1)不正取得された個人データ、②他の事業者からオプトアウト方式で取得した個人データについては、オプトアウト方式で第三者に提供できなくなりました(改正法23条2項)。

⑤個人関連情報規程の創設(改正法26条の2)

情報提供元では個人データには該当しない情報であっても、提供先では個人データとして取得することが想定される情報については、提供先が情報の取得・利用をすることについて本人の同意を得ていることを「提供元が」確認をしなければ、当該業者には情報提供ができなくなります。

⑥個人情報開示請求範囲の拡大

利用停止や消去等の個人の請求権については、法違反の場合だけでなく、個人の権利や正当な利益が害される恐れがある場合にも可能となります(改正法30条5項)。(他、改正法30条1項・16条の2、30条6項など)

他にも、6か月以内消去される短期保存データについても、開示・利用停止の対象となる(改正法2条7項)など、個人の保護される範囲が拡大しています。

⑦罰則の強化

全体として、法違反に対するペナルティが重くなっています。

委員会による命令への違反:「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(改正法83条)

委員会に対する虚偽報告等:「50万円以下の罰金」(改正法85条)

また、法人に対する罰金刑は最大1億円に引き上げられました(改正法87条)。

全体として、個人の情報の保護をより強く図った改正となっています。リモートでの情報のやり取りも今後増え、管理が難しい側面もあるからこその法改正でしょう。特に、法人に対する罰則規定は大幅に強化されています。

 何かあった場合に、会社は知らぬ存ぜぬという訳にいきませんので、しっかりとした管理体制を用意しておく必要があるでしょう。