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面積図

 小学生が習う算数に「つるかめ算」というものがある。今の小学校では、そんな呼び方を教えないかもしれないが、古典的な問題で、誰もが一度は解いたことがある問題だろう。例えば、
 「鶴の足は2本、亀の足は4本あります。今、頭が10個、足が32本ある時、鶴と亀はそれぞれいくつずついるでしょう」
という問題である。小学校では、現在これを解くのにまず表を書かせる。仮に鶴を10羽、亀を0匹とすると、足の数は全部で2×10+4×0=20本となる。これでは足が少ないから、足の多い亀と足の少ない鶴とを交換していく。
 鶴 |10| 9| 8| 7| 6| 5| 4|
――――――――――――――――――――――――――
 亀 | 0| 1| 2| 3| 4| 5| 6|
――――――――――――――――――――――――――
 足 |20|22|24|26|28|30|32|

という表を作れば、鶴が4羽、亀が6匹だと分かる。これを式で表すなら、
(式)鶴が10羽いるとすると、足は2×10+4×0=20本だから、足が32-20=12本足りない。そこで、鶴と亀を交換すると、足が4-2=2本増えるから、12本増やすには12÷2=6匹亀を鶴と交換すればよいことになる。従って、鶴が10-6=4羽、亀が6匹となる。
 ここまでが、小学校で教えてくれる解き方だが、塾では違う教え方をする。(勿論、表や計算の仕方を説明した後で)それは、面積図と呼ばれる解法である。長方形の面積は、縦の長さ×横の長さ で求められることを利用していく解法だ。写真を拡大するとよく分かるが、まず縦を足の数、横を頭の数だとする。左の長方形は亀を表わし、右は鶴を表わすとすると、左の長方形の縦は4、右の長方形の縦は2となり、横はそれぞれの長さが分からない(それを求めるのだが)が、合計は10だと分かっているから、それぞれ書き込んでみる。この長方形の面積が、一匹の足の数×頭数 で、亀・鶴それぞれの足の数の合計を表わすことになり、2つの長方形の面積の和が足の総数、この問題では32となる。ここまでで、図の準備が完了。
 次に、右の長方形の上の横線を左側に延長してみる。(点線で表わす)すると、今新しくできた長方形の面積は、10×2=20となる。従って、点線で区切られた上の長方形の面積は、32-20=12となり、さらにこの長方形の縦が4-2=2となるから、横の長さは、12÷2=6。これは左側の大きな長方形の横の長さでもあるから、すなわち亀の頭の数となる。ゆえに、鶴の数は10-6=4となる。文字で説明すると、自分で書いていてもすごく面倒くさいように思われるが、実際この面積図をどれだけ使いこなせるようになるかが、私立中入試の算数を攻略できるかどうかの大きなポイントとなる。
 方程式を使えば簡単に解ける問題も結構ある。しかし、方程式を教えるには数学的約束事を1つずつしっかり教えていかなければならないため、小学生には「禁じ手」とされている。無理に教え込んでしまうと、彼らの将来の数学的思考の芽を摘み取ってしまう恐れもあるから、決して教えてはならない。そのために考案されたのが線分図(割合の問題を解くには必須の図)であり、面積図である。図を書くのは問題にたくさん当たって慣れさえすれば、それほど難しいものではない。図さえ書ければ視覚的に考えられるから、数字を具体的に捉えられるようになる。面積図というのは、小学生にとっての方程式のような役割をしてくれる。
 と言っても、ある程度の学力がある子にしか使いこなせない道具であることも事実だ。算数の得意な子に説明すれば、すぐに自分のものとしてすいすい解けるようになる。しかし、苦手な子には、いくら説明しても頭の中に入って行ってくれない。それが算数の宿命のようなものだが、ダメだとなったらずっとダメなままで終わる場合が多い。だから、そういう子たちには、あえて面積図など使わずに、最初に説明したような表を書いて答えを見つけるように指導している。
 算数を教える楽しさは、1つの問題に何通りかの考え方があり、どれが一番その子にとって分かり易いかをあれこれ考えながら、見つけ出していくことにある。したがって、生徒1人1人の能力や個性に合わせていく通りもの教え方がある。最適なものをいち早く見つけ出すのが私の仕事である。


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