goo

変なの

 夏休みに入ってすぐの頃、夜遅くに電話がかかってきて、女性の声で、

「9月からの入塾を考えているので、一度体験に行きたい」と言われた。

「はい、いいですよ。いつ来られますか」

「じゃあ、8月の4日に」

「わかりました」

というやりとりで電話を切ったのだが、1ヶ月以上も先のことなのになんだろうな、とちょっとした違和感が残った。

 すると、夏休みに入った8月の3日の夜にまたその人から電話がかかってきた。

「明日体験に行く予定だったんですけど、用事ができたので月末に変更してください」

と言われたから、

「はい、わかりました」

と素直に返事して、改めて26日に来てもらうことになった。が、電話を切った瞬間、3年ほど前の記憶が突然蘇った。

「そう言えば、体験にくるといってドタキャンした人がいたぞ。確か今の電話の人が名乗った苗字と同じだった気がする」

そうそう、確かに特徴的な名前だったから記憶に残っていた。

「間違いない、きっとそうだ」

二度あることは三度ある、「26日も来ないかもしれない・・」とその時思った。でも、もし約束通り来た時に備えて準備はしておかねばさすがに失礼だろうと思ったので、前日までに体験授業でやってもらうプリントを用意しておいた。これで来なかったら仕方がない、そんな気持ちで当日を待った。

 で、昨日がその日。「行けなくなった」とまた電話があるかと思っていたが、かかってこなかったので、一コマ前の授業が終わった時、私は妻に電話して、「体験の子が来たら机の上に置いてあるプリントやってもらって」と伝言して、生徒の送迎のためバスで出た。

が、塾に戻ってくるなり妻から電話がかかってきた。

「体験の子なんだけど」

「来なかった?」

「いや、来たから、教室に案内して椅子に座らせて、このプリントやってねと言って、私は教室から出たの。お母さんと少し外で塾のことを話していたら、いきなりその子が出てきて車に乗ろうとしたから、どうしたの?って聞いたんだけど、何も言わずにドアを閉めたの。お母さんもすぐに乗り込んで、何か喋っていたみたいだけど、いきなり車を動かし始めて、帰って行っちゃった。」

「何も言わずに?」

「そう。訳がわからないからびっくりして電話したんだけど」

「なんだ、それは。怪しいとは思っていたけど、もう無茶苦茶だな」

「どうする?」

「どうしようもないだろう。もうほかっとけ」

「そうだね。関わらない方がいいね」

 こんな意味不明なことは、長い間の塾生活の中で初めてだ。いったい何が起こったのか今でも謎のまま。でも、なんだか分からない人たちが以前より多くなってきて、戸惑うこともたびたび。ほんとうに困ったもんだ。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )