現代女性作家で作風を好きなのを1つ挙げよと言ったら文句なしにわたし
は山崎豊子氏を挙げます。厳しい目で眺めた社会派として、時にはドキュメン
タリー的とも言える構想での小説でした。
初期の「花のれん」は老舗の商家が舞台、医学会(大学病院)へのメスの
「白い巨塔」、銀行界を扱った「華麗なる一族」、苛酷なシベリア抑留の
「不毛地帯」、第二次大戦の「二つの祖国」、日航機遭難事故をめぐる「沈ま
ぬ太陽」、中国残留孤児を描いた「大地の子」(8年間費やしての作品)、
殆どテレビ化、映画化されてもいます。
出版された最後の作品は沖縄返還をめぐっての外務省との問題を扱った
「運命の人」など、どれ一つをとっても長い年月をかけて多くの資料を駆使し
ての大作でした。
文中には現存する(した)政治家や小説のモデルとなったと思しき人
もあり、想像しながら読んだものでした。殆どは出版された時期に読みました。
強烈な印象に残っている作品は「大地の子」「不毛地帯」「沈まぬ太陽」で
しょうか。
現在も週刊紙へ「約束の海」(海上自衛隊がテーマ)を掲載とのことですが、
絶筆となり惜しいです。
「華麗なる一族」の頃は舞台となった「志摩観光ホテル」で毎年お正月を
迎えられたとお聞きました。
ご冥福をお祈りいたします。