城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

日韓の共通の歴史認識は可能なのか? 19.8.22

2019-08-22 20:36:10 | 面白い本はないか
 山の仲間でお酒を飲んだ席での話だが、今話題の日韓の話となった。彼曰く、子ども、孫の世代まで植民地、慰安婦、徴用工等に代表される日本の加害者責任を負う必要があるのだろうか。私は、即座に個人として子ども、孫の世代が責任を負う必要はないと応えた。その時に生まれていない私たち団塊世代も責任を負うことはないし、負いようがないと思われる。戦後の世代が持つ責任とは、日韓の間で起こった歴史を正しく認識することであると思う。

 しかし、この歴史を正しく認識することがとてつもなく難しくなっている。随分前に読んだ本、「日韓歴史認識問題とは何か」木村幹著から引用する。歴史認識は、過去の事実に関わる問題である以上に、現在を生きる我々自身の問題である。各国の教科書に書かれているのは、歴史的事実以上にそれぞれの歴史「認識」そのものである。歴史の専門家が集い、議論を積めば、やがては日韓共通の歴史教科書が作れるというのは幻想でしかない。著者は、両国の世論において、日韓関係がもはや重要でないという声が頻繁に聞かれるようになったことが問題だと指摘している(重要でないから何をしてもいいんだということになる。冷戦の終了、日本の国力の相対的低下によりもたらされた)。韓国ばかりでなく、日本においてさえも、歴史修正主義を掲げる論者が多くなっている現状では、正しい歴史認識を知ることは難しくなっている。

 読んだばかりの「日本統治下の朝鮮ー統計と実証研究は何を語るか」木村光彦を紹介する。韓国で高名な歴史学者が20年前であるが「朝鮮における日本の支配は世界の植民地の中で最悪のものでした」と言っているのを聞いた。その時、この学者は世界の植民地支配を全て調べ比較したうえでこの結論を得たのだろうかと著者は思った。日本でも過去には植民地支配を激烈に批判する本が出ているが、実証研究が進んだ今少し事情は変わりつつある。この本は、農業生産の増加ばかりでなく、鉱工業生産の飛躍的な伸びを述べている。北朝鮮の豊富な水資源、鉱物資源を開発し、加工するために日本本国でも導入されていない最新設備を稼働させた。こうした事実は、植民地を一方的に収奪したという説明とは矛盾する。戦後北朝鮮に多く残された遺産であるが、その後の発展には十分生かされなかった。

 この本は、経済的なことに絞ったため(著者は経済学者で歴史学者ではない)、創氏改名や人民統制などについては述べていないので、植民地統治の総合的な評価はできないが、少なくとも最悪の植民地経営ではないと思わせてくれる。よく政治家や私のまわりの人が日本は良いこともしたと必ずしも根拠なく言うことがあるが、こう言える時期が果たしてくるのかはよく分からない。

 最後に政府は韓国に対し、輸出手続きを厳しくし、これに対して韓国も報復措置をとる事態となっている。日本政府は、一体韓国にどうしろと言っているのかが良くわからない。単に徴用工問題や慰安婦問題の対抗措置としてというだけなら、両国の関係が悪化するだけになると思うのだが。
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