城台山日記

 城台山の麓で生まれ、毎日この山に登り、野菜・花づくり、読書、山登りをこよなく愛する年寄りの感動と失敗の生活日記です。

国籍とは何か 23.9.17

2023-09-14 19:42:10 | 面白い本はないか
 ラグビーを見ていると世界は今後このようになるのが良いのではないかと考えさせる。そこでは日本人に混じり明らかに日本国籍でないと思われるラガーマンたちが日の丸のもとで闘っている。そしてそのチームに多大な応援を送る私たちがいる。バスケットボールでもアメリカ人が日本国籍を取得してポイントゲッターになっている。スポーツ以外の分野でも日本で生活し、文化を愛してくれる人ならば国籍や外見に関わらず、共に暮らしていけるような日本になる必要があるのではないか。

 話は変わるが、先日相続のために亡くなった母親の生まれた時からの戸籍謄本を取った(貯金を引き出すために必要な書類だが、ここまで詳細なものが本当に必要なのだろうか大いに疑問がある)。生前母親からある程度父母(私からいうと祖父母)、祖父母(同曾祖父母)の名前は聞いていたが、戸籍を見ると、名前が少しずつ違っているのと、曾祖父の小八は養子(確か隣の家が本家でそこから迎えていた)であることが戸籍で確認できた。父母とも早い時期に亡くなっていたので、私は母方の祖父母を全く知らない。

 この戸籍にある小八は安政5年4月の生まれである

 この戸籍制度があるのは、中国、台湾と日本だけで、かつて韓国にもあったが2007年に廃止された。もともと戸籍制度は中国由来のもので、社会構造の最小単位「戸」に着目している。戸籍は人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録、公証するものであり、日本国民について編成され、日本国籍を公証する唯一の制度であると法務省の説明にある。戸籍が最も身近になるのは、おそらくパスポートの取得の時であろう。日本人と外国人が結婚すると日本人には新たな戸籍が作られるが、もちろん配偶者の戸籍は作られない。日本の国籍を取得する(帰化という)と新たな戸籍が作られるのである。

 ここまで戸籍の話をしてきたのは、安田菜津紀著「国籍と遺書、兄への手紙 ルーツを巡る旅の先に」を紹介したかったからである。著者は高校生の時にカンボジアへ渡航するために戸籍が必要となり、戸籍に見慣れない「韓国籍」という文字を見つけた。父親は著者が生まれたとき韓国籍で後に日本国籍を取得した。その父親と母親は小学3年生の時に離婚し、著者は日本国籍の母親に育てられた。その父は中学3年生の時に亡くなり(自死)、異母兄(離婚まで一緒に暮らした)も続いてなくなった(過労死)。 

 表紙に父に抱かれる著者がいる 本の中には兄に抱かれる著者の姿もある

 ※著者の紹介(プロローグから)
  今私は、フォトジャーナリストとして、貧困や災害、紛争下で生きる人々の取材を続けている。シャッターを切る軸となってきたのは、「家族とは何か」という問いだった。私は「家族は仲良くすべき」「家族の絆を大切に」といった「血」にこだわる圧が好きになれない。誰かに強制される人  との距離感にも抵抗がある。けれども同時に、戦争など理不尽な出来事によって、家族が意思に反して引き裂かれていくことに激しい憤りを感じてきた。
  

 日本に1年以上滞在する外国人は、居住する市町村、特別区に登録する必要があった(2012年に廃止され、現在はカードが発行されている。この制度の最大の争点となったのは指紋押捺を新規、更新時に必要としたことであった)。この外国人登録原票の開示を遺族等はできることを著者は知り、それにより父親、その父母をたどる旅が日本や韓国において始まるのである。同時に父親と兄の関係があまりにもよそよそしかったことに気づいた著者によるその理由探しも始まる。そして、その理由を知ることになる。兄の母は日本国籍を持つが、父は兄の出生時韓国籍であったことから、兄の国籍は韓国(1984年まで日本は父系主義をとっていたが、以降母親の国籍も選択できることになった)となるはずだった。韓国製となることは兄にとって不利になると考えた父は、母親の私生児(認知をすると韓国籍となってしまう)という選択をした。

 朝鮮半島(現在の北朝鮮、韓国)がかつて日本の植民地(1910年~45年)だった頃に、日本には多くの朝鮮人が任意あるいは半強制により就業等のために日本に渡ってきた。その数は戦後直後には200余万人であったが、46年3月末までに約130万人の者が本国に帰還した。しかし、60万人が生活への不安や母国の現状を理由に日本に残留した。現在の在日韓国・朝鮮人は437千人となっている。これとは別に韓国・朝鮮系日本人というカテゴリーがあり、両親の一方もしくは両方が朝鮮・韓国にルーツを持つ日本国籍者もしくは日本に帰化した人とされている。

 ※ここで同じ時に読んだ緒方義広著「韓国という鏡 新しい日韓関係の座標軸を求めて」を紹介する。
  韓国は多くの移民を送り出してきた。在米同胞が263万人、在中同胞が235万人、これに次ぐのが在日コリアン約82万人(うち日本国籍者が約 38万人)。日本の植民地支配により移住を余儀なくされたという歴史性は、在中同胞である中国朝鮮属や高麗人と呼ばれる旧ソ連地域出身の同胞そして在日コリアンに共通する。しかし、在日コリアンは植民地支配の「宗主国」であった日本に住む同胞(日本国籍であった)であるという点が異なっており、さらに法的地位に関して、朝鮮半島の南北分断と植民地からの解放後に構築された日韓関係に由来するという点から複雑である。
 在日コリアンの場合、日本国籍を取得した者を除けば約44万人が韓国籍あるいは朝鮮籍(これは北朝鮮国籍ということではない。分断される前の国籍で事実上は無国籍状態である。)を持ち、二世、三世、四世と代を重ねながらも日本国籍を取得していない。韓国系の外国人(日本人)という単純な在外同胞イメージとは異なった現実がある。
 日本や韓国では国籍とアイデンティティが常に一致するという先入観がいまだに強い。大坂なおみ、カズオ・イシグロ、ノーベル物理学賞を受賞したプリンストン大学の眞鍋淑郎などなど。

 安田の本について、今回戸籍や国籍という側面からのみ紹介した。この本には在特会による差別など日本が抱える様々な問題が書かれているので一読をお勧めしたい。家族の写真や著者によるワンショットが素晴らしい。

 最後に「反日」ということについて、※での紹介した「韓国という鏡」から。日本を基準にすれば、外国である韓国の文化に違和感を覚えることは当然のことだ。しかし、それらをすべて「反日」の一言で片付けてしまうのは正しい理解とは言えない。少なくとも韓国社会を一括りにして「反日」と捉えてしまうことは、単なる異文化理解の放棄ではないだろうか。いまの日本社会には。「嫌韓」ではないという対面を保ちながら、韓国社会の問題点を「反日」と決めつけ批判し、さげすむような言説が容認されている。そもそも韓国社会が「反日」に支配されているという問題意識自体が、偏った情報に基づく間違った解釈であると、私は考える。

 なんかおじさんにも当てはまるような気がする。韓国が失敗したりすることを喜ぶ。これが一部だけならともかく大勢の国民が勝手に溜飲を下げているのである(ネットで特に激しい)。なんとかならないものかと考えてしまう。

 これまで何回か韓国問題に触れてきた。首尾一貫しない点が多多あるかもしれないので、お許しいただきたい。
 19.8.22 日韓共通の歴史認識は可能なのか
 20.12.6 複雑な世の中
 21.2.8  韓国と日本の新しい関係に期待
 21.8.14 明日は76回目の終戦記念日
 21.8.22 貴方は嫌韓それとも好韓?
 22.7.24 池田山&二冊の本
 23.2.2  姜さんの本を読む
 
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