醸楽庵(じょうらくあん)だより 

主に芭蕉の俳句、紀行文の鑑賞、お酒、蔵元の話、政治、社会問題、短編小説、文学批評など

醸楽庵だより   1486号   白井一道

2020-08-10 14:36:24 | 随筆・小説



   東京オリンピックは実現するのかな



侘助 都知事に小池氏はオリンピックを実施したいと思っているようだがね。
呑助 東京オリンピックを実現してもらいたいと都民は思っていると小池氏は考えているのではないのですか。
侘助 そうなのだろうな。そんな都民を初め、日本国民の意向に従ってオリンピックを開催しようと思っているのではないかと思う。
呑助 何としても実現しようと思っているお偉方がいるのではないですか。
侘助 オリンピックを当て込んで投資している人々にとっては、もしかしたら生きるか死ぬかの問題だと思い込んでいる人もいるのだろうね。
呑助 そうですよ。小さなところではお土産屋さんとか、宿泊業者とかいろいろいるのでしよう。
侘助 大会運営を請け負うと投資している業者にとっては死活の問題なのかもしれない。
呑助 そのような人々の意向を受けて小池都知事は当選するとすぐ、「東京オリンピックはコロナの感染防止を考慮しながら簡素化してやっていけるようにします。都民のみなさん国民みなさんの納得いただけるようなかたちで、開催できるように進めていきたいと思っています」と発表した。
呑助 夏になるとコロナ禍は終息するのではないかという甘い期待を小池都知事は抱いていたのかもしれませんよ。
侘助 問題は「コロナの感染防止を考慮しながら簡素化」することが可能なのかということかな。
呑助 コロナの感染防止をするには「三密」を避けるということですよね。スポーツは三密そのもののように思いますけれどね。
侘助 コロナ禍が治まれば少しぐらい三密であってもやれるだろうと思っていたのだと思う。
呑助 ところがコロナ禍は治まるどころか第二波が来てしまった。東京は特に感染者が激増してしまった。見通しが甘かったと思っているのだと思いますよ。
侘助 「夜の街」を矢面にして不平を言っていたが、コロナ感染者が激増していくのはどうしようもない。非難すれば問題が解決するということではないからね。
呑助 「夜の街」に生きる人々は怒りぬいていると思いますよ。これは差別だと感じていると思いますね。
侘助 確かに「夜の街」という言葉には差別の意識が入っているように感じるね。差別感というのはいつも再生産されていくもののようだからね。
呑助 都民の中の不浄な者と言うようなイメージが「夜の街」と言う言葉にはあるように感じますね。
侘助 都知事自身がこのような発言をするのはどうかと思うな。
呑助 「小池都知事は『3密は避ける』と言っていますが、スポーツは3密そのものなんです。オリンピック精神というのは、言わば3密を礼賛しているわけです。選手たちの距離を縮めて、肉体的にも精神的にも世界中の距離を縮めましょうというのがオリンピック・ムーブメントです。そもそも新型コロナがあったらオリンピックなんかできるわけがない」とスポーツライターの小林信也氏は言っていますよ。
侘助 確かにそうなんだろうね。今も都内では1日200~400人単位で新型コロナウイルスの新規感染者が出ている。日本各地を豪雨が襲い、被災者も出ている状態だ。来年、東京五輪は本当に開催可能なのでしょうかね。
呑助 柔道、レスリング、ボクシングなど相手と密着する競技は安全性が確保できるのでしようね。接触しない競技といえばアーチェリー、ウェイトリフティング、カヌーなどでしよう。野球のようにボールを投げ合う競技も、感染者が発生した場合はクラスターになる危険性があるでしようね。だからできない競技がある。けれどIOCはコロナで競技を選別し、一部を除外することはできない。となると結局オリンピックはできないのではないでしようか。
侘助 小池知事の発言は政治的な発言であって、オリンピックが実際に可能なのか、どうかという発言ではなかった。ただ小池知事は都民の耳に心地よい言葉を告げただけなのかもしれない。













醸楽庵だより   1485号   白井一道

2020-08-09 12:06:24 | 随筆・小説



   核兵器禁止条約、一日も早く批准を

 
 田上市長・長崎平和宣言全文

 私たちのまちに原子爆弾が襲いかかったあの日から、ちょうど75年。4分の3世紀がたった今も、私たちは「核兵器のある世界」に暮らしています。
 どうして私たち人間は、核兵器をいまだになくすことができないでいるのでしょうか。人の命を無残に奪い、人間らしく死ぬことも許さず、放射能による苦しみを一生涯背負わせ続ける、このむごい兵器を捨て去ることができないのでしょうか。
 75年前の8月9日、原爆によって妻子を亡くし、その悲しみと平和への思いを音楽を通じて伝え続けた作曲家・木野普見雄さんは、手記にこうつづっています。
 私の胸深く刻みつけられたあの日の原子雲の赤黒い拡(ひろ)がりの下に繰り展(ひろ)げられた惨劇、ベロベロに焼けただれた火達磨(ひだるま)の形相や、炭素のように黒焦げとなり、丸太のようにゴロゴロと瓦礫(がれき)の中に転がっていた数知れぬ屍体(したい)、髪はじりじりに焼け、うつろな瞳でさまよう女、そうした様々な幻影は、毎年めぐりくる八月九日ともなれば生々しく脳裡(のうり)に蘇(よみがえ)ってくる。
 被爆者は、この地獄のような体験を、二度とほかの誰にもさせてはならないと、必死で原子雲の下で何があったのかを伝えてきました。しかし、核兵器の本当の恐ろしさはまだ十分に世界に伝わってはいません。新型コロナウイルス感染症が自分の周囲で広がり始めるまで、私たちがその怖さに気づかなかったように、もし核兵器が使われてしまうまで、人類がその脅威に気づかなかったとしたら、取り返しのつかないことになってしまいます。
 今年は、核拡散防止条約(NPT)の発効から50年の節目にあたります。
 この条約は「核保有国をこれ以上増やさないこと」「核軍縮に誠実に努力すること」を約束した、人類にとってとても大切な取り決めです。しかしここ数年、中距離核戦力(INF)全廃条約を破棄してしまうなど、核保有国の間に核軍縮のための約束を反故(ほご)にする動きが強まっています。それだけでなく、新しい高性能の核兵器や、使いやすい小型核兵器の開発と配備も進められています。その結果、核兵器が使用される脅威が現実のものとなっているのです。
 “残り100秒”。地球滅亡までの時間を示す「終末時計」が今年、これまでで最短の時間を指していることが、こうした危機を象徴しています。
 3年前に国連で採択された核兵器禁止条約は「核兵器をなくすべきだ」という人類の意思を明確にした条約です。核保有国や核の傘の下にいる国々の中には、この条約をつくるのはまだ早すぎるという声があります。そうではありません。核軍縮があまりにも遅すぎるのです。
 被爆から75年、国連創設から75年という節目を迎えた今こそ、核兵器廃絶は、人類が自らに課した約束“国連総会決議第1号”であることを、私たちは思い出すべきです。
 昨年、長崎を訪問されたローマ教皇は、二つの“鍵”となる言葉を述べられました。一つは「核兵器から解放された平和な世界を実現するためには、すべての人の参加が必要です」という言葉。もう一つは「今、拡大しつつある相互不信の流れを壊さなくてはなりません」という言葉です。
 世界の皆さんに呼びかけます。
 平和のために私たちが参加する方法は無数にあります。
 今年、新型コロナウイルスに挑み続ける医療関係者に、多くの人が拍手を送りました。被爆から75年がたつ今日まで、体と心の痛みに耐えながら、つらい体験を語り、世界の人たちのために警告を発し続けてきた被爆者に、同じように、心からの敬意と感謝を込めて拍手を送りましょう。
 この拍手を送るという、わずか10秒ほどの行為によっても平和の輪は広がります。今日、大テントの中に掲げられている高校生たちの書にも、平和への願いが表現されています。折り鶴を折るという小さな行為で、平和への思いを伝えることもできます。確信を持って、たゆむことなく、「平和の文化」を市民社会に根づかせていきましょう。
 若い世代の皆さん。新型コロナウイルス感染症、地球温暖化、核兵器の問題に共通するのは、地球に住む私たちみんなが“当事者”だということです。あなたが住む未来の地球に核兵器は必要ですか。核兵器のない世界へと続く道を共に切り開き、そして一緒に歩んでいきましょう。
 世界各国の指導者に訴えます。
 「相互不信」の流れを壊し、対話による「信頼」の構築をめざしてください。今こそ「分断」ではなく「連帯」に向けた行動を選択してください。来年開かれる予定のNPT再検討会議で、核超大国である米露の核兵器削減など、実効性のある核軍縮の道筋を示すことを求めます。
 日本政府と国会議員に訴えます。
 核兵器の怖さを体験した国として、一日も早く核兵器禁止条約の署名・批准を実現するとともに、北東アジア非核兵器地帯の構築を検討してください。「戦争をしない」という決意を込めた日本国憲法の平和の理念を永久に堅持してください。
 そして、今なお原爆の後障害に苦しむ被爆者のさらなる援護の充実とともに、未(いま)だ被爆者と認められていない被爆体験者に対する救済を求めます。
 東日本大震災から9年が経過しました。長崎は放射能の脅威を体験したまちとして、復興に向け奮闘されている福島の皆さんを応援します。
 新型コロナウイルスのために、心ならずも今日この式典に参列できなかった皆様とともに、原子爆弾で亡くなられた方々に心から追悼の意をささげ、長崎は、広島、沖縄、そして戦争で多くの命を失った体験を持つまちや平和を求めるすべての人々と連帯して、核兵器廃絶と恒久平和の実現に力を尽くし続けることを、ここに宣言します。
2020(令和2)年8月9日
長崎市長 田上富久


醸楽庵だより   1484号   白井一道

2020-08-08 15:42:44 | 随筆・小説



  香港政府をアメリカ政府は制裁



侘助 次のようなニュースをネットで見た。
【AFP=時事】香港政府は8日、林鄭月娥(キャリー・ラム、Carrie Lam)行政長官らに制裁を科すとの米政府の決定について「無礼で理不尽」だと非難し、香港に拠点を置く米企業に対する報復の可能性を示唆した。
 香港政府の邱騰華(エドワード・ヤウ、Edward Yau)商務経済発展局長は報道陣に対し、「こうした制裁が他の国のトップや当局者を標的とするのであれば、無礼で不相応で理不尽だ」と指摘。「もし米国がこうした理不尽な行為を一方的に行えば、結果的に米企業に影響が及ぶことになる」と述べた。
呑助 米政府が香港政府の行政長官を制裁すると言ったということですが、具体的にアメリカ政府は何ができるのですかね。
侘助 そうだよね。具体的にアメリカ政府は他国の政府の行政長官を制裁することが可能なのかな。
呑助 アメリカ政府に出来ることは、アメリカ政府の施政権下にあることでしかないでしよう。何かあるとしたら何なのでしようか。
侘助 次のような報道もある。
トランプ米政権は中国の高官や香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官ら11人に制裁を科す。政治的弾圧が理由。米財務省が7日に発表した。
ムニューシン財務長官は声明で、「米国は香港の人々と立場を共にしており、彼らの自治を損なう者には手段と権限を行使する」と表明した。
  林鄭行政長官に対する制裁の理由として、「自由と民主的プロセスを抑圧する中国中央政府の政策導入という点で直接の責任がある」と説明した。
  今回制裁対象となった11人は、米国内に保有する不動産や資産が凍結される。
  香港政府は声明で「香港国家安全維持法(国安法)を巡る米国の不適切な発言には、政治的操作や二重基準が感じられる。中国への内政干渉であり、国際関係の基本的な規範に著しく反する」とコメントした。
呑助 香港政府要人11人が米国内に保有する不動産や資産が凍結され、自由に使うことができなくなるということですか。と、いうことは米国内に不動産や資産を持っている香港政府要人たちがいるということなのですな。
侘助 香港政府の要人たちにアメリカ政府は言っているということなのかもしれないな。
呑助 あ、なるほどね。北京政府の言う事などを聞いていると良いことはないよ。アメリカ政府の言う事を聞いた方が、お前たちにとっても良いのじゃないのと、ね。なぞをかけたということですか。
侘助 香港政府を揺さぶってみたというのが、今回のアメリカ政府の意図なのかもしれない。中国政府にとって香港は中国国内の一部であると考えているのだから、このアメリカ政府がしようとしている香港政府要人11人がアメリカ国内に持つ不動産や資産を凍結するということは内政干渉として厳しくアメリカ政府を中国政府は批判することになるだろう。
呑助 香港政府要人の中には北京政府の言う事を聞くよりアメリカ政府の言う事を聞いた方が得じゃないかと考える人が出てくる可能性はあるのじゃないのでしようかね。
侘助 そこがアメリカ政府の狙いなのじゃないのかな。
呑助 香港で自由と民主主義を求める若者のデモが起きていますよね。でも、自由や民主主義というものを求めるのは強い者ですよ。弱者は自由や民主主義より平等を求めるのじゃないですかね。
侘助 人間は平等じゃないからな。力の強い者もいれば、弱い者もいる。頭が良い者もいれば、悪い者もいる。この強者を法的に抑え、弱者を法的に保護することによって平等は実現する。香港政府要人たちは強者の側の人々だから、この強者に甘い言葉をかけているのがアメリカ政府なのかなと思っているけどね。
呑助 香港で自由と民主主義を求める運動をしている若者たちはどちらかと言うと自分は強者だと思っている若者なのかもしれませんね。
侘助 香港は99ヵ年条約によってイギリスの植民地であった。イギリス植民地時代の香港の中国人に自由と民主主義があったのかというとそのようなものは何もなかった。中国人はイギリス人に差別され続けて来た。香港の中国人はイギリスからの独立を願っていたというのが現実だと思う。
呑助 民主化運動の裏にはアメリカ政府の支援があるという話を聞いたことがありますね。
侘助 「アラブの春」という民主化があったけれども実際は「アラブの冬」だったようだ。

醸楽庵だより   1483号   白井一道

2020-08-07 12:44:01 | 随筆・小説



   アメリカの対中外交政策は失敗



侘助 アメリカの対中外交政策をエンゲイジメント政策と言うようだ。
呑助 日本語にするとどんな言葉なのでしようかね。
侘助 関与政策と言っているようだが、エンゲイジメントという言葉には「関わり合いを持つ」と言う意味はないようだ。
呑助 エンゲイジという言葉の意味はどのような意味なのでしようかね。
侘助 辞書を引くと「従事する、携わる」と言うような言葉になっている。この言葉の本意は「拘束する」と言う事にあるようだ。
呑助 中国政府の政策をアメリカ政府が「拘束する」ということにあったのだと思いますよ。
侘助 アメリカ政府はエンゲイジ政策によって中国政府を民主化しようとしたと言っている。しかし中国政府は民主化するどころか、専制を強化していると言っている。
呑助 アメリカには自由がある。アメリカには民主主義があると言われていますよね。
侘助 大統領も国民の選挙によって選ばれる。この選挙が民主主義を体現しているということのようだ。中国の国家主席は国民の選挙によっては選ばれていないからね。
呑助 共産党の独裁国家だと言っているということですか。
侘助 中国共産党の北京政府は香港の民主主義を破壊しようとしているとアメリカ政府は批判している。
呑助 アメリカ政府はエンゲイジ政策として中国政府をWTO(世界貿易機関)に加盟させてあげ、世界の仲間に入れてあげれば中国政府は民主化し、自由諸国のようになると考えていたのでしよう。それが外れたということなのでしよう。
侘助 その通りだと思うな。アメリカ政府も日本の自民党政府も自分たち自身が正義であると思い上がっているからね。アメリカ政府の権力を行使する白人の警察官が白昼堂々と2020年5月25日、偽ドル札の使用容疑により手錠をかけた黒人のフロイドさんが、呼吸ができない、助けてくれ、と懇願していたにも関わらず、8分46秒間フロイドの頸部を膝で強く押さえつけ、フロイドを死亡させたという事件がミネソタ州ミネアポリスのダウンタウンで起きた。黒人差別を廃止する公民権法が1964年に成立して半世紀以上になるのに未だにアメリカにあっては黒人差別が横行している。このような国が本当に民主主義と自由のある国なのであろうか。
呑助 アメリカも中国もどっちもどっちだということでしようか。
侘助 中国の経済力が急速に強大化してきているのにアメリカ政府は危機感を抱いているのではないかと思う。世界銀行が発表した2011年における購買力平価を基準にすると、中国は2014年に米国を抜いて世界1位になる見通しだと言われてもう六年にもなる。2019年度、中国の購買力平価でGDPを比べてみると世界一は中国で25兆ドル、アメリカが二位で20兆ドルのようだ。
呑助 経済力でアメリカは中国に負けているということですか。驚きました。
侘助 アメリカのトランプ大統領がアメリカ・ファーストと言っている。この事はアメリカが世界の覇権国ではなくなったと自ら言っているようなものだと思う。
呑助 どこの国の国民にしても自分の国の政府は世界で一番自国の国民を大事にしてくれるのが自分の国の政府だと思いますよね。自国の国民よりアメリカ政府を大事にするような政府は売国的な政府ということになりますね。
侘助 全くその通りだと思うな。アメリカ政府がエンゲイジメント政策は失敗したと考え、これからは中国を敵視する政策をしていくようだが、これも間違いなく失敗するのではないかと思う。エンゲイジメント政策を「関与」政策と訳されているが、むしろ「取り込み」政策というか、「拘束」政策と言うようなものだった。中国を「取り込め」る。中国政府の政策を「拘束」できると考える事が思い上がっている。もともとアメリカ政府は中国の国内体制を認めていない点では冷戦期の対ソ封じ込め政策と同じなわけだから、確実にアメリカ政府の政策は失敗すると思う。少なくとも中国の国内体制を認め、受け入れる包容力のようなものがなければ、成功するはずがない。
呑助 そうなんでしようね。人間関係においても相手の人格を認め合う事があって初めて友好関係が築いて行けるわけですよね。

醸楽庵だより   1482号   白井一道

2020-08-04 16:30:33 | 随筆・小説


 
 アメリカ政府が中国政府を攻撃している



 「米 ヒューストンの中国総領事館閉鎖求める。アメリカのトランプ政権が南部・テキサス州ヒューストンにある中国総領事館を閉鎖するよう突然、要求し、中国が猛反発しています。
アメリカ国務省は21日「アメリカの知的財産とアメリカ人の個人情報を保護するため」として、テキサス州ヒューストンにある中国総領事館を閉鎖するよう中国側に要求しました。ポンペオ国務長官「中国共産党は知的財産を盗もうとずっと試みている。我々はアメリカ国民と国の安全保障を守るため行動していく」。また、国務省は、「中国が全米で行っている違法なスパイ活動と世論への工作活動」がここ数年、急増しているとして対抗措置だとしています。
中国メディアは、アメリカが72時間以内の退去を求めていると報じています。こうした中、中国総領事館の敷地内で、文書などが焼却される様子も見られ、現地の消防隊も出動するなど総領事館の周囲は騒然としました。中国政府は猛反発しています。中国外務省報道官「中国政府は強く非難する。アメリカが直ちに誤った決定を撤回しなければ中国側は必ず正当かつ必要な対抗措置を取ることになる」。中国外務省の報道官はこのように述べ、報復措置を取る可能性も示唆しています。

侘助 このような報道があった。中国政府は対抗措置を取るだろうなと思っていたら、直ちに報復に出たね。
 中国がアメリカに報復措置、成都市のアメリカ総領事館の閉鎖命じる。中国政府は24日、アメリカがテキサス州の中国総領事館の閉鎖を命じたことへの報復措置として、四川省成都市にあるアメリカ総領事館の閉鎖を命じたと発表した。中国外務省はこの日、成都市の米領事館スタッフが「中国の内政に干渉し、中国の安全と利益を危険にさらした」ため、同領事館を閉鎖すると発表した。同省の汪文斌報道官は記者会見で、アメリカは「反中国的なうその寄せ集め」に基づいてヒューストンの中国総領事館の閉鎖を決定したとも述べた。中国はアメリカに対し、27日までに成都市の米国総領事館を閉鎖するよう命じたと、中国国営の英字紙「環球時報(グローバルタイムズ)」は伝えた。マイク・ポンペオ米国務長官は22日、ヒューストンの中国総領事館閉鎖は、中国がアメリカの知的財産を「盗んでいる」ことを受けた決定だと説明していた。

呑助 中国はやりますね。黙っていませんね。これからどうなっていくんでしようかね。
侘助 アメリカ政府による中国叩きは長引く可能性があるのじゃないのかな。
呑助 中国政府がアメリカ政府の言う事を聞かないからなのでしようかね。
侘助 アメリカ政府の対中国政策はエンゲイジメント政策と言うらしい。
呑助 エンゲイジとは、どんな意味の英語ですか。
侘助 従業員と企業が一体となってお互いに成長し合い絆を深める関係を築いていこうというような時に使う言葉がエンゲイジメントという言葉のようだ。
呑助 日本語ではなんと言っているのでしようかね。
侘助 エンゲイジメント政策を日本語では関与政策と言われている。強国であるアメリカに代表される先進資本主義国に従順な姿勢があることを フンランダイゼーション(Finlandization)という。このフィンランダイゼーションが中国にないことにアメリカ政府は苛ついている。
呑助 アメリカの対中国政策であったエンゲイジ政策が失敗したということですか。
侘助 アメリカ政府の対中国政策、エンゲイジ政策は完全に失敗した。失敗するのは当然だと思うよ。、「為替レートは2国間の物価上昇率の比で決定する」という観点により、インフレ格差から物価を均衡させる為替相場を算出している。各国の物価水準の差を修正し、より実質的な比較ができる購買力平価でGDPを比べてみると世界一位は中国のようだからね。
呑助 えっ、アメリカじゃないのですか。
侘助 グーグルが発表している「世界経済のネタ帳」によると中国が25兆ドルで世界一、アメリカが二位で20兆ドルになっている。
呑助 日本はどうなっているのですか。
侘助 日本は5兆ドルで、アメリカ、インド、日本の順になっている。
呑助 日本はインドの下ですか。
侘助 ブリックスの諸国の追い上げは速い。アジアの先進国の地位は脅かされている。

醸楽庵だより   1481号   白井一道

2020-08-03 16:05:06 | 随筆・小説


 
 産業資本の確立が資本主義の成立である



 市民革命がなければ産業革命は成立しない。イギリス革命と言われるピューリタン革命から名誉革命至る市民革命があったからこそイギリスで産業革命が成立した。いち早く産業革命を成し遂げた結果、イギリスで初めて資本主義経済が成立した。その結果、イギリスは世界で初めて世界の工場になった。
 なぜ市民革命を成し遂げなければ産業革命は成立しないのかと言えば、市民革命によって市民の需要を喚起し、産業革命を求める市民の要求が生れて来たからである。商品の需要が生れたのだ。木綿の布地でできたシャツを大量に求める市民が生まれて来た。この要求が産業革命を成し遂げた。
 産業革命が成立していく過程にあっては、人民の哀しい出来事があった。エンクロージャーと言われる土地の有力者がここは自分の土地だと述べ、その土地を囲い込み最初は牧羊業を営み、ジェントリーと言われた土地の有力者は羊毛を毛織物業者に売り、財産を築いた。慣例的に土地の使用権を持っていた農民たちは農地から追い出され、街場のスラム街に生活の場を移さなければならなかった。後には中世以来の三圃制を改良したノーホォーク農法が普及した。
 ヨーロッパの農地では地力の低下に対応するため,休閑を取り入れるなどの方法が行われていた。その後,休閑に代わって地力維持のために,飼料かぶ(かぶら)などの作物が利用されるようになってきた。その代表的な方法がノーフォーク農法である。18世紀にイングランド東部のノーフォーク地方で始まった農法で,大麦・クローバー・小麦・かぶ(かぶら)の順に輪作を行うため,四輪作法ともいわれる。休耕をなくし,牧草栽培による家畜の舎飼を可能にしたことによって,農業生産を飛躍的に向上させた。しかしこの農法は,土地の集約的利用が前提となっているため,囲い込みをさらに拡大させることとなり,これによって農業革命が進展することとなった。
 こうした農業革命の結果、イギリスでは議会が積極的に土地の囲い込みを推進した結果、農村から追い出された農民が街場のスラム街を形成するようになる。このような暗黒街の誕生が同時に労働者の誕生であった。このような労働者の出現をマルクスは資本の原始的蓄積と述べている。労働者の出現が資本の出現なのだ。
 イギリスで産業革命が生れてくるにはリバァプールという街なしには成立しない。リバァプールのあるイギリス北西部といえば、「労働者階級中心のエリアであり、南部と比べて貧しく天気も悪いが、人々は冗談好きで人情深い」というイメージを抱く人が多い。この街でビートルズが誕生したのは、そんな典型的な北西部の港町、リバァプールだった。メンバーはリバァプールで生まれ、リバァプールで少年時代を過ごし、リバァプールで出会いバンドを結成している。今や、ビートルズ誕生の地として世界的に有名になった街、リバァプールはまた井木里香産業革命発祥の地でもある。17世紀から18世紀にかけて大西洋三角貿易の中心地がイギリス、リバァプールであった。リバァプールの奴隷商人は銃器などを中心に雑貨を積み込み、西アフリカ奴隷海岸に行き、銃や雑貨と黒人奴隷とを交換した。西アフリカ奴隷海岸の奴隷狩り部族が集めた黒人奴隷とイギリス人奴隷商人は銃や雑貨とを交換した。奴隷を積み込んだ船は大西洋を渡り西インド諸島の砂糖プランテーション経営者と砂糖と奴隷とを交換した。砂糖を持ち帰ったリバァプールの奴隷商人はマンチェスターの綿布生産業者に売りざばぃた。綿布生産者は工場で働く労働者に砂糖入りの紅茶を飲ませた。インドから茶葉を手に入れた業者は茶葉を発酵させ、紅茶を生産した。南アメリカカリブ海地域で生産された砂糖を入れた紅茶がマンチェスターで流行した。綿布生産工場で働く労働者たちが好んで飲んだものが紅茶と蒸留酒のジンであった。ジンは価格が安いわりにアルコール度数が高く、酔いが早かった。このため、労働者や庶民の酒、ひいては「不道徳な酒」というイメージが出来上がった。イギリスにはワインのフランス、ビールのドイツといった大衆一般が好んで飲むものがイギリスにはなかった。その結果、紅茶がイギリス大衆の一般的な飲み物になった。それはイギリス産業革命の賜物の一つである。
 大量に生産されるようになったイギリス産綿布はインドへ輸出されるようになった。インドから原料の綿花を輸入し、製品としての綿布をインドに輸出した。インドの手織りの綿布生産者は仕事を奪われた。インド、西アフリカ奴隷海岸、西インド諸島のカリブ海地域の島々、イギリス国内の綿布工場で働く労働者の苦しみと貧困の上にイギリス綿布生産者の繁栄が築かれたのが産業革命であった。

醸楽庵だより   1480号   白井一道

2020-08-02 12:38:14 | 随筆・小説

  イギリスに残る封建遺制



 イギリスにおける身分制の廃止は充分なものではなかった。だから未だに身分制の残り滓がある。イギリス人に間には強固な身分意識があるようだ。法的な身分差別はないが、身分意識が強固に残っている。身分によって、英語のアクセント・服装・読んでいる新聞が違う。彼らは、同じ身分同士で交わるのを好み、違う身分の者を皮肉る。身分意識は読んで字のごとく、人々を順序付け、身分を隔てることでるが、現代日本には存在しない意識である。
イギリスには三つの身分意識がある。
Upper Class(上流身分)
王室、貴族、地主、資産家など。
パブリックスクールからオックスフォード大学やケンブリッジ大学に進学する。
Middle Class(中流階級)
ホワイトカラー。大学に進学するのは、一般的にこの身分以上に属する人達である。
Middle Classは、さらに3つに分かれる。
•Upper Middle Class(上位)
•Middle Middle Class(中位)
•Lower Middle Class(下位)
Working Class(労働者階層)ブルーカラー。
この身分に属する人達は、義務教育を終えるとすぐに社会に出るのが一般的で、大学に進学するのは稀のようだ。
英国では、「出自」がハッキリと身分の壁を作っている。基本的に自分の出自がそのまま身分を示している。もちろん、現代社会においては、労働者階層出身者であっても、学業成績次第ではオックスフォード大学やケンブリッジブリッジ大学に入学することができ、それを踏み台に自分の階層を上げていくことができる。
身分意識が根付いてしまう社会的背景とは
イギリスの社会制度、身分意識が、立身出世を困難なものにしている事実もある。上流、または上位中流出身者は、子どもの頃から親元を離れ、授業料の高い私立の寄宿学校に学ぶ。そこで、上流にふさわしい英語のアクセント・立ち振る舞い・ものの考え方を身につける。イートン校などの有名パブリックスクールでは、卒業生の子息には、学業成績にかかわらず座席が確保されている。優秀な成績を修めた公立学校出身の労働者階級出身者が、オックスフォード大学やケンブリッジ大学に進学した場合、身分意識という見えない壁にぶち当たるのは、想像に難くない。上流出身者には、彼らの間にだけ通じる流儀があり、それを身につけていない者は排除される。階層を上がっていくことは、並大抵のことではない。
話し方で分かる身分階層
階層差は、その人がしゃべる英語のアクセントに現れる。ロンドンの労働者の人々は、「コックニー」と呼ばれる強いなまりのある英語を話す。映画「マイ・フェア・レディー」の中で、主人公の花売り娘、イライザが話していた英語がコックニーである。上流の人々は、クイーンズ・イングリッシュを使い、標準とされているのは、BBCイングリッシュである。
オックスフォードやケンブリッジなどの有名大学では、独特の言いまわしやアクセントがあり、他と差別化を図っている。
それぞれの階級に流儀がある
サッカー選手として大成したデビッド・ベッカムの英語はコックニーである。彼は大金を稼ぎ、豪邸に住んでいるが、労働者階層に属している。
階層とお金の有無は無関係である。
どれだけお金を持っていても、労働者は自分の生活習慣を維持する人が多い。
上流にはその流儀があるように、労働者にも同じことがいえる。慣れ親しんだアクセント、生活習慣、ものの考え方がある。日本人には、階層意識のようなものはない。格差社会といわれて久しい日本であるが、日本には、階層意識は存在しない。格差は貧富の差であり、身分を隔てるものではない。一億総中流という言葉が存在したように、日本人の多くは、自分が中流階層に属していると考えていた時代があった。しかし、この中流意識とは、金持ちでもなく貧乏でもなくその中間に位置するという考え方で、イギリス人の考える中流意識とは違う。
イギリス人は、立身出世物語に興味を示さない。
日本では、貧しい家庭に生まれ、努力を重ね、立身出世を成し遂げることを仰ぎ見ることがある。野口英世の物語が語り継がれている。私たちは立身出世を美談として尊ぶが、イギリスには、小説の世界にもそのような物語は少ない。イギリス人はよく「労働者からのし上がるためには、サッカー選手かミュージシャンになるしかない」と言われている。

醸楽庵だより   1479号   白井一道

2020-08-01 15:38:44 | 随筆・小説


  
  家を建てる


 ぱたぱたと家立ち上がる秋日和  一道


句郎 今年の夏は蝉の鳴き声も聞くことないね。
華女 確かにそうね。私も蝉の鳴き声を聞いていないわ。
句郎 今日、暦を見て驚いたよ。八月七日はもう立秋なんだね。
華女 まだ、季節は大暑なんでしょ。
句郎 今年の夏は大暑らしい大暑もなく立秋を迎え、秋になっていくのかもしれないな。
華女 今年の梅雨は長いのよね。こんなに雨の多い梅雨は何年ぶりかしらね。
句郎 今年の梅雨は実に梅雨らしい梅雨だった。毎日、雨が降っていたような気がするな。
華女 雨の降らない日がなかったように感じるわ。
句郎 Tさんが転居し、土地のGさんの息子さんがその跡地に家を今建てているようだ。
華女 まだ十分、住めるような住宅なのに壊してしまったのは惜しいような気もするな。
句郎 今の若い人には気に入らない家だったのかもしれないな。
華女 一階の居間になっている部屋には床暖房が入っていたと聞いたわ。
句郎 ちょっとそんなことを聞くと確かに惜しいようにも感じるかな。
華女 若い人には新しい家が良いのじゃないのかしらね。少しお金がかかっても、人の住んだ家の後に入るのが嫌だったのじゃないのかしらね。
句郎 今じゃ、住宅にも賞味期限があるのかもしれないな。
華女 今や、住宅は消耗品なのじゃないのかしら。
句郎 親の住んだ家に息子夫婦は住まないようだからね。この間、Kさんに聞かれた。白井さんの家に住む予定の子供さんはいるのと、ね。
華女 私たちには子供がいないのをKさんは知らなかったのね。
句郎 特に話していなかったからね。Kさんは京都、丹後半島出身の人で、彼の実家は大きな農家だったようだ。その家に父親が亡くなった後、子供たちは皆、都会に出て、母親が一人で長いこと、その大きな家に居たと話していた。
華女 大きな欅の木を処分してくれと市役所から言われ、その大木を業者に切ってもらったら、百万円かかったという人ね。
句郎 そうそう、欅の大木の枝が道路に延び、自動車の通行に支障が出たので止むを得ず、業者に切ってもらったようだ。
華女 田舎の大きな家を相続すると大変ね。屋敷は草ぼうぼうのお化け屋敷になってしまうわね。
句郎 本当に何代にもわたって住み継がれてきた太い大黒柱のある家が廃墟になっていく。
華女 都市化が進んだ結果ね。田舎には若者の生活を支える働く場所がないから止むを得ないのかもしれないけれど。
句郎 春日部は東京のベットタウンの一つには違いないけれども、この春日部でも空き家が増えてきているようだよ。
華女 地区長さんが言っていたというじゃない。市長選の時だったかしら、越谷は人口が増えているにもかかわらず、春日部は人口が減ってきていると言っていたように思うわ。
句郎 確かにそう言っていた。僕たちが家を建てた時、一日で住宅金融公庫の申し込みで満杯になったからね。
華女 もう今から四五年も昔の事よ。今になってみるとまるで四五年なんて一瞬の事だったように感じるわ。
句郎 華女さんも今や白髪お婆さんになってしまったからね。
華女 私だけじゃないわ。あんたも同じだけ年を取っているのよ。
句郎 本当に五十年なんて、一瞬の間なのかもしれないな。
華女 「秋近き心の寄りや四畳半」という芭蕉の句があるでしよ。なにか、心に沁みるものがあるわ。
句郎 芭蕉名句の一つかな。芭蕉晩年の句だ。老境を見事に表現している句の一つかな。どんな住まいであろうと家は心の寄りに違いない。