「マルクスは、1857年~58年に書いた『資本論』の最初の草稿『経済学批判要綱』のなかで、『個人』の発展という見地から、人類史の発展を三つの段階に概括して、次のようにのべたことがあります」(「綱領教室」第3巻 307~308頁)
(第一段階、第二段階は略略します。以下、「綱領教室」第三巻、308~310頁から)
「第3段階は、『諸個人の普遍的な発展のうえにきずかれた、また諸個人の共同体的、社会的生産性を諸個人の社会的力能として服属させることのうえにきずかれた自由な個体性』です」
「これが社会主義・共産主義社会です。マルクスは、『第二段階は第三段階の諸条件をつくりだす』とのべて、資本主義社会がつくりだす人格的独立性こそが、ーまだ『物象的依存性』を土台にしてはいるけれどもー、未来社会の条件となることを指摘しています」
「資本主義社会というのは、自由な個性をつくるという点でも人類史上、きわめて大きな役割を果たす社会です。資本主義社会から未来社会へと継承され、発展させられるのは、民主主義や自由、高度な物質的生産力、経済社会のルールとともに、何よりも、独立した人格をもった豊かな個性だということを、強調しなければなりません」(以上は、同書 310~311頁)
そして、志位さんは、次のように話をすすめました。」(以下、「同書」312~313頁)
「なぜ旧ソ連社会で、スターリンの無法な人間抑圧が長期にわたって支配し続けたのか。なぜ中国でも毛沢東時代に『文化大革命』のような事態が引き起こされたのか。そうした問題を考えると、ロシアにしても、中国にしても、資本主義が未発達の遅れた国で革命が始まったという条件があったことを忘れてはなりません」
「そのなかでも、人間の個性、基本的人権、主権者としての意識などが、十分につくられていない条件のもとで、革命が始まったことは、前途にもっとも重大な客観的困難をつくりだしたことでしょう」
「もちろん、そういう歴史的条件があったから、スターリンの誤りが必然だったとはいいません。しかし、誤りの一つの客観的な背景として、こうした問題があったことは事実でしょう」
「私たちは、これだけ資本主義が発達し、日本国憲法では人権の保障が豊かにうたわれ、国際的にも人権保障についての豊かな到達点がある。そういう社会のもとで、より先の社会にすすむわけですから、これは人間の個性という点でも、資本主義のもとで達成した到達点をすべて継承して、未来社会を建設することができる大いなる条件をもっている」