大学生諸君もコーナリフレクター(CR)の設置に馴れ、各自の作業分担も自然に決り最後の一基を設置し終える頃には和気あいあいの雰囲気でした。ロープの結び方一つ満足に出来なかった大学生諸君だったけど、すべてのCRを設置し終えると、皆んなで真夏の眩しい大空を見上げました。大空に一筋の飛行機雲が東から西に流れています。
誰かが、
「あれは観測機かな?」
1万3千メートルの上空を飛行する観測ジェット飛行機が見えるはずもありませんが、助教授の携帯電話に観測が順調であるとのメールがJAXA(宇宙航空研究開発機構)から届きました。
こうして、
他県大学による本県のための溜池情報データの収集は無事終了しました。それから、1ヶ月後にJAXAから観測データが届きました。
その解析に当研究所の主席研究員であるプロフェッショナルSE(プロを強調して普通のSEと差別化しています)が
天才的な能力を発揮します。
この段階での彼(プロフェッショナルSE)はリモートセンシングの知識も、ましてや合成開口レーダのことも、そして多偏波干渉SARデータ解析や複素データ解析など全く知識が有りませんでした。
しかし、
彼の潜在的な能力は恐るべき力を発揮します。
研究者(助教授)のもとでの1日だけの学習で、何と1ヶ月程の独学で「多偏波干渉SARデータ解析ソフト(Windows版)」を作り上げてしまったのです。この天才的な能力に驚いた研究者(助教授)は次々と高度な解析の為の資料や文献を提示し、
またアドバイスを惜しまず彼の驚異的な能力を引き出して行きます。
合成開口レーダによる多偏波干渉SARの研究自体、それほどメジャーとは言えません。その地味な研究を淡々と長年続けられてきた研究者(助教授)の第1人者としての実力と人間的な魅力をに私は惚れていたのです。
そこに、何気なく参加した当所スタッフの恐るべき潜在能力の発現で、この研究は世界的な開発ツールとしての方向に発展して行きます。
本県の研究者が全く知らないところで静かに確実にです。