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自己相関係数について。
前回は移動平均と時差相関を取り上げました。今回は、自己相関について考えてみたいと思います。時差相関では、末梢血中好塩基球数(Ba)と血清IgE値の2群間のタイムラグでしたが、ここでの
自己相関は心電図波形から計測したR-R間隔時間(msec:以下、RRと言う)を例題としています。通常、健常者であれば呼気と吸気時でRRが異なります。
図1は健常者の通常の呼吸時におけるRRの頻度を幹葉図で示しました。
図1 通常呼吸時RR(SAS-JMP)
そして、
強制的にゆっくりとした深い腹式呼吸(約10回/分)をおこなった時のRRの頻度を図2に示しました。
図2 強制呼吸時RR(SAS-JMP)
通常呼吸時と強制呼吸時の統計量は次の通りでした。
通常呼吸時 強制呼吸時
平均値 = 915.65 msec 914.67 msec
標準偏差= 41.52 msec 73.75 msec
最頻値 = 920 msec 830 msec
ここでの、
通常呼吸時と強制呼吸時におけるRRの自己相関係数は、図3と図4のようになりました。
これをコレログラムと言います。
図3 通常呼吸時のコレログラム(SAS-JMP)
強制呼吸時のコレログラムは規則的に循環変動していることが分かります。
自己相関係数の計算は前回の時差相関係数と同じで、RRを一つずつずらして計算したものですので、MSエクセル関数の「SUMSQ」と「SUMPRODUCT」を使って、前回の時差相関係数と同様の計算をすれば良いでしょう。
「R」なら、acf ( time series data ) で図5の結果を得ることができます。
しかし、
acf ( time series data ) の”time series data” は時系列データオブジェクトでなければなりません。もし、
RRのデータが例えば、次の様に並んでいるだけなら、
dat <- c ( 860,930,890,911,1000,891,・・・・ )
これを、
例えば、t_dat <- ts ( dat, frequency=1 ) としてデータオブジェクトを作成しておき、
acf ( t_dat )
とすれば、図5のような自己相関プロットが得られます。
図5 「R」による自己相関プロット図
SAS-JMP なら、「分析→モデル化→時系列分析」で求めることが出来ます。
RRは副交感神経機能検査などで用いられており、ここでの自己相関分析も一つの検査方法として考えてみて下さい。