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そんなある日、大人たちがラジオの前に集まっています。そうです、天皇陛下の玉音放送でした。母は「やれやれ、やっと終わったわ・・・」と言って、周りの大人達とは違いサバサバしていたのを覚えています。父の店はどうなったかと言いますと、父も職人も居ない店などやって行けないとばかりに、私の通う小学校の全校生徒に高級和紙と桐の硯箱を寄付したのです。金毘羅さんの一番下の石段から父の店まで生徒達の長い行列です。こうして、父の留守に父の店の商品は全て空になりました。それから、ず～と長屋暮らしですが、長屋の狭い家に毎日のように通って来る兎目の「いさのはん」がいました。「いさのはん」は家に来ては母とよく水飴を舐めていました。私は兎目の「いさのはん」があまり好きではありませんので、どうして家に来るのか不思議でなりませんでした。後で分ったのですが、「いさのはん」はお店のお手伝いさんだったのです。終戦後もよく家に来ていたのは、母の着物を「いさのはん」の田舎の農家でお米や味噌や醤油やお酒に換えて持って来ていたのです。