統計ブログはじめました!

各専門分野の統計技術、方法、テクニックなどを気ままに分かり易く例題をもとに解説します。

医学と統計(81)

2012-03-30 11:09:32 | 日記・エッセイ・コラム

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薬の効果と非劣性検証(2)

前回は、正規分布を仮定した母平均でのハンディキャップ検定でした。
今回は、有効率の場合の検定方法について、例題をみてみましょう。
例えば、
A剤(比べる薬剤)とB剤(治験薬剤)の有効率が次の様であったとします。

薬剤名............例数...........有効数(率)
A剤(対象).....200..............25(0.125)
B剤(治験).....150..............30(0.200)

比率の差の検定は、下記URLのWebオンラインソフトで求めてみましょう。
http://in-silico.net/statistics/ztest/two-proportion]

次のようにデータを入力して下さい。
..........................Sample1.......Samole2
Proportion .......0.125.................0.2
Sample size......200..................150
Variance..........・Equal

Tail ・Both

出力結果は次の通りです。
Result

z-value -1.9079
two-tailed p-value 0.0564
   
95% confidence internvals   
upper 0.002
lower -0.152

The two samples are not significantly different.

有意水準5%でA剤とB剤の有効率に差がないので、次の同等性の検証を試みます。

例  数: Na = 200、Nb = 150
有効数: Xa = 25、Xb = 30
有効率: Pa = 0.125、Pb = 0.2
マージンΔ = 0.1

P=(Xa+Xb+Nb*0.1)/(Na+Nb) = (25+30+150*0.1)/(200+150) = 0.2
F.left=(P-0.1)*(1-P+0.1)/Na = (0.2-0.1)*(1-0.2+0.1)/150 = 0.0006
F.right=P*(1-P)/Nb = 0.2*(1-0.2)/200 = 0.0008

SE=sqrt(F.left + F.right) = sqrt(0.0006 + 0.0008) = 0.0374

U=(Pb - Pa+0.1) /SE = (0.2 - 0.125+0.1)/SE = 0.175 / 0.0374 = 4.679

U = 4.679 > Z(0.01) = 2.326 であるので、
 「有意水準1% で治験薬(B剤)は対照薬(A剤)より10%以上劣らない」

すなわち、同等であることが検証されました。

95% 信頼限界は、
 (Pb-Pa) ± 1.96*SE = 0.075 ± 1.96*0.0374 = 0.002 ~ 0.148

-Δ = -0.1 < Lower 95%CI = 0.002

ですので、検定結果と同じく「非劣性」であると言えます。

次回は未定です。


医学と統計(80)

2012-03-20 17:38:20 | 日記・エッセイ・コラム

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薬の効果と非劣性検証(1)

2種類の薬剤について降血糖効果をHbA1c を指標に調べました.
投与前後の HbA1c の差(Pre-Post)について独立2群の平均値差検定( Student's t-test) で行い表1の結果を得ました.

表1 2つの薬剤の統計量
A剤 ( 対照 ) n=20 、mean±sd = 0.4±0.2   
B剤 ( 治験 ) n=30 、mean±sd = 0.5±0.3
t-value = 1.307 
p-value = 0.1973 (Non-sigificant)

以上の結果から、
A 剤 と B 剤 の HbA1c の平均値に有意差はないと判断されました.
しかし、
有意差のないことをもって A 剤 と B 剤 の効果は同じであると結論付け出来ません.
「有意差なし」とは同等を意味しているのではありません.
同等を証明するには、一つの方法として非劣性検証を行う必要があります.
表1 について言うなら、A剤(対照) の 投与前 と 投与後 の HbA1c の差(⊿)は
平均で ⊿=0.031 の低下がみられましたので、
meanB-(meanA-⊿)

について、t 検定 をおこなう必要があります.
非劣性検証では、
meanB-(meanA-⊿)=0.5-(0.4-0.031)=0.131

となります。すなわち、⊿の差をつけている分けです.

既平均値と既標準偏差からの t 検定は下記の Web オンラインソフト を利用すると便利でしょう.
STATISTICA APPLETS
t test:Independent Group
http://www1.assumption.edu/users/avadum/applets/applets.html

では、
早速データを入力してみましょう.次のように入力します.
M1=0.5、SD1=0.3、n1=30
M2=0.4-0.031=0.369、SD2=0.2,n2=20

出力結果は次の通りです.
t(48)=1.713、p=0.0466(片側)

95%信頼区間は次により計算すれば良いでしょう.
STATISTICA APPLETS の出力結果から、
SE=MD/t(48)=0.131/1.713=0.076
(M1-M2)-t(0.1,48)*SE=0.1-1.6772*0.076=-0.0275

以上の計算から、
p=0.0466(片側)、
⊿=0.031<95%CI(Low)=-0.0275

よって、
HbA1c の投与前後の差は 0.031 以上劣ることはない、同等性が認められた.

次回は、有効率の場合を取り上げたいと思います.