加賀恭一郎刑事シリーズは、『どちらが彼女を殺した』、『悪意』、『私が彼を殺した』と、斬新な小説の構成手法と読者への推理と解明について投げかけが続くというチャレンジ精神に富むものであった。ここで、ちょっと目先が変わる。読者にストレートに速球を投げ込んでくるという感じの急転回になっている。ここで初めて加賀シリーズが短編作品集となった。周到に伏線を張り、複雑に人間関係が絡まり合い、筋読みを二転三転させる構想ではなくて、そのものズバリに近いストーリーの展開となる。しかし、読者に対する目くらましはうまく仕組まれている。比較的ストレートな展開だからといって、そう簡単にネタばれするということはない。なるほど、と思わせる仕掛けは短編といえど抜かりがない。そこがおもしろいところである。一方で、筋読みでかなり重たいストーリー展開の作品が続いた後だけに、ショートストーリーでの推理を楽しめるのは、清涼飲料水で一息つくようなところもある。
この文庫本には5つの短編が収録されている。奥書によると、「小説現代」で1996~1999年に4作品、「イン・ポケット」に1999年に1作品が発表された作品群である。
それぞれの短編小説についての読後印象をまとめてみたい。
<嘘をもうひとつだけ>
第1作目が単行本、文庫本のタイトルにつかわれた同名の作品。『眠りの森』でバレリーナとバレー団を扱っていたが、これも演劇としてのバレーに関わっる領域に題材を取っている。公演を間近にしてその準備に励む弓削バレー団の舞台練習の場に、練馬警察署の加賀が訪れる場面からストーリーは始まる。公演を目前にする創作バレー「アラビアンナイト」を弓削バレー団が初演した際に、プリマドンナであった寺西美千代に加賀が聞き込み捜査に行く。
バレー教室を開く準備をしていた早川弘子が自宅マンションの敷地内の植え込みの中に倒れているのを管理人が発見した。警察の調査で、7階にある自室のバルコニーからの転落死と判明。早川はバルコニーをバレーのレッスン場として使っていたという。事故による転落なのか、自殺なのか、他殺なのか。このマンションには弘子が死ぬ1週間前に引っ越してきたばかりなのだ。室内には、段ボール箱がまだ開梱せず積まれた状態にある中での死亡だった。寺西美千代の部屋は8階で弘子の部屋の斜め上に位置するという関係にあった。
かつてプリマを演じた寺西が関わっていた「アラビアンナイト」の台本と自殺者の心理とが論点になっていくところがおもしろい。
<冷たい灼熱>
8月1日、午後2時40分、木嶋ひろみが徒歩で買い物からの帰宅途中、乗用車がカーポートに入ったところで、運転している田沼美枝子に気づき、声をかける。ゴミ袋の破れ補修の御礼を美枝子に述べたかったのだ。午後3時10分、新聞の集金に回っている中井俊子が田沼家のチャイムを鳴らすが応答がない。午後7時5分、田沼洋次は路上で近所に住む主婦の坂上和子と挨拶を交わす。和子は自宅の庭に水を撒いているところだった。田沼は自宅のドアの鍵を開けたが中は真っ暗だった。ダイニングルーム、その隣の和室をチェックし、洗面所のドアを開ける。そして洋次は妻の美枝子が死んでいるのを発見した。洋次は警察に電話したあと、二階の和室が荒らされていることに気づく。
捜査員が現場の室内を動き回っているときに、二階を調べていた加賀刑事は洋次に上がって来てほしいと声をかける。加賀は二階の状況にある違和感を抱いたのだ。加賀は洋次に対しいくつか質問する。なくなったという現金がどこにあったのか。貴重品の確認をしたか。今朝の子供の服をを覚えているか。見あたらない服があるか。1歳の子供をどこで寝かせているか。最近停電があったか・・・などと。
子供の行方は不明だった。村越警部は洋次に顔見知りの犯行の可能性も低くはないと言う。翌日午後、子供の顔がはっきりわかる写真がないか尋ねられるが、洋次はアルバムのある場所がわからない。洋次が言うアルバムの大きさ、形から、加賀は既にそのあり場所を知っていた。
近所の主婦たちの証言や小さな事実情報の積み重ねから、加賀の推理が進展する。そして、加賀はある不自然さに気づく。
冒頭のシーンを何気なく読んでしまっていたが、既にそこには重大な伏線が張られていた。ストレートな推理もののようでいて、ひねりが加わっている。なかなか仕掛けが巧妙に組み込まれている。
<第二の希望>
楠木親子に起こる事件である。楠木真智子は5年前に離婚し、娘の理砂と暮らしている。真智子は会計事務所に勤め、ダンススクールに通う。彼女にとり、ダンサーになることが第二希望であり、第一は器械体操のオリンピック選手になることだった。短大生の頃に第一の希望を断念し、第二の希望を持ち続けているのである。理砂は器械体操の選手になるの道を歩んでいる。真智子は離婚後、理砂が器械体操の選手になることに夢を託し、それを第一にした生活を送ってきた。
ストーリーは日曜日に理砂が競技会に出かけるのを真智子が見送るシーンから始まる。そこに飼い主が旅行のためにチンチラペルシャ猫を預かっている老婦人がそばの薬屋から出て来て話しかけてきた。しばしの会話を交わした後、真智子の回想という形で、ストーリーは4日前の水曜日の夜に戻って行く。真智子がマンションの自宅に戻ると、玄関の鍵があいていた。2LDKの奧の部屋で男性が死んでいたのだ。警察に電話をする。所轄の警察署から刑事が来て、現場の検証から始まって行く。刑事の一人が加賀である。
被害者は所持していた免許証と名刺から毛利周介と判明。職業はデパートの外商担当である。加賀の質問に、真智子は半年前くらいから交際を始め、3ヵ月前ほどに作った合鍵を渡していたという。だがその夜は毛利が来る予定はなかったのだ。
加賀が真智子に聞き取りをしているところに理砂が帰ってくる。真智子は理砂に家に強盗が入ったらしいこと、毛利が殺されていたことを告げる。そのとき理砂の反応は鈍かった。
加賀は捜査の定石として小さな事実情報を着実に積み上げていく。そして真智子が加賀に話した内容と齟齬する箇所を見つけていく。そして、加賀は、決定的証拠を契機に、明らかになった事実を整合させられる形に推理を推し進めて事件を解明する。
この短編も、冒頭のシーンに重要な伏線が潜んでいる。そして、意外な展開となる。なかなかおもしろい構想である。
<狂った計算>
ひとことで言えば、殺人計画の計算が狂うというストーリー。それがどういう形でどう狂ったのかがこのストーリーの読ませどころである。
フジヤ生花店に数日前から毎日のように必ず菊とマーガレットを買う女性客が来る。坂上と言い、交通事故で夫を亡くしたという。その事故が悲惨なものだったことが町内でも話題になっていた。彼女はまだ若く、店主は近くを通って彼女の家を新築と感じたという。交通事故の件は既に処理済みである。彼女の名前は坂上奈央子。
交通事故があった1週間後、練馬警察署の加賀が別件で坂上家を訪ねる。彼が捜査しているのは中瀬という人物のことで、1週間前から行方不明となっていて、中瀬の妻から捜索願が出されているという。個人的相談もあったことから、加賀が調べているという。ただ、中瀬が行方不明になる少し前に、中瀬の妻が妙な電話を受けていたのである。それは中瀬が2年前にできたニュータウンに住む人妻に浮気しているという内容だったという。
中瀬は新日ハウスに勤める建築士であり、2年前に作ったニュータウンはこの坂上奈央子が住む地域なのだ。そのため、加賀が聞き込み捜査をしていると奈央子に話す。
奈央子は7年前に35歳の隆昌と結婚し、約2年前にこのニュータウンの建て売り住宅を購入したのだ。そして中瀬は契約事項の一環として、何ヶ月に一度か、坂上邸にメンテナンスの関係で訪問していることが明かになる。
加賀の聞き込み捜査と推理が少しずつ進展していく。
なぜ、マーガレットを彼女が買ったのかの理由も最後に明らかになる。
一種のどんでん返しと偶然の重なりがうまくストーリーに折り込まれていくところが発想とひておもしろい。
<友の助言>
この短編は少し異色である。それ故に興味深い。
「友」とは誰をさすか? 加賀である。加賀が誰に助言する立場になるのか。相手は萩原保であり、大学で同じ社会学部に在籍した友人なのだ。
加賀が病院に萩原の見舞いに行く1週間前に、萩原は東名高速道路で側壁に激突する事故を起こしたのだった。その日、萩原の妻・峰子は息子の大地を連れて、横須賀の実家に帰っていた。その日の昼間、高校時代の同窓会があったからである。そして事故の起こった翌日の昼過ぎに家に戻る予定だった。萩原はその日、同様に昔の仲間と会食の予定だった。その仲間というのが加賀である。萩原は出かける前に、峰子からの電話を受けた。飼い猫に餌を与えたかの確認と、夫に対してビタミン剤を飲みいつものドリンク剤を飲んで出かけるようにとの助言だった。萩原はその助言に従ってビタミン剤とドリンク剤を飲んで出かけた。そして、事故を起こしたのである。幸いにして命に別状がなかった。
萩原は社員数十人の会社を経営し、様々な事業のプロデュースを請け負う仕事をしている。
加賀は萩原をどんなに疲れていても運転中に居眠りをする男ではないと評価していた。そこでこの事故に疑問を抱き、個人的に調べ始めるという展開になる。警察沙汰の事件にはならない。しかし加賀は調査し推理した結論を萩原に伝えるというストーリー展開になる。
加賀刑事シリーズでは、初めて事件にならない事件の追及という形でおもしろい仕上がりになっている。エンディングが微妙である。
マジックと同じで、種がわかると、なんだそんなところで惑わされたのか、そのヒントに気づかずに読み進めたのか・・・と思う。短編とはいえ、巧妙に仕組まれている点が楽しめる。一作品を短時間で読めるのも、たまにはいいなと思う。
ご一読ありがとうございます。

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ふと手に取った作品から私の読書領域の対象に加わってきました。
次の本をまずは読み継いできました。お読みいただけるとうれしいです。
『私が彼を殺した』 講談社文庫
『悪意』 講談社文庫
『どちらかが彼女を殺した』 講談社文庫
『眠りの森』 講談社文庫
『卒業』 講談社文庫
『新参者』 講談社
『麒麟の翼』 講談社
『プラチナデータ』 幻冬舎
『マスカレード・ホテル』 集英社
この文庫本には5つの短編が収録されている。奥書によると、「小説現代」で1996~1999年に4作品、「イン・ポケット」に1999年に1作品が発表された作品群である。
それぞれの短編小説についての読後印象をまとめてみたい。
<嘘をもうひとつだけ>
第1作目が単行本、文庫本のタイトルにつかわれた同名の作品。『眠りの森』でバレリーナとバレー団を扱っていたが、これも演劇としてのバレーに関わっる領域に題材を取っている。公演を間近にしてその準備に励む弓削バレー団の舞台練習の場に、練馬警察署の加賀が訪れる場面からストーリーは始まる。公演を目前にする創作バレー「アラビアンナイト」を弓削バレー団が初演した際に、プリマドンナであった寺西美千代に加賀が聞き込み捜査に行く。
バレー教室を開く準備をしていた早川弘子が自宅マンションの敷地内の植え込みの中に倒れているのを管理人が発見した。警察の調査で、7階にある自室のバルコニーからの転落死と判明。早川はバルコニーをバレーのレッスン場として使っていたという。事故による転落なのか、自殺なのか、他殺なのか。このマンションには弘子が死ぬ1週間前に引っ越してきたばかりなのだ。室内には、段ボール箱がまだ開梱せず積まれた状態にある中での死亡だった。寺西美千代の部屋は8階で弘子の部屋の斜め上に位置するという関係にあった。
かつてプリマを演じた寺西が関わっていた「アラビアンナイト」の台本と自殺者の心理とが論点になっていくところがおもしろい。
<冷たい灼熱>
8月1日、午後2時40分、木嶋ひろみが徒歩で買い物からの帰宅途中、乗用車がカーポートに入ったところで、運転している田沼美枝子に気づき、声をかける。ゴミ袋の破れ補修の御礼を美枝子に述べたかったのだ。午後3時10分、新聞の集金に回っている中井俊子が田沼家のチャイムを鳴らすが応答がない。午後7時5分、田沼洋次は路上で近所に住む主婦の坂上和子と挨拶を交わす。和子は自宅の庭に水を撒いているところだった。田沼は自宅のドアの鍵を開けたが中は真っ暗だった。ダイニングルーム、その隣の和室をチェックし、洗面所のドアを開ける。そして洋次は妻の美枝子が死んでいるのを発見した。洋次は警察に電話したあと、二階の和室が荒らされていることに気づく。
捜査員が現場の室内を動き回っているときに、二階を調べていた加賀刑事は洋次に上がって来てほしいと声をかける。加賀は二階の状況にある違和感を抱いたのだ。加賀は洋次に対しいくつか質問する。なくなったという現金がどこにあったのか。貴重品の確認をしたか。今朝の子供の服をを覚えているか。見あたらない服があるか。1歳の子供をどこで寝かせているか。最近停電があったか・・・などと。
子供の行方は不明だった。村越警部は洋次に顔見知りの犯行の可能性も低くはないと言う。翌日午後、子供の顔がはっきりわかる写真がないか尋ねられるが、洋次はアルバムのある場所がわからない。洋次が言うアルバムの大きさ、形から、加賀は既にそのあり場所を知っていた。
近所の主婦たちの証言や小さな事実情報の積み重ねから、加賀の推理が進展する。そして、加賀はある不自然さに気づく。
冒頭のシーンを何気なく読んでしまっていたが、既にそこには重大な伏線が張られていた。ストレートな推理もののようでいて、ひねりが加わっている。なかなか仕掛けが巧妙に組み込まれている。
<第二の希望>
楠木親子に起こる事件である。楠木真智子は5年前に離婚し、娘の理砂と暮らしている。真智子は会計事務所に勤め、ダンススクールに通う。彼女にとり、ダンサーになることが第二希望であり、第一は器械体操のオリンピック選手になることだった。短大生の頃に第一の希望を断念し、第二の希望を持ち続けているのである。理砂は器械体操の選手になるの道を歩んでいる。真智子は離婚後、理砂が器械体操の選手になることに夢を託し、それを第一にした生活を送ってきた。
ストーリーは日曜日に理砂が競技会に出かけるのを真智子が見送るシーンから始まる。そこに飼い主が旅行のためにチンチラペルシャ猫を預かっている老婦人がそばの薬屋から出て来て話しかけてきた。しばしの会話を交わした後、真智子の回想という形で、ストーリーは4日前の水曜日の夜に戻って行く。真智子がマンションの自宅に戻ると、玄関の鍵があいていた。2LDKの奧の部屋で男性が死んでいたのだ。警察に電話をする。所轄の警察署から刑事が来て、現場の検証から始まって行く。刑事の一人が加賀である。
被害者は所持していた免許証と名刺から毛利周介と判明。職業はデパートの外商担当である。加賀の質問に、真智子は半年前くらいから交際を始め、3ヵ月前ほどに作った合鍵を渡していたという。だがその夜は毛利が来る予定はなかったのだ。
加賀が真智子に聞き取りをしているところに理砂が帰ってくる。真智子は理砂に家に強盗が入ったらしいこと、毛利が殺されていたことを告げる。そのとき理砂の反応は鈍かった。
加賀は捜査の定石として小さな事実情報を着実に積み上げていく。そして真智子が加賀に話した内容と齟齬する箇所を見つけていく。そして、加賀は、決定的証拠を契機に、明らかになった事実を整合させられる形に推理を推し進めて事件を解明する。
この短編も、冒頭のシーンに重要な伏線が潜んでいる。そして、意外な展開となる。なかなかおもしろい構想である。
<狂った計算>
ひとことで言えば、殺人計画の計算が狂うというストーリー。それがどういう形でどう狂ったのかがこのストーリーの読ませどころである。
フジヤ生花店に数日前から毎日のように必ず菊とマーガレットを買う女性客が来る。坂上と言い、交通事故で夫を亡くしたという。その事故が悲惨なものだったことが町内でも話題になっていた。彼女はまだ若く、店主は近くを通って彼女の家を新築と感じたという。交通事故の件は既に処理済みである。彼女の名前は坂上奈央子。
交通事故があった1週間後、練馬警察署の加賀が別件で坂上家を訪ねる。彼が捜査しているのは中瀬という人物のことで、1週間前から行方不明となっていて、中瀬の妻から捜索願が出されているという。個人的相談もあったことから、加賀が調べているという。ただ、中瀬が行方不明になる少し前に、中瀬の妻が妙な電話を受けていたのである。それは中瀬が2年前にできたニュータウンに住む人妻に浮気しているという内容だったという。
中瀬は新日ハウスに勤める建築士であり、2年前に作ったニュータウンはこの坂上奈央子が住む地域なのだ。そのため、加賀が聞き込み捜査をしていると奈央子に話す。
奈央子は7年前に35歳の隆昌と結婚し、約2年前にこのニュータウンの建て売り住宅を購入したのだ。そして中瀬は契約事項の一環として、何ヶ月に一度か、坂上邸にメンテナンスの関係で訪問していることが明かになる。
加賀の聞き込み捜査と推理が少しずつ進展していく。
なぜ、マーガレットを彼女が買ったのかの理由も最後に明らかになる。
一種のどんでん返しと偶然の重なりがうまくストーリーに折り込まれていくところが発想とひておもしろい。
<友の助言>
この短編は少し異色である。それ故に興味深い。
「友」とは誰をさすか? 加賀である。加賀が誰に助言する立場になるのか。相手は萩原保であり、大学で同じ社会学部に在籍した友人なのだ。
加賀が病院に萩原の見舞いに行く1週間前に、萩原は東名高速道路で側壁に激突する事故を起こしたのだった。その日、萩原の妻・峰子は息子の大地を連れて、横須賀の実家に帰っていた。その日の昼間、高校時代の同窓会があったからである。そして事故の起こった翌日の昼過ぎに家に戻る予定だった。萩原はその日、同様に昔の仲間と会食の予定だった。その仲間というのが加賀である。萩原は出かける前に、峰子からの電話を受けた。飼い猫に餌を与えたかの確認と、夫に対してビタミン剤を飲みいつものドリンク剤を飲んで出かけるようにとの助言だった。萩原はその助言に従ってビタミン剤とドリンク剤を飲んで出かけた。そして、事故を起こしたのである。幸いにして命に別状がなかった。
萩原は社員数十人の会社を経営し、様々な事業のプロデュースを請け負う仕事をしている。
加賀は萩原をどんなに疲れていても運転中に居眠りをする男ではないと評価していた。そこでこの事故に疑問を抱き、個人的に調べ始めるという展開になる。警察沙汰の事件にはならない。しかし加賀は調査し推理した結論を萩原に伝えるというストーリー展開になる。
加賀刑事シリーズでは、初めて事件にならない事件の追及という形でおもしろい仕上がりになっている。エンディングが微妙である。
マジックと同じで、種がわかると、なんだそんなところで惑わされたのか、そのヒントに気づかずに読み進めたのか・・・と思う。短編とはいえ、巧妙に仕組まれている点が楽しめる。一作品を短時間で読めるのも、たまにはいいなと思う。
ご一読ありがとうございます。

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ふと手に取った作品から私の読書領域の対象に加わってきました。
次の本をまずは読み継いできました。お読みいただけるとうれしいです。
『私が彼を殺した』 講談社文庫
『悪意』 講談社文庫
『どちらかが彼女を殺した』 講談社文庫
『眠りの森』 講談社文庫
『卒業』 講談社文庫
『新参者』 講談社
『麒麟の翼』 講談社
『プラチナデータ』 幻冬舎
『マスカレード・ホテル』 集英社