たまたま目にとまり読み始めた本である。なぜか? それは手許に久野健著『仏像風土記』(NHKブックス)があったので、まず同じタイトルだったことに惹かれた。手許の本は部分参照していただけで、まだ通読していないのに・・・である。そして、本書を先に通読してしまった。
もう一つの理由は、かなり以前に京都市内のギャラリーで著者の彫刻作品を見る機会があった。その折、著者の彫刻作品を写真に使った「開運・福めくり」というひと月の日めくりを購入していて、部屋の一隅に掛けているので、あの彫刻家か・・・というのもまず先に通読したきっかけである。
奥書を読むと、著者は現在、東京藝術大学大学院文化財保存学保存修復彫刻研究室の教授でもある。
奈良県の「平城遷都1300年祭の公式マスコットキャラクター『せんとくん』」の生みの親と言った方が、ピンとくるかもしれない。
本書の「はじめに」を読むと、『仏像礼讃』の続編という位置づけになるようだ。『仏像礼讃』の書名をこの本で知ったので、いずれ読んでみたい。本書の副題に、北海道から中部までの地域名が挙げられている。全国に点在する仏像およそ250件を2分冊で紹介する予定で、こちらがその最初の1冊だとか。131件の仏像がこの文庫本に紹介されている。目次から地域別に紹介されている仏像名称の見出しをカウントすると、北海道(1)、東北(15)、関東(44)、中部(28)となる。「日光・月光菩薩立像」「十二神将立像」「薬師如来坐像および両脇侍像」などと、複数の仏像の紹介もあるので、本書で紹介された仏像の大凡の地域分布くらいの参考としてほしい。
本書の構成は仏像名称の見出しで見開き2ページ完結型を基本にしている。右のページにまず一行目として「寺名・仏像の造立時期・寺の所在地・電話番号」が記され、「仏像名称」の見出しが続く。そしてその見出しに示された仏像についての解説文が基本は1ページ、場合によってはもう少し長くなる形でまとめられている。左のページに該当の仏像写真が載る。説明には、寺の由来、仏像の由来と仏師について、またその仏師の系譜、そして取り上げられた仏像の見所がきっちりと含まれている。取り上げられた仏像一件についての解説なのでそれぞれが一応独立している。そのため、どこからでも読み進めることができるという便利なガイドブックになっている。掲載されたお寺の見出しとなった仏像との関連あるいは、優品としての仏像があるとその写真掲載と追記がある。つまり、見出しよりも掲載仏の実数が増えるという次第。例えば第1章「東北・北海道」の冒頭には、まず福島県所在の勝常寺(しょうじょうじ)に安置されている「木造日光・月光菩薩立像」が見開きの2ページで紹介されている。たが続く見開き2ページに勝常寺所蔵の「木造四天王立像」(重文)4躰の写真と説明文の続きが5行ある。
著者によると、本書は「平成のひとりの彫刻家の目から見た地方別仏像案内」である。仏像を見ることが好きな京都生まれで関西在住の私には、本書の地域は手軽には行けないのが残念であるが、京都・奈良の仏師の系譜と仏像様式の地方伝播の事情がわかり、ビジュアルな写真を見つつ解説文を通じて、仏像の広がりをイメージできた。各地方の人にとっては、仏像を見にでかける際に本書を携えて行くと便利だろう。本書は2016年6月に第一刷が発行されている。これに続く東日本版もいずれ読んでみたい。
本書の特徴にもう少し触れておきたい。
まずオススメは「序章 仏像世界に関する基礎知識」を通読されることである。まず、読みやすい。ゴータマ・シッダールタ、つまりお釈迦様の生涯を平易・簡潔に説明することから始まり、仏像の種類についての入門レベルの知識ををイラスト入りで説明し、次いで、羅漢・仏弟子・高祖・祖師の簡略なプロフィールを語る。イラストがなかなかおもしろい。仏像や人物の特徴をうまく捉えているなあ・・・・と思う次第。小さなイラストが各所に散りばめられているだけでも、読みやすさにつながっている。
仏像の修復や仏像分野も手掛ける彫刻家という実務家的立場から説明されているので、一般読者には読みやすいと思う。かつ、仏像の見方の入門的なハンドブックとしてこの部分がお寺で仏像を拝観する時にも役立つと思う。
中でも、「バラモン教とヒンドゥー教と密教の相関イメージ」が1ページにイラスト入りでまとめられているのが、私には参考になった。
仏像はすべてカラー写真で掲載されているので、仏像の感触がその色合いから伝わり、イメージがしやすくなる。歳月を経た仏像の衣や肌の感じが色彩的にわかりやすく捉えられる。文庫本なので画像は小さくなるが、それでもけっこう細部までしっかり見られる写真が載せられている。お寺や博物館、教育委員会などからの写真提供による掲載の一方で、個人写真家名での写真も利用されている。その多くは藤森武の写真であるが、ほかに小平忠生・鈴木智彦・寺門益敏・佐藤紀夫・Kenji Turuta・渡辺康文各氏の写真も使われている。それぞれプロの写真家なのだろう。いいコラボレーションとなっている。
本書で紹介されている仏像写真並びにその解説から、私ができればまず訪れて現地で拝見したいなと思うのは次の仏像群です。本書の掲載順で列挙してみたい。ほんとは勿論全部見たいのだけれど・・・・・。
木造十一面千手観音菩薩立像(立木観音) 恵隆寺立木観音堂(福島県)
木造千手観音立像 大蔵寺(福島県)
木造阿弥陀如来坐像 中尊寺(岩手県)
木造大日如来坐像 高野寺(北海道)
木造文珠菩薩立像 東京国立博物館
木造地蔵菩薩立像 根津美術館
木造阿弥陀如来三尊像 浄楽寺(神奈川県)
木造水月観音菩薩半跏像 松岡山東慶寺(神奈川県)
木造十一面観音立像 海光山長谷寺(神奈川県)
五大明王 明王院(神奈川県)
木造釈迦如来立像 福泉寺(茨城県)
木造十一面千手観世音菩薩立像 中禅寺(日光山輪王寺別院)(栃木県)
石造不動明王立像 不動寺(群馬県)
木造聖観音菩薩立像 瀧山寺(愛知県)
木造大日如来坐像 横蔵寺(岐阜県
木造大日如来坐像 修禅寺(静岡県)
木造十一面観音菩薩立像 智識寺(長野県)
木造愛染明王坐像 妙高寺(新潟県)
不動明王磨崖仏 大岩山日石寺(富山県)
木造十一面観音立像 羽賀寺(福井県)
ご一読ありがとうございます。
↑↑ クリックしていただけると嬉しいです。
本書の本文を読み関心を持った事項についてネット検索したものを、一覧にしておきたい。
徳一 :「コトバンク」
仏都会津の祖・徳一大師について :「鳥追観音如法寺」
会津徳一大師五大寺 :「会津への夢街道、"夢ドライブ"」
空海と徳一 :「岩井國臣の世界」
定慶 :「コトバンク」
善円 :「コトバンク」
東京国立博物館 ホームページ
名品ギャラリー 彫刻
根津美術館 ホームページ
コレクション 彫刻
東京藝術大学大学美術館 ホームページ
神奈川県立金沢文庫 ホームページ
文庫概要
かんなみ仏の里美術館 ホームページ
所蔵品のご紹介
籔内佐斗司の世界 トップページ
籔内佐斗司美術館 ホームページ
絵解き講座・仏像で知るユーラシアの文化 そうやったんか!
が掲載中です(2016.12.23時点)
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
↑↑ クリックしていただけると嬉しいです。
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
もう一つの理由は、かなり以前に京都市内のギャラリーで著者の彫刻作品を見る機会があった。その折、著者の彫刻作品を写真に使った「開運・福めくり」というひと月の日めくりを購入していて、部屋の一隅に掛けているので、あの彫刻家か・・・というのもまず先に通読したきっかけである。
奥書を読むと、著者は現在、東京藝術大学大学院文化財保存学保存修復彫刻研究室の教授でもある。
奈良県の「平城遷都1300年祭の公式マスコットキャラクター『せんとくん』」の生みの親と言った方が、ピンとくるかもしれない。
本書の「はじめに」を読むと、『仏像礼讃』の続編という位置づけになるようだ。『仏像礼讃』の書名をこの本で知ったので、いずれ読んでみたい。本書の副題に、北海道から中部までの地域名が挙げられている。全国に点在する仏像およそ250件を2分冊で紹介する予定で、こちらがその最初の1冊だとか。131件の仏像がこの文庫本に紹介されている。目次から地域別に紹介されている仏像名称の見出しをカウントすると、北海道(1)、東北(15)、関東(44)、中部(28)となる。「日光・月光菩薩立像」「十二神将立像」「薬師如来坐像および両脇侍像」などと、複数の仏像の紹介もあるので、本書で紹介された仏像の大凡の地域分布くらいの参考としてほしい。
本書の構成は仏像名称の見出しで見開き2ページ完結型を基本にしている。右のページにまず一行目として「寺名・仏像の造立時期・寺の所在地・電話番号」が記され、「仏像名称」の見出しが続く。そしてその見出しに示された仏像についての解説文が基本は1ページ、場合によってはもう少し長くなる形でまとめられている。左のページに該当の仏像写真が載る。説明には、寺の由来、仏像の由来と仏師について、またその仏師の系譜、そして取り上げられた仏像の見所がきっちりと含まれている。取り上げられた仏像一件についての解説なのでそれぞれが一応独立している。そのため、どこからでも読み進めることができるという便利なガイドブックになっている。掲載されたお寺の見出しとなった仏像との関連あるいは、優品としての仏像があるとその写真掲載と追記がある。つまり、見出しよりも掲載仏の実数が増えるという次第。例えば第1章「東北・北海道」の冒頭には、まず福島県所在の勝常寺(しょうじょうじ)に安置されている「木造日光・月光菩薩立像」が見開きの2ページで紹介されている。たが続く見開き2ページに勝常寺所蔵の「木造四天王立像」(重文)4躰の写真と説明文の続きが5行ある。
著者によると、本書は「平成のひとりの彫刻家の目から見た地方別仏像案内」である。仏像を見ることが好きな京都生まれで関西在住の私には、本書の地域は手軽には行けないのが残念であるが、京都・奈良の仏師の系譜と仏像様式の地方伝播の事情がわかり、ビジュアルな写真を見つつ解説文を通じて、仏像の広がりをイメージできた。各地方の人にとっては、仏像を見にでかける際に本書を携えて行くと便利だろう。本書は2016年6月に第一刷が発行されている。これに続く東日本版もいずれ読んでみたい。
本書の特徴にもう少し触れておきたい。
まずオススメは「序章 仏像世界に関する基礎知識」を通読されることである。まず、読みやすい。ゴータマ・シッダールタ、つまりお釈迦様の生涯を平易・簡潔に説明することから始まり、仏像の種類についての入門レベルの知識ををイラスト入りで説明し、次いで、羅漢・仏弟子・高祖・祖師の簡略なプロフィールを語る。イラストがなかなかおもしろい。仏像や人物の特徴をうまく捉えているなあ・・・・と思う次第。小さなイラストが各所に散りばめられているだけでも、読みやすさにつながっている。
仏像の修復や仏像分野も手掛ける彫刻家という実務家的立場から説明されているので、一般読者には読みやすいと思う。かつ、仏像の見方の入門的なハンドブックとしてこの部分がお寺で仏像を拝観する時にも役立つと思う。
中でも、「バラモン教とヒンドゥー教と密教の相関イメージ」が1ページにイラスト入りでまとめられているのが、私には参考になった。
仏像はすべてカラー写真で掲載されているので、仏像の感触がその色合いから伝わり、イメージがしやすくなる。歳月を経た仏像の衣や肌の感じが色彩的にわかりやすく捉えられる。文庫本なので画像は小さくなるが、それでもけっこう細部までしっかり見られる写真が載せられている。お寺や博物館、教育委員会などからの写真提供による掲載の一方で、個人写真家名での写真も利用されている。その多くは藤森武の写真であるが、ほかに小平忠生・鈴木智彦・寺門益敏・佐藤紀夫・Kenji Turuta・渡辺康文各氏の写真も使われている。それぞれプロの写真家なのだろう。いいコラボレーションとなっている。
本書で紹介されている仏像写真並びにその解説から、私ができればまず訪れて現地で拝見したいなと思うのは次の仏像群です。本書の掲載順で列挙してみたい。ほんとは勿論全部見たいのだけれど・・・・・。
木造十一面千手観音菩薩立像(立木観音) 恵隆寺立木観音堂(福島県)
木造千手観音立像 大蔵寺(福島県)
木造阿弥陀如来坐像 中尊寺(岩手県)
木造大日如来坐像 高野寺(北海道)
木造文珠菩薩立像 東京国立博物館
木造地蔵菩薩立像 根津美術館
木造阿弥陀如来三尊像 浄楽寺(神奈川県)
木造水月観音菩薩半跏像 松岡山東慶寺(神奈川県)
木造十一面観音立像 海光山長谷寺(神奈川県)
五大明王 明王院(神奈川県)
木造釈迦如来立像 福泉寺(茨城県)
木造十一面千手観世音菩薩立像 中禅寺(日光山輪王寺別院)(栃木県)
石造不動明王立像 不動寺(群馬県)
木造聖観音菩薩立像 瀧山寺(愛知県)
木造大日如来坐像 横蔵寺(岐阜県
木造大日如来坐像 修禅寺(静岡県)
木造十一面観音菩薩立像 智識寺(長野県)
木造愛染明王坐像 妙高寺(新潟県)
不動明王磨崖仏 大岩山日石寺(富山県)
木造十一面観音立像 羽賀寺(福井県)
ご一読ありがとうございます。
↑↑ クリックしていただけると嬉しいです。
本書の本文を読み関心を持った事項についてネット検索したものを、一覧にしておきたい。
徳一 :「コトバンク」
仏都会津の祖・徳一大師について :「鳥追観音如法寺」
会津徳一大師五大寺 :「会津への夢街道、"夢ドライブ"」
空海と徳一 :「岩井國臣の世界」
定慶 :「コトバンク」
善円 :「コトバンク」
東京国立博物館 ホームページ
名品ギャラリー 彫刻
根津美術館 ホームページ
コレクション 彫刻
東京藝術大学大学美術館 ホームページ
神奈川県立金沢文庫 ホームページ
文庫概要
かんなみ仏の里美術館 ホームページ
所蔵品のご紹介
籔内佐斗司の世界 トップページ
籔内佐斗司美術館 ホームページ
絵解き講座・仏像で知るユーラシアの文化 そうやったんか!
が掲載中です(2016.12.23時点)
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
↑↑ クリックしていただけると嬉しいです。
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)