タイトルに惹かれて手に取ってみた。この文庫本には「あとがき」が3つ付いている。内表紙の裏のメッセージとこれらの「あとがき」並びに本文、ネット検索で出版を確認してみた結果を総合すると、次の経緯を辿って、この二度目の文庫本化に至ったようである。
もともとは、京都新聞に2006年1月~2008年3月の期間に「紙上問答」という形で新聞読者が仏教についてふと思う疑問や知りたいことの質問を受けて、著者が回答をするという企画が実行された。月2回の掲載ということで、結果的に質問数は53問収録されている。その問答内容が本書の第一部となっている。その後に「第二部 日々の問答編」が続く。こちらは大阪の北端の如来寺の住職、浄土真宗の僧侶として<月忌参り>を行う日常生活の中で、檀家さんから出た質問に対して、著者が答えた説明の内容がまとめられている。つまり、どちらもQ&Aの形でまとめられたものである。尚、著者は仏教研究者として大学教授の肩書もある教育者でもある。
新聞掲載が終了後、新書として『仏教ではこう考える』(学研新書、2008/11/01)が出版され、それが同名のタイトルで『仏教ではこう考える』 (学研M文庫 2013/07/09)として文庫本化したようだ。そして、2016年3月に本書の文庫本の出版となり、その際に加筆修正が加えられたという。著者の考えのまとめとしては、本書が一番新しいということになろう。マニアックな人ならば、前書と再文庫本化された内容の対比をしてみると、著者が考えをより深められた経緯をプラスアルファとして得られるかもしれない。
さて、こんな経緯を辿っている本書はどういう内容なのか。本書には「人生の悩みにお坊さんがゆるり回答」という副題が表紙に記載されている。読後印象は、まさにゆるりと回答した内容である。こうである、こうでなければならない、という決めつけた回答はない。また、浄土真宗という日本の仏教の一宗派の立場での回答でもない。そこは仏教研究者の視点が大きく関わっていると感じる。仏教という宗教のいわば包括的な立場から、様々な原典も引用しつつ、投げかけられた質問に対して、真摯な説明が回答として記されている。大乗仏教と上座部仏教両方のものの見方を縦横に引用紹介して、広がりのある回答となっている。時には他の世界宗教の考え方との対比も行いつつ、仏教での考え方との相違も明らかにしている。更には哲学、心理学、社会学など学問領域での所見の引用紹介にも及ぶ。そのスタンスは、質問者自身に、仏教という立場から自分で考える材料を提供するという立場で回答がなされていると受けとめた。ある意味では、中道の立場で著者の考えを提示したという内容である。
本書を通読した印象として仏教の奥行の広がりと不可思議さを再認識したと言える。ああそういう見方もあるのか・・・ということを各所で感じた。
Q&Aの形式なので、どこからでも読み始めることができる。時折、どれかの質問に立ち戻って、著者の説明を読み直し再考してみて、理解を深めたいと思う。
じゃ、どんな質問が投げかけられているのか? 素朴な質問、奇問、突っ込み質問などさまざまあっておもしろい。ちょっと、特徴的なおもしろい質問を本書から抽出して列挙してみる。本書に興味が湧くのではないかと思うが、如何?
[第一部 新聞読者から寄せられた紙上回答編]より
Q1 お坊さんは坊主頭でなくていいんですか?
Q3 悪いことをした人は死んだら地獄へ行くと言うのは本当ですか?
Q5 子どもに宗教心を教えるにはどうしたらいいでしょうか?
Q6 戒名料はなぜ必要なのですか?
Q9 神と仏はどう違うのですか?
Q14 上手な死に方って何ですか?
Q15 キリスト教では自殺は罪ですが、仏教ではどう考えますか?
Q21 生まれ変わっても、また出逢うことができますか?
Q27 欲望と煩悩は違うのでしょうか?
Q28 仏教は女性に差別的ではないですか?
Q29 ヘビや植物や山川にある仏性とはなにですか?
Q33 厄年というのは根拠があるのですか?
Q35 なまめかしい微笑や体つきをした仏像もありますがなぜですか?
Q38 地蔵菩薩様にお願いしたらガンが治りましたが、そのような不思議体験はありますか?
Q42 厳しいところとおおまかなところのどちらが本当の仏教ですか?
Q44 七福神にはどうして神様、仏様、インドの神様もいるのですか?
Q45 仏壇の中にはどなたがいらっしゃるのでしょうか?
Q50 一人っ子です。結婚したらうちの仏壇はどうすればよいのですか?
Q52 仏教では異性との抱擁、身体の接触はどうなのでしょう?
Q53 仏教はニヒリズム(虚無主義)ではないのですか?
[第二部 日々の問答編]より
その1 嫁に来たのにうちの宗旨にならなくてもいいんですか(怒)!
その4 お葬式って、やらなあかんのですか?
その7 お坊さんも殴られたら殴り返しますか?
こんな具合の質問が・・・・。なかなか興味深い、身近な質問でしょう?
質問者は明記されている範囲では9歳の子どもから63歳男性まで、男女の広がりを持っている。
さて、僧侶であり、学者である著者がどのように説明し答えているのか、本書を開いて一緒にお考えください。あるいは、ご自分で回答を考えてみてから、本書を開けるのもおもしろいかもしれません。私はストレートに本書を開けて読み始めた。ウ~ン、ナルホド!である。
ご一読ありがとうございます。
次の著書も読後印象記を書いています。
こちらもお読みいただけると、うれしいかぎりです。
『ブツダの伝道者たち』 釈 徹宗 角川選書
『不干斎ハビアン 神と仏を棄てた宗教者』 釈 徹宗 新潮選書
また、内田樹氏と著者の共著本もあります。
『聖地巡礼 ライジング 熊野紀行』 内田樹×釈徹宗 東京書籍
『聖地巡礼 リターンズ』 内田樹×釈撤宗 東京書籍
『聖地巡礼 ビギニング』 内田 樹×釈 徹宗 東京書籍
『現代霊性論』 内田 樹・釈 徹宗 講談社
もともとは、京都新聞に2006年1月~2008年3月の期間に「紙上問答」という形で新聞読者が仏教についてふと思う疑問や知りたいことの質問を受けて、著者が回答をするという企画が実行された。月2回の掲載ということで、結果的に質問数は53問収録されている。その問答内容が本書の第一部となっている。その後に「第二部 日々の問答編」が続く。こちらは大阪の北端の如来寺の住職、浄土真宗の僧侶として<月忌参り>を行う日常生活の中で、檀家さんから出た質問に対して、著者が答えた説明の内容がまとめられている。つまり、どちらもQ&Aの形でまとめられたものである。尚、著者は仏教研究者として大学教授の肩書もある教育者でもある。
新聞掲載が終了後、新書として『仏教ではこう考える』(学研新書、2008/11/01)が出版され、それが同名のタイトルで『仏教ではこう考える』 (学研M文庫 2013/07/09)として文庫本化したようだ。そして、2016年3月に本書の文庫本の出版となり、その際に加筆修正が加えられたという。著者の考えのまとめとしては、本書が一番新しいということになろう。マニアックな人ならば、前書と再文庫本化された内容の対比をしてみると、著者が考えをより深められた経緯をプラスアルファとして得られるかもしれない。
さて、こんな経緯を辿っている本書はどういう内容なのか。本書には「人生の悩みにお坊さんがゆるり回答」という副題が表紙に記載されている。読後印象は、まさにゆるりと回答した内容である。こうである、こうでなければならない、という決めつけた回答はない。また、浄土真宗という日本の仏教の一宗派の立場での回答でもない。そこは仏教研究者の視点が大きく関わっていると感じる。仏教という宗教のいわば包括的な立場から、様々な原典も引用しつつ、投げかけられた質問に対して、真摯な説明が回答として記されている。大乗仏教と上座部仏教両方のものの見方を縦横に引用紹介して、広がりのある回答となっている。時には他の世界宗教の考え方との対比も行いつつ、仏教での考え方との相違も明らかにしている。更には哲学、心理学、社会学など学問領域での所見の引用紹介にも及ぶ。そのスタンスは、質問者自身に、仏教という立場から自分で考える材料を提供するという立場で回答がなされていると受けとめた。ある意味では、中道の立場で著者の考えを提示したという内容である。
本書を通読した印象として仏教の奥行の広がりと不可思議さを再認識したと言える。ああそういう見方もあるのか・・・ということを各所で感じた。
Q&Aの形式なので、どこからでも読み始めることができる。時折、どれかの質問に立ち戻って、著者の説明を読み直し再考してみて、理解を深めたいと思う。
じゃ、どんな質問が投げかけられているのか? 素朴な質問、奇問、突っ込み質問などさまざまあっておもしろい。ちょっと、特徴的なおもしろい質問を本書から抽出して列挙してみる。本書に興味が湧くのではないかと思うが、如何?
[第一部 新聞読者から寄せられた紙上回答編]より
Q1 お坊さんは坊主頭でなくていいんですか?
Q3 悪いことをした人は死んだら地獄へ行くと言うのは本当ですか?
Q5 子どもに宗教心を教えるにはどうしたらいいでしょうか?
Q6 戒名料はなぜ必要なのですか?
Q9 神と仏はどう違うのですか?
Q14 上手な死に方って何ですか?
Q15 キリスト教では自殺は罪ですが、仏教ではどう考えますか?
Q21 生まれ変わっても、また出逢うことができますか?
Q27 欲望と煩悩は違うのでしょうか?
Q28 仏教は女性に差別的ではないですか?
Q29 ヘビや植物や山川にある仏性とはなにですか?
Q33 厄年というのは根拠があるのですか?
Q35 なまめかしい微笑や体つきをした仏像もありますがなぜですか?
Q38 地蔵菩薩様にお願いしたらガンが治りましたが、そのような不思議体験はありますか?
Q42 厳しいところとおおまかなところのどちらが本当の仏教ですか?
Q44 七福神にはどうして神様、仏様、インドの神様もいるのですか?
Q45 仏壇の中にはどなたがいらっしゃるのでしょうか?
Q50 一人っ子です。結婚したらうちの仏壇はどうすればよいのですか?
Q52 仏教では異性との抱擁、身体の接触はどうなのでしょう?
Q53 仏教はニヒリズム(虚無主義)ではないのですか?
[第二部 日々の問答編]より
その1 嫁に来たのにうちの宗旨にならなくてもいいんですか(怒)!
その4 お葬式って、やらなあかんのですか?
その7 お坊さんも殴られたら殴り返しますか?
こんな具合の質問が・・・・。なかなか興味深い、身近な質問でしょう?
質問者は明記されている範囲では9歳の子どもから63歳男性まで、男女の広がりを持っている。
さて、僧侶であり、学者である著者がどのように説明し答えているのか、本書を開いて一緒にお考えください。あるいは、ご自分で回答を考えてみてから、本書を開けるのもおもしろいかもしれません。私はストレートに本書を開けて読み始めた。ウ~ン、ナルホド!である。
ご一読ありがとうございます。
次の著書も読後印象記を書いています。
こちらもお読みいただけると、うれしいかぎりです。
『ブツダの伝道者たち』 釈 徹宗 角川選書
『不干斎ハビアン 神と仏を棄てた宗教者』 釈 徹宗 新潮選書
また、内田樹氏と著者の共著本もあります。
『聖地巡礼 ライジング 熊野紀行』 内田樹×釈徹宗 東京書籍
『聖地巡礼 リターンズ』 内田樹×釈撤宗 東京書籍
『聖地巡礼 ビギニング』 内田 樹×釈 徹宗 東京書籍
『現代霊性論』 内田 樹・釈 徹宗 講談社