鴨着く島

大隅の風土と歴史を紹介していきます

西鋭夫教授の歴史観

2019-03-20 12:29:36 | 母性

最近ダイレクト出版という会社がよくネットの広告欄に載っているが、この会社が出した『新説・明治維新』(西鋭夫=にし・としお講演録)という本は書店には並ばず、ネットで送料のみで取り寄せたのであるが、この前ブログで取り上げたヘンリー・ストークス『反日・中韓の詐偽を暴いた』と併せて読むと大変ためになる。

西鋭夫(としお)という人は1941年生まれの77歳で、関西大学卒業後に渡米してワシントン大学に学び、大学院まで出てから一時広告代理店に勤めた後、スタンフォード大学で学位を取得、そこの研究員を経て、今は同大学フーバー研究所の教授である。

このフーバー研究所は大統領フーバーの名を冠したアメリカでも極めて質の高い研究機関で、研究員の多くが政府機関や大手企業にスカウトされる名門であるそうだ。

西氏はフーバー研究所の博士号研究員であった若い時に、アメリカCIA(国家情報機関=スパイ養成機関)からスカウトされそうになったとエピソードを披露している。

それによると、英語の堪能な日本人スパイ(CIA職員)として日本の大学やマスコミ、大企業などに「高級かつ美人の秘書付きの好待遇」を保証するからやってみないかと誘われたそうである。

西氏は大学教授ならやってみたいと傾きかけたのだが、CIAの職員になるからには日本国籍を離れる必要があると念を押され、「(西)母が泣きますよ」「いや、お母さんには黙っていればいい」「(西)でも、やはり母に嘘は付けない」と目が醒め、寸でのところでスパイにはならなかったそうである。

この「母が泣く。母には嘘は付けない」(からスパイには成りたくない)という回想を読んだとき、ああ、この人も古いタイプの日本人なんだーーと感じ入ってしまった。それで、このブログのカテゴリーの中の「母性」に分類することになったというわけである。

さて、西教授の「明治維新観」だが、一言で言えば「イギリスが金を出して志士たちをうまく操った」「グラバー商会と坂本龍馬との関係は後ろにイギリスがあればこそであった」というもので、なるほど開国にはアメリカの「黒船」が最大の効果を発揮したが、その後の維新までの動きを「金の流れ(資金源)」から追っていくとイギリスの野望が透け透けである――というものだ。

そのイギリスはインドを支配しつつアヘンを栽培させ、アヘンを中国清朝に売りつけることで莫大な利益を得ていた。またインドへは工業製品である綿織物を売りつけてこれまた大きな利益を上げていた。

そこにユダヤ系商人も絡んでくるが、グラバーはユダヤ系商人の一つマディソン商会の一支配人として長崎に支店を開設し、坂本龍馬に資金を提供し、竜馬を通して薩摩や長州へ武器を売った。(※薩摩が御雇い外国人としてイギリス人を雇っているのもその流れだろう。)

ヘンリー・ストークスの上に挙げた著作では、イギリスのアヘン貿易や綿花貿易にの「悪行」についてほとんど取り上げておらず、太平洋戦争後の日本に対するアメリカの「戦勝国史観」の横暴を口を極めて罵っているのとは対照的である。ストークスも母国の恥には触れたくないのだろう。

西教授は現在国籍は日本のようだが、アメリカの研究機関からのサラリーで暮らしているからアメリカの歴史上の汚点についてさほど熱心には取沙汰していない。もっとも教授の言及しているのは明治維新前後の事であり、太平洋戦争後のことはさらっと触れている程度だ。

巻末に、教授の論文が日本語と英語で掲載されている。『美学の国を壊した明治維新」というタイトルだが、次の箇所は大いに学ぶべきだろう。

〈 日本が「脱亜入欧」と「文明開化」と「富国強兵」の鑑にした大英帝国は模範とすべき国ではなかった。〉

〈 明治維新から昭和20年まで77年。昭和20年から平成28年まで71年。悲劇の繰り返しににもめげず、日本国民は愚直なまでに美学と道徳(これらの根底にある日本語=引用者注)を大切にする。その日本人を世界中が崇める。日本の黄金時代は目の前だ。夜明け前だ。〉

 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿