おはようございます昌栄薬品の宮原 規美雄です
薬学博士渡辺武著『漢方が救う人体危機』
現代医療の誤りを正す
第2章 漢方はどう診断するか
血の道症(血毒症)の原因とその対症法
p135香り高い香辛料には肉や魚の腐敗を防ぐ解毒作用がある!
香りがある、いいにおいだ、ということは、人間にとっては薬物としてたいへんな効果をもっているわけです。
香りといえば、代表的なものに女性がつけている香水、香油があります。
なぜ、人間は皮膚や頭に香の高いものをつけるのか。
この習慣を調べてみると、西洋ではギリシャ・アテネ時代から、中国では唐・宋のころから身につけてきました。
これには三つの効用があるからです。
まず、第一はカビの繁殖をおさえる作用です。
人間が皮膚から水分を出してはいますが、バケツ一杯の水というような多量ではありません。
四六時中、皮膚は汗や気体として水分を出しています。
汗は体内の蛋白(たんぱく)質の分解物や塩分なども、いっしょに対外に排出しているわけなのです。
微量な蛋白質のまざった水分は腐敗、発酵(はっこう)もします。発酵した皮膚に微生物がたまれば皮膚病ですし、カビが巣食えば水虫ということになるのです。
ところが、香りの高いものは微生物の繁殖をおさえる作用があるのです。
第二に刺激をするということ――唐辛子(とうがらし)をなめると口のなかがかっとしますが、かっとするのは血行を高めていることであり、発散作用を助けることになるのです。
女性は中年になると小ジワがふえるといいますが、シワがふえるのは血行が悪くなった証拠です。
抵抗力をつけて血行がよくなれば、皮膚はすべすべしてくるのです。
第三の効用は、香りの高いものは液体を発散してくれるということです。
たとえば、水虫というカビは、皮膚にじくじく水分があって、蛋白質という栄養が含まれていて、体温という適度な温度があれば、どんどん繁殖します。(飲んで水虫を治療する漢方薬もあるのです。)
乾燥した皮膚は微生物にとっては苦手(にがて)なのだから、皮膚表面を乾かしてやればいいのです。
香りの高いもの、香水などを手につけると、つけた皮膚がすっとします。
水分が気体になって気化熱を奪うから、すっと涼しくなるのです。
それと同じく、香りの高いものは水分を発散させる作用があるのです。
昔から香水・香油は、この三つの効用をちゃんと備えてきたわけです。
中国では二千数百年前、神農(しんのう)さんという神様が、草根木皮(そうこんもくひ)を飲んで人体実験をしてきたということはすでに述べましたが、人間の内部はどうなっているのかということなど、たいへんな興味であったわけです。
漢方の本を読んでみますと、皮膚の裏返ったのが唇で、この裏側が肛門までつながって、いわゆる裏が成り立っているとしています。
いいかえると、辛い唐辛子をなめて口の中がかっとすれば、胃も腸もそうなると信じて、薬の効力を確かめてきたのです。
人間は食物を食べると、だいたい二十四時間は体内にあるのがふつうです。
新鮮な魚でも二十四時間も三十七、八度の温かいところにあったら腐ります。
胃酸は発酵を防ぎますが、暴飲暴食で水をじゃんじゃん飲んだのでは、いかなる胃酸も水割り同然です。
この腐敗を防ぐためにも、香りの高い香辛料が必要になってくるのです。
ぴりっとした香りの高いものは、内臓の粘膜にふれると、皮膚表面と同じ効力を発揮するのです。
肉食のヨーロッパ人にスパイスが発達したというのも、早くいえば、肉という腐りやすい食物を摂(と)るための人間の英知であったといえるのです。
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