神なる冬

カミナルフユはマヤの遺跡
コンサドーレサポーターなSFファンのブログ(謎)

[SF] ユダヤ警官同盟

2009-05-04 21:02:57 | SF
『ユダヤ警官同盟(上下)』 マイケル・シェイボン (新潮文庫)


 (C)新潮社

2008年度のヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞トリプルクラウン。
どんなスッゲー小説かと思いきや、改変歴史でのハードボイルド小説。前年度ヒューゴー賞の『レインボーズ・エンド』とはまったく違う趣。

うーん。SFとしてこの小説を語ることは、なんというか、日本人にはきついですな。

個人的には、「一神教教徒は全員死ね。お前らが大きな争いの元凶。そのすべての元祖であるユダヤ教を考えた奴は地獄へ落ちろ」と本気で思っているので、この小説のメッセージをちゃんと受け取ることができたとは思えませんが(笑)

ぶっちゃけて言ってしまうと、ユダヤ教徒はイスラエルが有ろうと無かろうと世界の火種で、それを焚きつけているのがキリスト教徒の福音派という図式が描かれている。としか読めないんですけど、そんな小説がどうしてトリプルクラウンを獲れるのか、正直言って理解が出来ません。いや、個人的には、「その通り!」なんですけどね。

もしかして、“フリーメイソンの陰謀”みたいな定番ギャグなわけ?

解説でも言及されていましたが、日本人としては小松左京+谷甲州の『日本沈没 第二部』と合わせて読みたいですね。日本沈没でディアスポラに至ったニッポン人と、この小説のユダヤ人の対比は非常に興味深いと思います。

あんまり書くとネタバレになるので注意(っつーか、この小説はそんなのは背景放射のハードボイルドなのであんまり関係ないが)なんですが、民族のアイデンティティーを保持するために、国土が必要なのか、コスモポリタンとしての民族性を確立するのかという葛藤があるわけですよ。そこで、あくまでも国土回復を目指すならば、『日本沈没 第三部(仮)』としてこの小説を読むことも可能ではないかと。

ユダヤ人もユダヤ教もあまり身近に感じられない日本人(←実はアイヌの血が入っているのかどうかは知らないが)としては、ただのハードボイルドとしか読めなかったんだけど、西欧人にとっては違うのかな?

現在も続くテロ戦争に絡んで、何か感じることがあるのだろうか。

いや、やっぱり、一神教徒全員死ね、以上の感想は無いな……。

[映画] GOEMON(ネタバレ感想)- 佐助(ゴリ)はなぜ家康の隣にいたのか?

2009-05-04 07:46:26 | 映画
映画『GOEMON』で、ラスト近くのゴリの演技があまりに不評なので、擁護してみる(笑)
この先は映画のあらすじが完全にばれるので、未見の人は読まないでください。











ラストの関ヶ原で、猿飛佐助(ゴリ)は何故あそこ(家康の側)に、トルーパーの姿でいたのか?
そして、あのへんちくりんな演技「獲ったどぉー! 褒美をくれぇ」は何なのか?

「脚本がヘン」、「ゴリの演技がお笑い」という感想を複数見た。
自分も、猿飛佐助は真田幸村の家来で豊臣勢なのでおかしいと、映画を見終わった時には思っていた。

しかし、長文読解問題で、「なぜ彼はここにいたのか、そしてそのとき彼はどう感じたのかを100字以内で記載しなさい(15点)」という出題されたとき、解答欄に「脚本がおかしいから」と書いたら0点だ。

佐助はなぜ家康の側にいたのか?

ここでは、『GOEMON』は時代劇でも、歴史改変ミステリーでもなく、“日本人の常識を逆手に取ったRPG風ファンタジー ”だという見地から、日本人の常識の範囲で、なぜ佐助が家康の家来だったのかを考察する。


さて、猿飛佐助。日本人の常識では、彼のイメージといえば……。
 ・真田十勇士の一員
 ・主君の真田幸村は豊臣勢
 ・小さくてすばしっこい忍者
 ・神風の術!(←違います)

そもそも猿飛佐助とは……とググって見ると。
家康のいる駿府城、または秀忠のいる江戸城に忍び込み、徳川方の内情を探る。
京都では、南禅寺の山門に住む石川五右衛門と術比べをする。

なんて記述が怪しいですね。

つまり、大阪城での大騒ぎの後の佐助の行動を推測すると。
佐助は幸村に仕官した。
→幸村は佐助に家康のスパイを命じる。
→運よく家康に取り立てられた佐助は家康の側近になり、関ヶ原の戦いに帯同する。
 (ちなみに、真田幸村は合戦には参加していない)
→戦場で家康に切りかかってきた謎の甲冑男を小太刀で止める。
→げぇ、五右衛門の兄貴!
 で、あの挙動不審な「褒美をくれ!」

そう考えると、あの演技は非常に迫真に迫っているのではないか?
アクシデントの中でも任務を成功させようという責任感。太平の世を作るかもしれない家康を守ったという自負。謎の男を討ったら五右衛門だったという衝撃。それらをごちゃ混ぜにして、揺れ動く心が現われていないだろうか?
それでも大根と言うならば、言えば良い。

真田家はこのとき家系断絶を恐れて、当主、昌幸と次男、幸村が豊臣側、長男、信之は徳川側に敢えて分かれた。そのあたりを含めた背景と、映画の中で佐助が望んだ未来を重ね合わせると、その心情は理解できなくもないと思うのだが。


GOEMONの世界は完全な架空世界であるが、直接描かれないサイドストーリーも史実や有名な先行著作から補完できるという稀有な物語世界だと思われる。映画は予算面で苦しくても、コミックやアニメで、この物語世界のシェアワールドものみたいなものも出てくるのではないだろうか?