『密閉都市のトリニティ』 鳥羽森 (講談社)
冒頭の記述すからすると、またもやパンデミック小説かと思いきや、まったく別物。疫病大発生の時期のエピソードもあるが主眼は別なところにある。
人工知能による身体性の獲得。
性欲から分離された恋愛。
他者を理解するための誤解や混乱の原因となるもの。
疫病によって密閉された凶都=京都を舞台に、このあたりのテーマが、時にスペキュラティブに、時にバイオレントに語られる。
しかしながら、小説としてはとっ散らかり過ぎで、まとまりに欠ける。
「大円団」という言葉について、主人公の思い入れが語られるシーンがあるのだが、これは大円団とは言いがたい。まぁ、無理矢理関係者を集めて「真実はこれだ!」とやっているわけだが、その後も結構長い。
いろいろなエピソードがひとつに収束して綺麗に閉じられるのではなく、一旦閉じられた後で、こぼれ落ちたいくつものネタを落穂拾いのように拾い集める感じ。
特に、教団関係のエピソードが物語りの中で回収されずに浮いているような気がする。どうしてあの教団が生まれたのかがよくわからないんだよね。Kが教団を作るほど、思い込みが激しく、狂っていたということなんだろうか。
とはいえ、使われているネタの中には興味深いものもいくつもある。
たとえば、他者を理解しようとするがゆえに発生するいがみ合いとか。
可愛さ余って憎さ百倍のケースはなぜ発生するのか。それは2者という関係性によって発生するのだから、3者の関係性にしてしまえばいいという発想は面白い。男女男とか、女男女とかの3者カップルこそが完全な関係を生み出すのだと。その中の一人はホモとかバイとかである必要があるわけだが、おねぇ系がこれだけ世間に受け入れられているのは、人間が二種の性から三種の性へ分離しようと進化している過程にあるからなわけだ。
性欲無しの恋愛に関しても、男女の友情は成立するのか、などの普遍的なテーマと組み合わせれば、もっと広い層にもリーチるする物語になったかもしれない。
処女作ということもあり、小説としてはどうなのという気もするが、荒削りなSFネタの詰め合わせとしては十分楽しめる作品だった。今後の小説家としてのこなれ具合に期待したい。(←上から目線過ぎ)
冒頭の記述すからすると、またもやパンデミック小説かと思いきや、まったく別物。疫病大発生の時期のエピソードもあるが主眼は別なところにある。
人工知能による身体性の獲得。
性欲から分離された恋愛。
他者を理解するための誤解や混乱の原因となるもの。
疫病によって密閉された凶都=京都を舞台に、このあたりのテーマが、時にスペキュラティブに、時にバイオレントに語られる。
しかしながら、小説としてはとっ散らかり過ぎで、まとまりに欠ける。
「大円団」という言葉について、主人公の思い入れが語られるシーンがあるのだが、これは大円団とは言いがたい。まぁ、無理矢理関係者を集めて「真実はこれだ!」とやっているわけだが、その後も結構長い。
いろいろなエピソードがひとつに収束して綺麗に閉じられるのではなく、一旦閉じられた後で、こぼれ落ちたいくつものネタを落穂拾いのように拾い集める感じ。
特に、教団関係のエピソードが物語りの中で回収されずに浮いているような気がする。どうしてあの教団が生まれたのかがよくわからないんだよね。Kが教団を作るほど、思い込みが激しく、狂っていたということなんだろうか。
とはいえ、使われているネタの中には興味深いものもいくつもある。
たとえば、他者を理解しようとするがゆえに発生するいがみ合いとか。
可愛さ余って憎さ百倍のケースはなぜ発生するのか。それは2者という関係性によって発生するのだから、3者の関係性にしてしまえばいいという発想は面白い。男女男とか、女男女とかの3者カップルこそが完全な関係を生み出すのだと。その中の一人はホモとかバイとかである必要があるわけだが、おねぇ系がこれだけ世間に受け入れられているのは、人間が二種の性から三種の性へ分離しようと進化している過程にあるからなわけだ。
性欲無しの恋愛に関しても、男女の友情は成立するのか、などの普遍的なテーマと組み合わせれば、もっと広い層にもリーチるする物語になったかもしれない。
処女作ということもあり、小説としてはどうなのという気もするが、荒削りなSFネタの詰め合わせとしては十分楽しめる作品だった。今後の小説家としてのこなれ具合に期待したい。(←上から目線過ぎ)