第4回ハヤカワSFコンテスト特別賞受賞作にして、SFコンテスト史上最大の問題作。
神林長平に「本作が最終選考の場にあるのは何かの間違いではないか」と言わしめた挙句、電子書籍のみ120円(税抜き)という破格の値段で配信された。なお、『伊藤計劃トリビュート2』に収録された模様。マジか。
ラブライブの二次創作だとか、初出はpixivだとか、ちょっと良からぬ方向のシロモノなのかと思いきや、なんとまぁ想像以上にステープルドンでびっくりした。タイトルだけのパクリなんかではなく、本質的なオマージュだった。つまりこれはラブライブの二次創作であると同時に、『最後にして最初の人類』の二次創作でもあるわけだ。
さすがに文章には書き殴りレベルの雑さがあるが、それが内容とよくマッチしていて勢いに繋がり、迫力と疾走感さえ与えている。そこまで考えて、敢えてこうした文体を選んでいるかのようだ。
第1期、第2期などのアイドル用語をうまくSF的に解釈し、アイドルの本質をSF的に解き明かすことに成功しているという、まさに怪作。
電子書籍で120円というチープな値付けも、この世界観を成立させる要素になっていて、早川書房の英断を讃えたいと思う。
思えば、かつて、ケータイ小説なるものがあった。『あたし彼女』は散々ネタにされつつも、ひとつの文学の可能性を見せてくれたのだった。この『最後にして最初のアイドル』は、それを越える文学の、あるいは“SF小説”の新たな可能性を開いたのかもしれない。
この調子だと、やる夫がSFコンテストに投稿してもおかしくないぞ。乗るしかない、このビッグウェーブに。