表紙は誰かと思ったら、故デヴィッド・ボウイ。『地球に落ちてきた男』なんかは有名だけれど、S-Fマガジンで特集されるとはびっくりだ。映画出演だけではなく、火星人設定のコンセプトアルバムなんかもあって、SFとの親和性は高かったのだろう。今だと誰になるんだろう。BUMP OF CHICKENもSEKAI NO OWARIもちょっと違うような気がするけど、Linked Horizonまで行くとまた違うような。あ、GACKTか?
個人的には『SFが読みたい! 2016年版』のベストSF 2015上位陣の読み切り小説が多数掲載されていることがうれしい。どれも今年度ベスト級の出来。特にイーガンの「七色覚」と、倉田タカシの「二本の足で」はオールタイムベスト級だと思う。毎回、これぐらいの質と量っていうのは難しいですよねー。
○「overdrive」 円城塔
思考が光速を越えたらどうなるのか。物語ることを突き詰めていった『エピローグ』に続き、今度は思考ることか。相変わらず良くわからない蒟蒻問答だが、確かにトリップするわ。
○「烏蘇里羆(ウスリーひぐま)」 ケン・リュウ/古沢嘉通訳
『紙の動物園』収録作品で言えば「良い狩りを」に連なるスチームパンク的作品。いきなり北海道の羆害事件が出てきて驚く。蝦夷地の開拓から逃れた羆は妖魔なのか、……あるいはアイヌか。
○「電波の武者」 牧野修
『月世界小説』と同設定らしい。野放図な妄想が実体化して、現実を侵食していく。しかし、現実と地続きの妄想はこの現実社会を抽象化し、抽出し、抽籤で500名様に当たりまぁっす!
○「熱帯夜」 パオロ・バチガルピ/中原尚哉訳
『神の水』からのスピンアウト。ルーシーがシャーリーンと出会ったときのエピソード。渇きの時代を生きる強い女性がここにもひとり。
○「スティクニー備蓄基地」 谷甲州
えーと、ラミエル?
○「七色覚」 グレッグ・イーガン/山岸真訳
視覚障碍者がインプラントをハッキングして手に入れた七色の世界。脱出したはずが疎外されていたという皮肉。「それ、もうアプリがあります」という台詞の破壊力。技術のコモディティ化は社会を良くも悪くも変えてしまう。
○「二本の足で」 倉田タカシ
“二本の足で”動き出すのはスパムメールというのが爆笑モノ。一発ネタで終わるかと思いきや、架空の記憶をしゃべり続ける偽者の友人の存在が甘酸っぱくてほろ苦い。断片的に語られる近未来の日本社会も興味深い。これはぜひ長編化して欲しい。
○「やせっぽちの真白き公爵(シン・ホワイト・デユーク)の帰還」 ニール・ゲイマン/小川 隆訳
なんで天野喜孝の絵じゃなかったんだろう。シン・ホワイト・デュークなんて聞いたこともなかったけれど、おもしろいことをやっていたんだなと今さらながらの感想。
○「突撃、Eチーム」 草上仁
遺伝子操作や出産前遺伝子診断が進んでいった先の未来。人間の失われた能力が特殊技能になり得るというコメディ。これ、見方を変えると障碍者と呼ばれる人々の特殊技能を活用しようという話にもなるのかも。
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