川越芋太郎の世界(Bar”夢”)

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アトピーの女王

2009-12-26 20:48:05 | 知恵庫先生の講座
「アトピーの女王」  著者:雨宮処凛  出版社:光文社知恵の森文庫


芋太郎にしては珍しい内容の文庫を読みました。
多少時間を経過した文書で、2002年の作品です。
とはいえ、内容は充分に今を語ります。


著者、自称の「呪われた一家」に生まれたアトピー少女が女王になるまでの
苦悩と笑い(著者の語りかけの面白さからつい)の人生禄です。
女王という意味合いも読んでいるうちに分かります。
アトピーとの壮絶な闘争記録であり、社会論でもあります。


アトピーというふざけたネーミング(著者の言を借りる)から患者以外の誰もが
真剣に考えていない。
「死に至る病でない」ことから、同情も心配も関心さえも軽い。

それどころか、患者数の多さや死に至らない安心感からか、ビジネス化した
金儲け的な側面を合わせ持つ。
ステロイド対応一つをとっても、統一見解もなく、金儲けの道具と化している。
そんな社会現象が透けて見える書籍です。


実は、芋太郎が注目したのは、健常人が持つある種の残酷性です。

著者が冗談半分で語る「程度の重い患者を笑い、自分を慰める。」心情やら、
「自らの罪悪性を恨み自分を否定する行為」がどれだけ辛い事か。
本書はあまりにも明るく、さっと書かれている為に、その重さを
感じられない読者も多いかもも知れない。


我々の心に内在するある種の「差別性」「残虐性」を垣間見る。
見ることにより、自らの「差別性」「残虐性」の存在に気が付き、
恐れ・制御する理性が生まれるのではないだろうか。
本書は是非、成長期・思春期の少年少女に読んで欲しい。


同時に、社会論として、痛烈な批判を内在する。
1分診療の皮膚科医から便乗商法の金儲け商人達が徘徊する。
弱い者・悩める者から全てを奪い去る手口。
それを規制もできない政治や社会の大人たちのルール社会。
これでもかと言うほどに、現在の社会の悩める姿を見ることができる。
さすが、雨宮処凛!


結局は、我々一人一人が動かなければ、何も変わらない。

患者から周囲の人間も含め、全ての人間が、人間の尊厳について考える
必要がある。
重たい言葉よりも、簡潔に言えば、「汝の隣人を愛せ」であろう。
これが、「全て」である。

宗教的な世界観で締めくくるが、「人は自分の心の奥を見つめるとき、
初めて他人に優しくなれる。」と私は考えている。
それは同情ではありません。
弱者保護でもありません。
人として当たり前の・・・です。

あなたなら、どう考えますか。


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