引き続き潜水です。
秋晴れのひんやりする澄み切った空気を吸い込みながら、自らも芸術の秋に浸る機会が訪れた。知人の紹介で知った、ヤマセミの写真展である。ヤマセミといえば、カワセミの仲間ぐらいとしか知識はないが、カメラマンにとっては野鳥の頂点ともいってはばからない題材で、カワセミやアカショウビン以上に、一度は出会うことと、憧れを持つ野鳥の神様に君臨しているともいえる。
今月一杯は展示されていると思うが、会場は東銀座のキャノンギャラリーである。作品の撮影者は、嶋田忠先生。展示と同時に平凡社からの出版記念会も兼用している。パンフレットには、マイナス20度まで下がる北海道千歳川で、極寒をものともせず川へ飛び込んで魚を捕らえるヤマセミ。苛酷な環境を生き抜く力強い姿を鳥類写真家第一人者のカメラが捉えた渾身の作品。書籍(写真集)の題名は凍る嘴(くちばし)である。サブタイトルは、氷点下20℃。くちばしの水滴は瞬時に凍ると題している。
嶋田 忠先生は、1949年、埼玉県大井村(現ふじみ野市)に生まれ、幼少期は武蔵野の自然の中で野鳥と共に過ごす。日本大学農獣医学部卒業後、動物雑誌「アニマ」(平凡社)創刊に参加。以後、野鳥を中心に独自の写真世界を開拓する。1980年北海道千歳市へ移住。1993年より7年間、テレビ朝日ニュースステーション特集「嶋田忠の野生の瞬間」シリーズのため、海外で映像作品を製作。2000年より、NHKの自然番組をハイビジョンにて制作。最近は北海道を中心に、海外の極楽鳥など、熱帯雨林の生き物をデジタルカメラで撮影している。
自分もNHKハイビジョンのアーカイブで北海道のカワセミとヤマセミを取材した映像を見たことがある。おそらく先生の作品だと思われるが、ヤマセミの姿を見て憧れを感じたモノである。このアーカイブは、今まで放映された映像を、読者の投票で選んでいるそうで、人気が高い映像の一つである。
ギャラリーには平日にもかかわらず、ひっきりなしに展示作品を鑑賞する入場者で混雑していた。写真パネルは拡大された写真映像が展示され、迫力のあるヤマセミの姿を見ることが出来る。バックグラウンドミュージックではないが、時々聞こえる鳴き声はヤマセミの鳴き声であった。
奥多摩にもヤマセミがいるとの情報を得ているが、一度でも見る機会が訪れ、写真として撮ってみたい強い憧憬に駆られた。歌舞伎座の近くなので、時間があれば是非ご覧になることをお薦めしたい。