私がナオトに出逢ったのは、いつだろう?
おそらく何年か前の夏季合宿だと思いますが、積極的に声をかけてくる少年に‥
《ずいぶん人懐っこい子がいるもんダ‥》
そのように思ったのが第一印象で、それが私とナオトの初めての出逢いだったと記憶しています。
それから一年以上はたった頃でしょうか?いきなり積志道場に出稽古に来たナオトに‥
『おぉ!覚えてるよォ~。夏季合宿に来てたよねェ』
と言った私。出稽古に来るくらいだし、ヤル気はあるのカナ?と思いましたし、もっと精神的にも成長して欲しいと願う、御両親の想いも聞いていた私は、あるタイミングで高台強化稽古への参加をススメたのです。
当時は4年生くらいだったでしょうか?それでも、すでに茶帯だったと思います。初めにナオトの組手を観て、私が本人に言った感想は‥
『こりゃあ重症だなぁ‥♪』
もちろん半分冗談も入っていますが、もう半分は本気!(笑)。ずいぶんヒドい言葉に思えるかも知れませんが、まったく組手慣れはしていないし、逆に強化稽古に来れば変えることが出来るという自信が、私の中にあったうえでの言葉でもありました。
その頃、参加した東海大会での試合は、女子であるマナミに何も出来ずに一本負け。そう、それがナオトの実力だったのです。
最初の頃は、基本的な稽古や礼儀作法一つとっても気を抜く場面が多くあり、精神面の問題からも、その実力が伸びにくいのだとも感じましたが、それでも環境が変われば意識的にも変わって行くわけで、仲間達の向上心や場の雰囲気が手伝ったこともあり、彼の意識を変えて行く、大きなキッカケになったように思います。
今から一年くらい前でしょうか、全体的に見ても集中力の足りないナオトを一人呼び出し、二人きりで話をしたのを覚えています。
彼の性格からも考え、私は穏やかさの中にも真剣味を入れ、なおかつ自信を持てるようにも話をしたつもりですが、ただ、彼の中にどのように届いたのかは知りません。
でも、正座をし、真剣に私の目を見て話を聞くナオトに‥
《この子なら大丈夫!》
そのように思ったもの事実。
もちろん高いレベルで言えば、まだまだ不足している部分もありますが、それでも、ずいぶん精神的にも成長した‥そんなふうに思います。
現在の中1メンバーの中では、一番遅れて強化稽古に参加してきたナオト。だから、もちろん大会での入賞という意味でも、一番遅れることにもなったわけですが、それでも第一章の終わりは、誰より最高のカタチになったわけで。
全国茶帯ト―ナメント大会の3試合を、相手に一つのポイントを取らせることなく優勝。
《自分自身は傷つかない》
護身空手としては、とても理想的な結果となりました。
今では組手に対する集中力という部分だけを見れば、誰にも負けないくらいのものを持つナオト。
仲間達が入賞し、先に昇段して行く姿を誰より見つめてきたわけで、悔しい想い‥寂しい想いもしたことでしょう。
それでも諦めることなく、すべてを越え、そして辿り着いた場所には、やはり《安らぎ》がありました。
その明るいキャラクターからも、誤解を生むこともあるナオトですが、それでも、あの日、正座をしながら真剣に話を聞く彼と、その瞳の中の純真を、私は信じて良かったと思います。
これからは、ある意味、第二章が始まりますが、まだまだ伸びしろがあるので、今後の成長も楽しみとなります。
最後に、タイヘンな努力をしてきたナオトが、お母さんに言った、心からの言葉を載せて終わりとします‥
『夢じゃ‥ないよね?』
【道場長のヒトコト】
☆『よく頑張った!ナオト、昇段おめでとう!』 (^-^)v