上級韓国語 - ちょんげぐりの世界

韓国語の勉強もそろそろビジネスクラスへ乗り換えましょう。上級韓国語をめざして,古狸案先生の授業は随時更新中です。

28 私たちの

2009-07-04 | 言葉の使い方
日本語と韓国語は似て非なる言葉であると何度も書いてきた。
もともと文化や歴史的背景がちがうのだから,たとえ文法構造が「似ている」言語であっても,直訳すると韓国語らしからぬ作文になってしまうことが多々ある。

韓国文化は儒教の影響からか,非常に連帯感が強い民族だと聞く。
その片りんが「ウリ」という単語1つにも現れているような気がする。

우리

この単語の使い方自体は,日本語とさほど変わらないのだが,日本人の考え方とはちがった用法があるのだ。

たとえば会社や学校などで「お国自慢」をしたとしよう。
日本語だと「『私の』故郷では○○が有名です」と表現すると思うのだが,韓国語では「『私たち』の故郷では○○が有名です」という。

自分の故郷を自分だけの故郷とは考えていないようだ。

同じように「私たちの国」,「私たちの町」,「私たちの学校」,「私たちの会社」,「私たちの家族」と表現する。
このへんまでは日本人でも何となく理解できるところだ。

ちょっと違和感があるのは,自分の家族を紹介するときだ。
日本語なら「あれは私の母です」というところを「あの方は私たちのお母様です」と表現するのだ。

저 분은 우리 어머님입니다.

確かに母は自分の母だが,父にとっても大切な人であり「家族全員の母である」というニュアンスが含まれているからだろう。

「ウリ」という話をするとき,必ず頭に浮かぶ笑い話がある。
自分の奥さんが,忘れ物を届けに会社まで来たとしよう。
自分の課に奥さんが入ってきて忘れ物を手渡しているのを見た同僚が,「この方はどなたですか?」と質問した。
韓国語だと우리 집사람입니다.(私たちの家内ですよ)というわけだが,「ウリ」の裏に隠れている文化的背景を知らずにこの韓国語を直訳すると「私たちの家内ですよ(みんなで共有している奥さん)」というようにとららえられてしまうおそれもある。

この話は韓国語を習い始めてすぐ,先生が「絶対誤解するだろうから」と「ウリ」の使い方を交えて話してくれたものだ。

話は変わって,最近先生に「どのくらいも範囲まで우리を使うことができるかわかりますか」と質問されてめんくらった。
その先生によると,ある程度距離があると우리は使わないのだそうだ。
「私たちの先生」や「私たちの班長」とは言えるのに「私たちの弘志君」はなぜだめなのか?

ふつうの友達関係では우리は使えない。
もっと秘密になってはじめて우리が使えるのだ。その答えはドラマの中にあった。

일호と정숙はつい最近付き合うようになったのだが,このことは友人たちには秘密にしていた。
정숙は友達とおしゃべりをしていたのだが,うっかり彼氏である일호のことを“우리 일호가”と言ってしまった。
あわてて「일호君がね…」と言い直して秘密がばれなかったという1シーン。
なるほど「ウリ」にはこんな意味もあったわけだ。


*古狸案先生の「役に立たないはずがない韓国語」から。(みなもとせいいち)

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