■■【心de経営】 実践編 05 渋沢栄一の論語講義に学ぶ経営 未だ学ばずと曰うと雖も、吾は必ず之を学びたりと謂わ 18
【心de経営】は、「経営は心deするもの」という意味になります。それとともにフランス語の前置詞であります「de(英語のof)」を活かしますと、「経営の心」すなわち、経営管理として、あるいは経営コンサルタントとして、企業経営をどの様にすべきか、経営の真髄を、筆者の体験を通じて、毎月第二火曜日12時に発信いたします。
【筆者紹介】 特定非営利活動法人日本経営士協会理事長 藤原 久子 氏
北海道札幌市出身、平成元年7月に財務の記帳代行業務並びに経理事務員の人材派遣業の会社を設立し代表取締役として現在に至っています。
平素、自社において、従業員満足・顧客満足・地域貢献企業を目指し、ワーク・ライフ・バランスを重視した経営に心がけています。
一方、自社における経験をもとに、経営コンサルタントとしての専門知識を活用しながら、客観的に現状を認識し、問題発見・解決策の提案や業務改善案、経営戦略への提言など、企業の様々な問題の共有を図りながらアドバイスをしています。
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本メルマガで【心で経営】の新シリーズが始まり数か月が経過しました。混濁した世の中を生き抜く術・視点は何処にあるのかを私なりにお伝えする事ができればと願いつつ、企業経営の心髄に論語の精神が重なっている事に気付かされ、渋沢栄一に共鳴し、論語が私の愛読書の一つとなっています。
中国、戦国時代の思想書「大学」におきましては、治国平天下(ちこくへいてんか:国を治め天下を平和に保つこと)の方が主体でありますが、私の論語への想いは、個人的規範が主体になっています。自らの修養の為に論語を学んでゆくのが最適であると考えたのです。
何時の時代にあっても、また時代の変化の中でも、いわゆる不倒翁(「おきあがりこぼし」と同意)として行き抜いて、人間の持っていた自らの修養と経験に基づくものが、企業経営をしてゆく上で極めて重要であると確信しています。
ここでご紹介する渋沢栄一の生涯は『論語』との出会いにあります。「明治維新を作った徳川時代的教養とはどういうものであったでしょうか。徳川時代は、一般的な民においても職字率が非常に高く、当時の世界的水準のトップではなかったかと言われております。『雨夜譚』をみますと、6歳のときに父の市郎右衛門から教育を受けていたとあります。その前の5歳のときから既に文章を読む事を教えられていて、学ぶという基礎を幼児に叩き込まれた渋沢栄一が一番親しんだのは、論語でした。7歳の頃に読み始め亡くなるまで読み続けていた渋沢栄一は、84才から2年余かけて膨大な『論語講義』を遺しました。この点ではまさに不易(ふえき:いつまでも変わらないこと)です。
■■ 渋沢栄一の論語講義 : 学而第1-7-7 ■■
未だ学ばずと曰うと雖も、吾は必ず之を学びたりと謂わ
ここでご紹介する渋沢栄一の生涯は『論語』との出会いにあります。「明治維新を作った徳川時代的教養とはどういうものであったのでしょうか。徳川時代は、一般的な民においても職字率が非常に高く、当時の世界的水準ではトップではなかったかと言われております。『雨夜譚』をみますと、6歳のときに父の市郎右衛門から教育を受けていたとあります。その前の5歳のときから既に文章を読む教養を教えられていて、学ぶという一番基礎を幼児に叩き込まれた渋沢栄一が一番親しんだのは、論語でした。7歳の頃に読み始め亡くなるまで読み続けていた渋沢栄一は、84才から2年余かけて膨大な『論語講義』を遺しました。この点ではまさに不易(ふえき:いつまでも変わらないこと)です。
◆ 学而(がくじ)第1-7-7
未だ学ばずと曰うと雖も、吾は必ず之を学びたりと謂わ
【読み】
未(いま)だ学ばずと日(い)うと雖(いえど)も、吾(われ)は必ず之を学びたりと謂(い)わん
子夏曰く、賢賢(けんけん)たるかな易(とかげ)の色や、とあり。父母を事(つか)得ては能(よ)く其の力を竭(つく)し、君に事(つか)えては能(よ)くその身を致し、朋友と交わり、言いて信あらば、未だ学ばずと曰うと雖も、吾は必ず之を学びたりと謂わん。
【口語訳】
子夏曰く、蜥蜴(とかげ)の色は賢々として周囲に応じて変わるもの、という古語がある。これは人間が父母に仕えるときには、その力のある限りを尽くし、君に仕えるときには、その身命すらも捧げ、朋友と交わる時には、言ったことには責任を持つ事の譬(たと)えである。この様な人は、もし学問をしたことがないと世間からみなされていても、私ならば、そういう実践こそが学問で、この古語の意味を真にわきまえた人だと断言してはばからない。
世間の一般通念として学問をしたと言えない人でも、其の行為が道にかなっていれば、それこそ学問をしたと言えるという、この発想は極めて論理的な発想で、孔子思想のもっとも鮮やかな特色が論語の中で随所に見られる。実はこのような伝統的な、何気ない言葉に新しい解釈を吹き込んで教え、同じように人生の目的、人間の生き方にも、この新しい言葉の概念によって指標を示したところである。
参考文献 論語と渋沢栄一 プレジデント社
【コメント】
ご紹介の一節では、学問と実践の共有性を説いています。「論語読みの論語知らず」という言葉があるように哲学を学んでも日々の行いに生かさなければ何もならず、人間同士の愛情や優しさのようなものが、人道的な文明社会の根底にあると考える必要性を含め、賢人を賢人として尊敬しなければならないことを伝授しています。
企業経営に於いても同様の考えの下で永続的発展を遂げなければいけません。企業の成長のためにトップに求められるものは、自身の生き方そのものであると思います。つまりすべてを弁えて実践してゆくことこそが実は学問をしていることに繋がっているというこの思想には深い意味を感じます。
経営コンサルタントの立場で、企業診断をさせて戴く折に、成長する企業には秘められた何かが有る事に気付かされます。それは、経営者ご自身の人生観・生き方にあるといっても過言では無いと信じます。
また多くの方は揺るぎない信念のもとに限りなく豊かな感性を持ち、日々研鑚を積んでいます。
コンサルタントとしてのプロフェッショナルを目指す為には、人は死ぬまで『学び』という言葉も心地よく聴こえて参ります。「人の道」を誠実に真摯に謙虚に歩み続けることに徹し、常に自分の生き方を振り返りながら先人の教えを紐解きつつ、時代に即応した歩調で前進して参りましょう。背中を多くの方達から押し、支えて戴けるように倫理的行動規範が必須となり社会貢献を目指したいものです。
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