■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】106 新ブランドのサンプル送る「トランクショー」で成果 1303
経営コンサルタントを40年余やってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。
【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】は、皆様から寄せられたり、私が支援したり、見聞したりした企業の事例を紹介していますが、お陰様で、毎回拍手をいただいています。
また、あなたのクライアント・顧問先やお知り合いの会社で、ここで紹介したい企業・団体等がありましたら、是非ご連絡ください。
■ 新ブランドのサンプル送る「トランクショー」で成果 1303
宮城興業(山形県南陽市)は1941年、宮城県仙台市創業の靴メーカーだ。戦前は軍靴を手掛け、疎開先の山形で戦後に民需へ転換。1969年に革靴の本場・英国のバーカー社と技術提携を結び、高級靴の代名詞とされる「グッドイヤーウェルト製法」による革靴などを全国500店以上の取引先に提供している。
「多品種・小ロット生産」が可能なため、他社ブランドの受託製造(OEM)のほか、近年は自社ブランドのEC展開にも力を入れていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で多くの取扱店が休業し売上が大幅に減少。OEMも販売店の見込みが立たないことから受注減となった。ダブルパンチで今年5月以降の工場稼働率は前年同期比で半減。取扱店舗の営業再開後も前年に比べ7割程度で推移している。
そこで工場稼働減で空いた時間を活用し、社長や職人を講師に、従業員向けのスキルアップセミナーを開講。技術の習得や維持、次の商品開発のための新たな技術開発に取り組み、新規で自社ブランドを5つ創出した。カタログやSNSを活用したプロモーション方法も見直し、マーケティングを再考した。
手応えを得たのは「宮城興業版・トランクショー」だ。トランクショーとは本来、特定ブランドのスタッフがトランクに入る程度の自社製品を持ってホテルなどの会場を訪れ、顧客を招待して行う展示・受注会のことだが、コロナ禍で県を跨いだ営業ができないため、新たに立ち上げた新ブランドのサンプルをトランクに詰め、ショー開催を希望する店舗に送り、ミニ展示会的なイベントを行ってもらった。
コロナ禍で余裕がない店舗は、お金をかけずに売上を上げる方法を模索していた。トランクショーなら在庫リスクを抱えず、既存顧客への新提案のほか、新規顧客獲得のための幅広いブランドを提案できる。当社はSNSを使った周知活動での支援を行い、サンプルの行き帰りの送料を負担する。店舗側にはほとんどリスクが無い。9月に開始したところ、全国約500店の取引先から引き合いが相次ぎ、いまでは毎週どこかの店で何らかのブランドのトランクショーが開催されている。
その結果、取引先1店舗あたりの売上が増加し、新規の取扱店を開拓できたし、当社の新ブランドを知ってもらうことで既存取扱店舗の取扱いアイテムが増加した。取扱店舗とのコミュニケーションが密になり、ニーズをつかむこともできた。なによりの収穫は営業マンが現場に行かなくても売上を上げられることが分かったことだ。
トランクショーの成果を機にインターネットやIT技術を活用したデジタルマーケティングに力を入れ、非対面型のコミュニケーションを強化し、激化するビジネス環境に対応できる会社を目指すつもりだ。
出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成