■【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】 変化に見舞われる金型業界 3524-3b05
経営コンサルタントを半世紀にわたってやってきた経験から、すこしでも皆様のご参考になればとお届けしています。
【成功企業・元気な会社・頑張っている社長】は、皆様から寄せられたり、私が支援したり、見聞したりした企業の事例を紹介していますが、お陰様で、毎回拍手をいただいています。
また、あなたのクライアント・顧問先やお知り合いの会社で、ここで紹介したい企業・団体等がありましたら、是非ご連絡ください。
■ 変化に見舞われる金型業界 3524-3b05
「金型業界には、お化けにおびえる企業経営者が多い」と指摘するのは、日 本金型工業会学術顧問のYさん。怪談話には季節が異なるが、どう いうことだろう。中小企業を悩ませる原材料価格やエネルギー価格の高騰問題、 人手不足に対処するために、価格転嫁の実現が大きな問題となっている。それ にも関わらず、取引先に価格交渉をすることを躊躇する企業が少なからず存在 する。Yさんは、そんな企業の姿勢を「見えてもいないお化けにおびえてい る」と言うのだ。
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金型業界を取り巻く状況はここ数年で激変している。事業所数はピーク時の 1万3000事業所から4300事業所と約7割減少し、従業者数も4割減に なっている。取引先企業の海外展開や主要ユーザーである自動車産業の電動化 の影響を受けているとはいえ、EV時代になっても金型が必要であることは変 わらない。実際EVモーター用金型が作れる企業は国内に2社しかおらず、仕 事が殺到しているという。自動車メーカーやティア1と呼ばれる大手部品メー カーは、日本の金型産業がこれ以上衰退すれば、国内でのものづくりが難しく なると危機感を持っている。
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Yさんは、「原価低減活動という名のもとに、毎年のように納入価格を引 き下げてきた自動車業界の姿勢にも問題があるが、市場が変化しているにもか かわらず、取引先との交渉に踏み出せない金型産業に携わる企業側にも課題は 多い」と指摘する。すでに金型の納入価格は韓国よりも安く、世界的にも下位 に陥っている。値上げを要求すれば取引停止を申し渡されるとおびえ、安さだ けを追求する時代ではなくなっている。
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ではどうしていけばいいのか。Yさんは「マーケティングが大事」と指摘 する。どの業界が伸びそうで、そこに対してどういう提案をするのかを考える 部署が多くの金型企業には存在しない。一人でもいいので、営業や情報収集を 担当する人員を配置し、新しい販路を開拓する準備をするべきだという。「他 業種の取引先を持つことが、市場の変化に柔軟に対応できる強さを持つことに つながる。金型だけでなく、加工事業に乗り出したり、自社製品づくりに発展 すれば、企業力はさらに強くなる」とも。
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日本金型工業会は今後、金型関連事業者の大がかりな実態調査を予定してい る。「小規模で取引先の多くは自動車関連」というこれまでの常識が、今後10 年で大きく変わるかもしれないという予想を立てている。調査結果をもとに、 今後金型業界にとって必要な施策にも反映させていくという。“型にはまらな い”成長の道筋を見出すことを期待したい。
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【 コメント 】
ほんの一昔前までは、日本の金型産業は、その品質から高く評価されていました。
ところが、中国をはじめ、これまで日本の金型メーカーが安い価格で日本メーカーを駆逐し始めただけではなく、これまで水をあけられていた国々の技術力向上で、日本の金型メーカーにキャッチアップしてきています。
Y氏がおっしゃる通り、日本勢は、その勢いに精神的に負けてしまって、「見えないお化け」に翻弄されてしまっているようです。
これまでは、自社で営業活動をしなくても、仕事の方からやってきてくれましたが、今や、時代が変わってきているのです。攻めの経営が求められていますので、それに対応できない企業は淘汰されかねません。
コンサルタント・士業の力をちょっと借りるだけで、まだまだ日本の金型メーカーの品質は、外国メーカーと比較しても勝っていると考えます。
同業者同士の連携と後継者育成をして行くことが吃緊の課題です。
同業者同士の連携で、コンサルタント・士業の支援を受ければ、充分に対応できると考えています。
コンサルタント・士業も、その点を強調して、金型メーカーに接触すれば、仕事を獲得することができるはずです。
両者とも、危機感不足と、まだまだ工夫と努力が不足していると考えます。
遅くなりすぎないうちに、対処しないと金型メーカーに明日はないでしょう。
出典: e-中小企業ネットマガジン掲載承認規定に基づき作成