ある会議のある言葉が引っかかり、一人机に向かって他の仕事をしながらもそのことを考えていたら、課長が苦笑いしながら帰って来た。
その顔を見て「あ、同じことを考えている」と分かってしまった。
課長は「会議中にそっちを見たけどなにかの資料を黙々と見ていたね」と言った。
私は「はい。何事も顔に出るので仕方なかったんです」と言った。
課長が「あまりにも堂々とした発言ぶりにある意味凄すぎて笑ってしまうね。」とそういったけれど私も苦笑いしながらもこりゃやりづらいとも思っていた。
毎回そうだ。言われるこちらも悪い。でもやっぱりいかん。
「念のために部長に確認します。私は名目が欲しいだけです。要望ではないので。」
そういうと課長は「うん。そうだね」と言っていた。
部長は私が思ったとおりの回答をくれた。
その時これまでを見てきてなぜ何年も同じ話をしているのか私の思うところを話した。
なぜ役員がとても当たり前なのに同じ台詞を言っているのか。
そこを考えたことがないからだ。部長にそう言った。言わなければならないと言う事柄はできていない事柄で、それができなければならないのは誰かの部内、管轄、立場だけで消化されることは全体としてそぐわず、これまでに問題となったなにかがあって、それが生まれてしまった原因がそこにあるからだ。
部長に「なぜ同じことを言っているか。当たり前で、言わなくてもいいことです。でもそれを言わなければならないのはなぜか。言わなければならない意図があるのです。それを無視し続けるからこうしして私も改めてお尋ねしなければなりません。部長。その『意図』を相手が理解していないから自分たちが同じことを繰り返して言わなければならなくなっていることに気がついていらっしゃいますか?」
部長はハッとした顔をした。
一人、窓口業務のスタッフのところへ行き店長と話した。
「あのね。自分の管轄のところの話をうかがい知らないところで話されるのはビックリするでしょ。私もそれは誰が知っているんだと思う。私もここの管轄を持っている。でも私は聞いていない。あなたも聞いていない。それを勝手に触られることはビックリする。でもね、相手にも考えがあるものなのよ。それを言われてしまう程、自分の管轄に愛情を注いでいないことにも気がつかなければならないの。」
そんなことを話した。
そして私が書いたプランをいくつか彼女に見せて、「ここにいるということに腹をくくらなければならないよ。これはここにいる以上ずっとつきまとう。どう抵抗しても無駄よ。誰がどんな指示を出してもここに来てくれるお客さんにそんな都合なんて通用しない。あなたがそれをうったえなければ上はあなたを支配しようとしてくるだけ。」
彼女は頷きながら聞いていた。
その後すぐに社長に呼ばれ、いろいろと話した。
今回のことだけでなく、社長が「みんな人ごとじゃないか。それが分かるんですよ。システムの話をするとき、誰がどんな人ごとな感覚か見てみましょうといいましたよね。ボクは分かっています。」
私はあのとき社長が気がつくように仕掛けた話し方をした。
何度も私に「人ごとなんだよねみんな。」というのが私自身も何のことなのかあの日よくわかった。
自分で仕掛けておいてどう反応されるのかわかっていなかった。
「同じ失敗をするわけにはいかない。他のこともね。」そういわれた時私は自分がどんなことが起こってどんな結末になってそれがどれほど嫌かを話した。
社長は「そうだと思う。そう思うことが人ごとじゃない証拠なんですよ。それってオブラートに包むときもあればハッキリ言った方がいいときもある。大丈夫ですよ。ボクはボクの考えがあって、今あなたが言っていることとちがいがありません。なにかあったら相談しなきゃダメですよ」
そう言われた。
課長へ内容を話し、「私は私の置かれた立場で淡々としますね。」
そう言うと課長は「なんだかんだ言っていろんな思いがあるんだろうけど。あんまり無視されるとビックリしてこっちが悩むね」と笑いながら言っていた。
何か踏ん切りが付いたような顔をしながら、私は次のテーマが大きいことを感じていた。
この状態をなんとかするためには確認した後の行動力が試される。
それも同時に分かっていて、誰がどれくらい気がついているのだろうと思いながらとにかくコーヒーでも飲んでからだ・・・と自動販売機に行った。