住宅コーディネーターになりあっという間に時間が過ぎた。
私にできるだろうかと迷っている暇はなかった。
自分でも予想以上のスピードでスキルを習得している。もともとモノづくりをしていたせいでこういう仕事は嫌いではないけど建築業だけは避けてきた。
友達の勧めがなかったら選んでいなかった。
入社してみたらびっくり。社長はパワハラが息して歩いているようなタイプで、一緒に働く同僚はこれまた桁外れに自己中心的な女性だった。
正直何度逃げたくなったかわからない。
ただ以前の職場よりもある意味悪いのにここの方がずっとましだと思えた。
なぜならみんな正直だからだ。
どんなにわがままでも、どんなに高圧的でも、嘘つきや裏切りであふれていた以前の職場に比べるとはるかに信用できる職場だった。
心の中が黒い上司に従うことに疲れていた私はもう二度とあの会社には戻りたくなかった。
周りからは私のスキルについてもったいないと何度も言われたけど、それでも心が疲れてしまえばもうなにもしたくなくなる。
以前の職場で何があったのか職安で何度か聞かれたけどどうやって説明すればいいのかわからないし、とにかくもうかかわりたくなかった。
私はちょうど私生活でDVを受けていた時期だったことも重なって前職場の状況を耐えられる精神力をなくしていた。
やめると決めたとき正直「あーもうなにも気にしなくていいんだ」と思うことの方が大きかった。
当時私は上司からセクハラを受けた。今となって思えばとんでもないことだった。それでも1年以上は我慢していた。
そのことをだれにも訴えずに私は黙っていた。
ただ何となく、あーもう長くこの会社にはいないだろうと踏ん切りがついた。
私がDVやセクハラ受けたことはこの世の女性が受ける現実なのだ、これが被害者の感情なのだ。私はそんな風に思って以前よりももっと女性の権利について学ぶようになり、そしてその会社がどんなに偏ったところだったか次第に気が付いていった。
弱い人に対して平気で虐げる。障がい者へのパワハラ、正直に意見を言った人へのパワハラ、これまで頑張ってきた人への無関心、強いものだけで固めあって守りあって立場の弱い人をずっと弱いままで利用する。その状況に気が付いたら何も怖くなくなった。
もう十分私はこの会社に尽くした・・・・そう思った。
最後に私の背中を押したのは私のパートナーのハニスケさんだった。
彼は私がどんなに当時苦しんでいたのかたぶんすべてを理解していない。むしろ私がそのクリエイティブな仕事を辞めることを惜しいと彼は思っていたかもしれない。
だけどハニスケさんを通して世界にはもっといろんなことがあり、もっと世の中は広く、クリエイティブな思考は自由な心から生まれるのだと気が付いたのだ。
私は現在の会社で昭和なパワハラを受ける。ただもう私は黙ってない。それが許される時代ではないことを知っているからだ。
私ははっきり社長へ言う。「今時そんな言い分とおりませんよ。ただのパワハラですよ。あなたは責任の所在ですが、私たちとあなたは人間として違いがない。人としてあなたから見下される理由がないんです。もう一度社長としての心を勉強してください」
「法律に触れるような自分勝手な注文を言わないでください」「みんなにも家族がいるんです。あなたが昔24時間働けたのはあなたを助けてくれた奥さんがいたからです。」「あなたが社員を守るから私たちもあなたを守ろうと思うのです」「あなたの心はお客様へ響きます。」「あなたがどんなにわがままでも私はあなたが社長として大事なものを持っていると気が付いています。」「あなたが嫌いなことは私たちも嫌いなのです」・・・・・
私ほど彼に対して文句を言う社員はいないだろう。彼はとても悩んでいたようで私は偶然彼がアドバイザーへ送ったメールを見た。
「社員が僕の未熟なところをほかの社長と比べます・・・」
私は大笑いした。
そうか。彼ℏ少しはなやんでいたんだな。何を言ってもわかっているのかどうなのか私には見えなかったからそのメールを見たとき私は大笑いしたしホッとしたし少しは優しくしてやろうと思った。
私には一緒に働く同僚がいて彼女は私たちを困らせる。社長のわがままと彼女のわがままのせいで私はダブルの荷物を持っている。
彼女の頑固な部分は社長よりも固く、彼女は社長よりも疲れるので私は彼女と戦わないようにしている。
彼女はただ真面目なんだ。それを彼女が周りにも求めるから周りが疲れる。
彼女はただいつもまっすぐ前を見ようとしている。それがいつもやりすぎる。
社長も彼女も本当にわがままで、自分自身には甘く、どうやってこういう大人になるんだと思うことが多い。
ただ彼らはいつも正直だ。彼らはいつも裏表がなく、人を裏切らない。
私がこれまでの人生で一番疲れた人種、腹の中が黒い人間。彼らはそういうタイプの人たちではない。
パワハラがあろうが、文句ばかり言うスタッフがいても彼らがただ正直であるだけでこんなに私は救われる。