
融けない雪だるま
「空に住むすべての雪は今すぐにわが家のケヤキの下に集まりなさい。」
空に暮らす雪の中で一番年をとったぼたん雪が空に住むすべての雪を呼び集めた。
「何だろう。なぜ、急にぼたん雪が皆を集めるんだろう。」
一番最初に初雪がケヤキの下に来て気になる表情をした。
「一体何事だ。ぼたん雪の家に何かよくないことでもあったのか。初雪さんあなたは何か知らないの。」
霰と霙も息を切らして走って来てとても心配な表情をした。
ぼたん雪は国に何か特別なことでの無い限りこのように皆に集まれてということは無かった。誰かの家に不幸があったとか、国の代表を選ぶとかいうこと以外には集めたことが無かった。
しかし、彼らの気がかりはそんなに長くは続かなかった。ぼたん雪が速い足取りで春雪と淡雪と粉雪を従えてケヤキの下に現れた。
「さあ、皆集まったならば、こちらに来てください。」
ぼたん雪は長く伸びた白いひげを撫でながらしばらく空咳をして、話を続けた。
「今日、私が集まれと言ったのは急いで皆と話をするためです。この間私たちが忙しくて地の国に行くことができなかったために、今、地の国では日照りになって大変なことになっている。何年かぶりの日照りだと地の国の人々がのどを渇かせて騒いでいる。これをどうすればいいか皆さん話をしてください。」
ぼたん雪がもう一度空咳をしながら話を終えると、空の国に住む雪たちは皆ほっとした顔になった。地の国より空の国に何か大きなことが起こったと思って皆緊張したからだった。
「この間、地の国のことを忘れて過ごしたことは大きな間違いです。今、すぐにでも地の国に行くのがいいと思います。」
いつも他の雪よりも一番先に地の国に行くことを自慢にしている初雪が、すぐに席から立ち上がって話をした。
「もう1年を超えて地の国に行くことができなかったので皆不安が多いです。これ以上遅くならないように地の国へ行くのがいいと思います。」
霰もすぐに立ち上がって全身をがりがりしながら言った。
「そうです。今すぐに地の国に行ってくる事意外に他の方法は無いようです。」
空の国に暮らす雪たちは皆地の国に行かなければならないというところに意見が集まった。
ぼたん雪は雪たちの話をしばらくの間黙って聞いていたが、白いひげをもう一度スーとなでてこのように言った。
「地の国の日照りがとてもひどいので、空の国に暮らすすべての雪は今すぐに地の国に行くようにしなさい。」
この話を聞いて一番喜んだのは春雪の兄弟でした。年子で生まれていくらも経たない春雪の兄弟はまだ一度も地の国に行ったことが無かった。春雪の兄弟は楽しげに歌を歌いながら地の国に行くのが願いだった。
「地の国に行ってきます。お母さん。」
春雪の兄弟は母に挨拶をするとすぐに急いで地の国に向って旅立った。あんなに行きたかった地の国に行くと言う思いに、ひとりでに鼻歌が出た。
「兄さん、地の国って、どんな風になっているの。私たちの空の国よりも広いの。」
「さあ、僕もよくわからないけど、おそらく私たちの国ぐらいじゃないか。」
春雪の兄弟が到着したのは「韓国」と言う国だった。空から下りて来てみた韓国は、3面が海に囲まれていて、真ん中の腰の部分に鉄条網が南北に分けていた。
「兄さん。あれは何だ。」
「うん、僕もよくわからないが、あれは鉄条網と言うものだ。」
「だけど、なぜ鉄条網がああやって分けているの。」
春雪の兄弟はその理由がわからず首をかしげた。
ところがその時、強いつむじ風が春雪の兄弟のほうに吹いた。つむじ風は仲良く手をつないでいた春雪の兄弟離してしまった。
「お、お、兄さん、兄さん。」
弟は兄の手を離さないようにがんばったが、兄の手を離してしまった。
兄の手を離した弟の春雪が風に乗って舞い降りたところは鉄条網の上側で北側の地だった。
強いつむじ風に勝てずに弟の手を離してしまった兄が降りたところは鉄条網の下側で南側だった。
春雪の兄弟は意外にもつむじ風に乗って休戦ラインが引かれた南北に分かれてしまったのだ。
韓国に暮らす人々は雪が降ってうれしくて大騒ぎだった。何年かぶりの冬の干ばつから抜け出せると踊りを踊る人もいた。南側の人も、北側の人も降った雪を見て喜ぶのはどちらも同じだった。
弟春雪は休戦ラインを超えて南側の地に降りた兄に会いたくて仕方なかった。兄春雪も北側の地に降りた弟が元気でいるのか気になって仕方なかった。しかし春雪の兄弟は鉄条網が塞いで互いの消息を全く知ることができなかった。
ところが、ある日のことだった。弟春雪は兄に会いたくて泣いていたら疲れて寝てしまった。ところが、誰かが体を動かすようで起きてみると、子供たちが弟春雪の体を転がして大きな雪の塊を作っていた。
「何をするんだ。なぜ、私の体をこんな風にするんだ。」
「うん、私たちが、君を雪だるまにしようとしているんだ。」
「雪だるまになると兄さんに会うことができるのか。」
「そうだ。会えるさ。」
南側の地にいる兄も一晩中弟を思っていたが、眠って起きてみると子供たちが兄春雪の体をあちこちに転がして雪だるまを作っていた。
こうやって春雪の兄弟は南側と北側の子供たちの手で大きな雪の塊に変った。そして雪だるまになって兄は北側を、弟は南側を見て立っているようになった。北側の子供たちは南側に向って、南側の子供たちは北側に向って雪だるまを立てておいたのだ。
空の国からはじめて韓国と言う国に下りて来たが南北に分かれた春雪の兄弟はこうやってそれぞれ雪だるまになって互いに休戦ラインを眺めて立っていた。
「兄さん、僕だよ。会いたいよ。」
弟春雪が先に兄がいる南側に向って大きく叫んだ。
「うん、俺も会いたい。この間どこか悪いところはなかったか。」
兄春雪も弟がいる北側に向って大きく叫んだ。
「うん、大丈夫だ。兄さんは。」
「うん、俺も大丈夫だ。」
雪だるまになった春雪の兄弟は会いたくて仕方なかった。
しかし、鉄条網が塞いで会うことができなかった。山と野原に張るが来てつつじが咲いても互いに会いたくて融けることができなかった。春が来ても融けない雪だるまとして立っていた。