
毘盧遮那仏の心
慶州の仏国寺の毘盧殿に毘盧遮那仏の改金工事があった。改金工事とは仏像の金色を取り戻すことで、寺で行われる工事の中で筆頭にあげられる工事だ。改金工事は長期間かけてとても丁寧に行わなければならないためにいったん改金工事が始まると仏様の頭に白い朝鮮紙でできた僧の帽子のような覆いをかぶせられる。するとその姿がまるで朝鮮時代や旧韓末の時の罪人が水をかぶった姿のように見えて、見る人の心をひやりとさせる。
仏国寺の毘盧殿の毘盧遮那仏はすでに何ヶ月も覆いで顔が覆われていて胸が苦しかった。朝になれば朝鮮紙を通った清らかな日差しが顔をくすぐったりするし、毘盧殿の窓の間から見える木の葉の清らかでまぶしい姿を見ることができなくて息が詰まるように苦しいことは事実だった。
毘盧遮那仏は自分の体が金色に新しく塗られるきらめくことがとてもいやだと思った。古くなったら古いままで、塗りが剥げたら剥げたままの姿がまさに自分の本当の姿だと思って、改金工事自体が全く意に沿わないと思っていた。何よりも金の塗りには人間の汚れた心が投影されているようで嫌だった。黄金の輝きだけが真理の光だと思うことは他の色に対する侮辱だと言うこともできる。
「もしもし、私はこのままがいいのだが、あるがままの姿でいてこそ衆生たちがより穏やかな心で私を訪ねてくることができるんだが。もう、私を苦しめるのをやめてこのままにして置いてくれ。」
毘盧遮那仏は改金工事を担当する僧にこっそりと自分の意見を伝えた。しかし、僧は毘盧遮那仏の言葉を聞こうが、聞くまいが工事を強行した。
毘盧遮那仏はつらかった。金色はいつの間にかお尻の辺りを過ぎて腰の部分まで塗られていった。いつも右側の2番目の指をまっすぐに立ててその指先を左手で握り締めていた毘盧遮那仏はあまりにも苦しくて指を握った手に力を入れた。すると、夜明けの月が傾く夜に、星が悲しく落ちている夜に、そのまま指を噛んでしまった。
血が流れた。人々は血を止めるために毘盧遮那仏の指からまず金色に塗った。しかし、血は止まらなかった。血はだんだんに毘盧遮那仏の胸を染めて地を染めて草の葉を染めた。そして人の貧しい心を染めた。ただ人々の心だけがそれを知らないだけだ。