
モンシロチョウの喜び
山裾の白菜畑に青虫が1匹住んでいました。全身に下毛がぎっしりと生えている青虫は毎日白菜の葉を食べるのが仕事でした。食べ物がいっぱいあり、初春の日差もまぶしくて世の中にうらやましいと思うことがひとつも無かった。夜毎に白菜の葉の上に這い上がって夜空を眺めると星の光さえ目にまぶしく幸せだった。
そんな青虫にもある日悩みがひとつ生じた。それは朝夕に一日も欠かさないで白菜の畑に来るウンジュおばあさんがかっかっと怒り始めたからだ。
「あれまあ、虫たちのせいで白菜つくりがだめになる。殻ばかり残してみんな食べちゃって、全くどうしたらいいだろう。」
青虫はウンジュのおばあさんがなぜそんなに怒っているのかわからなかった。「今日もまた息子夫婦がけんかしたみたい」と思って大したことだとは思ったが、そうではなかった。ウンジュのおばあさんは何日間か白菜畑に来るたびにそんなことを言っていた。
「全く、このろくでもないやつら、息子に薬を撒くように言って、こいつらを全部殺してしまわないと。このまま黙っていたら本当に白菜一株もとれないわ。」
青虫はウンジュおばあさんの言葉にギクッとした。ウンジュのおばあさんが薬を撒いてみんな殺してしまおうと言うことを見てこれは本当にただ事ではなかった。
その夜、青虫は眠りことができなった。あちらに、こちらに寝返りを打って夜中中寝返りを打って、他の白菜に暮らす友達にもそっと声をかけた。
「ねえ、私は最近ウンジュのおばあさんを理解することができない。一体なぜああなの。私たちの何が悪いと言うの。」
「うん、悪いことがある。私たちが白菜を食べるとウンジュのおばあさんには気に入らないのさ。」
友達は眠そうな目を半分ぐらい開けて言った。
「私たちが青虫だから、白菜を食べなければ何を食べて生きるの。」
「そういうことだ。人々は私たちを白菜に寄生する害虫だと言う。」
「害虫だって。それはどういう意味だ。」
「人々に害を与える虫と言う意味だけど、人々が自分の立場から勝手に言っていることだ。」
「違う。私は害虫じゃない。ただの青虫だ。」
青虫は涙が出た。人々が自分をそう思っているとは考えもできないことだった。
「泣くな。今は泣いても何の役にも立たない。」
友達がトントンと背中を叩いてくれたが、青虫はしきりに涙が出た。
「私たちがモンシロチョウになるまで我慢して待たなければならない。その時になると人々が私たちをまた益虫と言う。」
「益虫。益虫って何だ。」
「その言葉も人々が勝手につけた言葉だ。人々に益をもたらす虫と言う意味だ。私たちが美しい蝶になって農作物の花粉をあちこちに移してやる仕事をするからそういうのだ。」
「私たちが蝶になるって。」
青虫は蝶になると言う言葉にもう一度ドキッとした。
「そうだ。私たちは今、蝶になるためにこうやって青虫でいるのだ。私たちが蝶になって、大根、ねぎ、白菜の花粉を移してやらなかったら、どれも種を結ぶことができない。私たちが食べている白菜の種だけ言っても私たちが作ったのだ。白菜の花が咲いている時に私たちがおしべとめしべの上を飛びながら作ったものなのだ。だが、重要なのははじめから益虫と害虫の区別があったのではないと言う点だ。それはどこまでも人間が自分たちの立場からそう思っているだけなのだ。」
「本当に、人間の勝手だなぁ。人間って本当に悪い。」
青虫は悲しかった。そんな言葉まで聞きながら人間とともに暮らしたくなかった。害虫になって人々にひどく言われるよりもむしろ深い眠りの中にはまって永遠に目覚めたくなかった。」
その後どれぐらい多くの時間が過ぎたのかわからない。青虫は本当に深い眠りの中にはまっていた。死が少しも怖くないという考えをする中で白菜の葉にくっついて段々白い色のさなぎに変わっていった。
青虫は死が自分に訪れたのだと思った。糸をぎゅうぎゅうに巻いたせいか、全身に汗と熱が出て節々が疼いた。
青虫は静かに死を迎える準備をした。青虫たちはこうやってさなぎになって死んでいくのだと思って目を閉じた。
ところが、これはどうしたことか。死ぬとばかり思っていた自分が死ぬどころか白菜畑の上をひらひら飛んでいるではないか。青虫は驚いた目で自分の体をあれこれ調べてみた。
あ、羽があった。全身がまぶしいように白い色だった。前羽にかすかに黒い斑点が2つあった。
「おばあさん。あれ、蝶々だ、蝶々。」
今、ちょうど小学校に入学したウンジュがおばあさんのスカートのすそをつかんで叫ぶ声が聞こえた。
「おばあさん。あの蝶々の名前は何ていうの。」
「モンシロチョウ。」
「あ、本当にきれい。」
「そうだ、本当にきれいだろ。ウンジュもああいう風にかわいくならないと。わかったかい。
「はい。」
青虫はうれしかった。胸の中に喜びがいっぱいに上がっていた。風が少しだけ吹いてもひとりでに踊りを踊った。蝶々になった青虫は白菜畑の上で春の空の中で限りなく踊りを踊りながら飛んで行った。