シラオラケットカワセミ(Tanysiptera sylvia) Buff-breasted Paradise-Kingfisher
オーストラリア3日目。
オーストラリアの森の朝は鳥の声でとても騒がしい。この鳴き声の数だけ鳥がいるのか!と圧倒されてしまうほどに。
その中でもキバタンの声は特に目立つ凶悪な声で鳴いている。また、私がキャンプ場内を歩いていると、シャイなチャイロモズツグミが地面で地味に採餌していた。小さな池のほとりの暗がりには、頭から胸にかけてが明るい茶色で美しいミナミオオクイナがジッと潜む。
後頸がオレンジ色のベニカノコバトは、雄が羽毛を膨らませ尾を広げて立ててディスプレイしながら雌に走り寄っていたけれど、雌はお気に召さない様子で逃げ回っていた。
同じくヤブツカツクリの雄も雌を追いかけまわしていたけれど、こちらも逃げられ放題。
両者共に、想いにまかせて雌を追いかけすぎなのではないだろうか。
対してジェントルマンなフヨウチョウの雄は、雌の前で小さな葉っぱを嘴に加えて斜め上方を向き、なんとその場でヒョコヒョコと上下に伸び縮みを始めたではないか。
フヨウチョウの雌は雄のこのアピールが気になるのか、隣でジッとみつめていた。
なんと微笑ましい光景だろう・・・!友人と2人で見ていて、思わず顔が緩んでしまった。
ベニカノコバトやヤブツカツクリもフヨウチョウの雄を見習ったらどうだろう、なんてお節介な事を思う。
そう言えば今朝がた、暑くて寝苦しいため真っ暗な早朝に一度目を覚ました時、寝ぼけ耳に「アカショウビンが酔っ払ったような」鳴き声が聞こえていた。けれども、もしかしたらそれは夢かもしれないと思っていた。
ところが今もまた、その「アカショウビンがお腹を壊したような」声が森の奥から聞こえるではないか。
次の瞬間、声の聞こえた森の暗がりから白くて長い中央尾羽をたなびかせながらスーッと直線的に飛び、林縁にある木の枝の低い位置、明るみに出てきた世にも美しい鳥がいた。
そう、それは今回の旅の目標の1つでもあった憧れのシラオラケットカワセミだったのだ!
ずっと遭いたかった!夢にまで見た天使のような鳥が、目の前にいた。まるでデイドリームでも見ているような心地だ・・・。
シラオラケットカワセミは枝にとまると、長い尾をピコピコと上下に振る。茂った場所でも構わずテイルフリックするものだから、たまに尾が枝につっかかっていた。これではそのうち引っかかって尾羽が切れかねない。
そう言えば、鬱蒼とした森の中を歩くと、林床にはバスケットボール大ほどの丸いシロアリのアリ塚がいくつもあった。リュウキュウアカショウビンがタカサゴシロアリの巣を利用するように、シラオもまたこのアリ塚を穿孔して、中で子育てをする。例えば別の個体のシラオがアリ塚に入る様子を何度か見た。
雨季も終わりに近づき、繁殖期をほぼ終えた彼らは、もうすぐパプアニューギニアへの渡りの時期を迎える。
この個体は、木の低い位置にとまっては地表を見つめ、何度も地面に降りては虫を食べていた。海を渡るための体力補給に忙しいのだ。
【2010/03/05/オーストラリア Cairns,Australia;Mar. 2010】