映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密(2014年)

2015-05-14 | 【い】



 第二次大戦下のイギリス。ナチスドイツのUボート作戦により、大英帝国は国家の危機に瀕していた。それを回避するには、絶対解読不能と言われたドイツの暗号システム「エニグマ」を解読するよりほか、もう手はない。

 そして、その超難関国家事業のために呼ばれたのが、天才数学者アラン・チューリングを始めとする天才たちだった。激しい苦闘の末に解読に成功するが、チューリングの人生の苦悩は、むしろ、そこから始まった。

 
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 本作の主人公、アラン・チューリングは結構好きな数学者。なので、公開当初から見に行きたかったのだけれど、遅れ遅れになって、やっとこさ先日見に行くことができました。

 まずは不満な点から。

 大筋ではチューリングの半生をなぞっていますが、少年期の描写が“単なる同性愛に目覚めた時期”みたいな描かれ方で、ちょっとガッカリ。初恋の相手クリストファーの描写も中途半端で、チューリングの人生における“クリストファーとの出会いの衝撃度”があまり伝わってこなくて残念。

 実際のクリストファーは、学校一の秀才で、しかも人格的にも素晴らしい、優等生等という安っぽい勲章が似合わない少年だったのです。おまけに金髪碧眼の美少年(本作中では髪も瞳も茶色 でしたね)。このチューリングにとって“完全無欠”なクリストファーは、それまでダメダメ少年だったチューリングをあらゆる意味で根底から変革した人物で、彼との出会いがなければ、チューリングが後に国家を救った天才数学者となったかどうか、、、。この二人の心の交流、いや、チューリングの片想いは、もっと丁寧に描かれても良かったと思います。

 あと、ちょっと冒頭からデニストン中佐を悪人に描き過ぎな気が。そもそも、エニグマを解読するには数学的頭脳が必要なことは、彼が一番理解していたからこそチューリングが呼ばれたわけで、本作のように面接に来たチューリングに「なんでお前が」みたいなセリフはあり得ないのでは。解読に時間が掛かり、それなりに摩擦があったろうとは思いますが。

 とはいえ、映画としてまあまあ面白かったです。

 時系列があちこちするけど、別に見ていて混乱はしないし、エニグマがいかに解読困難だったかはよく分かる。解読後の苦悩も描いていて、単なる困難乗り越えました物語に終わっていないところも良いと思います。

 山場の一つである暗号解読を描くに当たり、実際にはかなり数学的理論が使われたそうだが、映画でそんな数学の群論だの何だのを披露されても観客はチンプンカンプンなわけで、それでも解読への盛り上げを作らなければならないというせめぎ合いで、脚本執筆はさぞや大変だったろうと思われます。本作では、難しい数学理論のセリフはほぼ皆無で、それでも、解読が困難を極めたことを非常に上手く描写しており、その点は素晴らしいと思います。

 あとは、まあ、何といってもカンバーバッチの演技力です。決してハンサムじゃないけど、人を惹きつける引力のある俳優ですよね~。声も低く渋くてgoo。一方のキーラはますます老けてしまい、26歳だかの設定だけど、せいぜい30代前半にしか見えません。相変わらずの、独特の品のない笑い方と痩せ過ぎな体型は、どうも魅力を感じられない、、、。輝いていないのよね、ヒロインなのに。

 アラン・チューリングを初めて知ったのは、2001年に教育テレビ(現Eテレ)の「人間講座~天才の栄光と挫折~天才数学者列伝」で、藤原正彦氏が歴史上の天才数学者について語っていたのを見た時でした。

 番組内で藤原先生が言っていたけれど、チューリングの不幸な晩年は、結局、国家機密に深く関わってしまったことにあったのだということに尽きます。エニグマを解読したことは戦後も絶対秘密、戦後のコンピューター研究はイギリスの水爆開発というこれまた超弩級の国家機密と関わっていたとか、、、。その張本人が犯罪者=同性愛者であり、同性愛者はプレッシャーに弱いという俗説の下、なおさら国はチューリングの存在を危険視したということのようです。本当に、不幸な要素が重なってしまいました。彼が国を救い、国民を救ったのにもかかわらず、、、。なんという仕打ち。

 死後60年経って名誉回復したのがせめてもの救いでしょうか。その栄光に比べ 、あまりに影の濃過ぎる人生に、胸が苦しくなります。

 「天才の栄光と挫折 天才数学者列伝」は文庫本になっているみたいです、読んでいませんが。「人間講座」のオンエアはバッチリ全8回VHSに録画してあったのでデジタル化しました。それくらい、とても面白い番組なんですよ、ホントに。また再放送するなりオンデマンドで配信するなりすれば良いのにと思います。どーですか、NHKさん。


 



天才は、やはり、平坦な人生を歩むことはできない運命にあるらしい。




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