





銀行のパートから契約社員になった主婦・梨花(宮沢りえ)。顧客の孫・光太(池松壮亮)と出会い、束の間の恋愛ごっこにハマるが、光太に150万円ほどの借金があることを知り、顧客のお金に手を付けてしまう。
一度やったら、後はもう止まらない。横領を重ねる傍らで、光太と贅沢三昧の日々を過ごす。けれど、そんなの続くはずもなく、、、。
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原作未読。NHKのドラマは初回だけで脱落、、、。かなり以前に、実際に大ニュースになった女性銀行員の横領事件があったけれど、それにインスパイアされた作品でしょうか。『八日目の蝉』もそうでしたが、角田光代さんの小説は、実際にあった事件を彷彿とさせるものがあります。
窓口でゼロが何個もつく伝票を事務的に処理するだけではなく、梨花のように、顧客宅を訪問して大金を預かったり渡したりしていると、いろんな思いが去来するだろうな、と思いました。
ある程度の金額を動かす人の暮らしぶりを目の当たりにすることで、何とも言えない不条理感を抱くこともあるでしょう。なるほど、こういう人なら財産を築いて当然だ、と思える人ばかりではないはずです。当然だと思える人の中にも、人格的に大いに疑問を抱く人もいるでしょうし。
お金の意味、持つものと持たざるもの、、、、何なんだ、この社会は。と、梨花は自覚することなく、憤りに似た不条理感を潜在意識に埋め込まれていったのではないでしょうか。
横領した金を若い男との逢瀬に注ぎ込んだから、梨花の行動は共感を呼びにくいけれども、私も梨花のような仕事をしていたら、「こんなお金、もっと有効に使った方が良い!」って考えが頭をよぎりそうな気がします。それは、普段はよぎるだけでも、何かが引き金となって実行してしまう、、、そうならないと言い切る自信は、私にはないかも、、、。梨花の場合、それが光太の借金だった、ということです。
ただ、その引き金を引くまでの描写が弱いかなぁ。人は良いけど恐ろしく鈍い夫(こういう悪意なく人をグサグサと傷付ける人いるんだよなぁ。大っ嫌い)との色褪せた日々を送る梨花にとって、光太に後をつけられたのは嬉しかったと思います。久々に感じた潤いだったんでしょうね。・・・にしても、光太と深い仲になるにはちょっと、、、飛躍が大き過ぎな気がするんだよな、、、。というか、池松壮亮が童顔過ぎで、(あり得ないけど)私は彼につけられても嬉しくない、、、。玉木宏にならつけられたいけど(あり得ないけど)。
、、、まあ、でも一旦そうなっちゃったら、後はずぶずぶとハマるのは分かるし、そうなってから聞かされた借金話ですから、梨花が一線を超えるのは十分アリな話です。現金、というか万札を何枚も何枚も常に手で触っていると、万札にいちいち持ち主の名前を書くわけじゃなし、誰の金だろうが知ったこっちゃない! というマヒした感覚になるのはすごくよく分かる気がします。私って、もしかすると横領女気質??
本作を、若い男に貢ぐために大金横領したバカ女、と切って捨てる評も目にしたけれど、そうじゃなくって、梨花は違う人生を自ら選んだ、ということだと思う。彼女の中にあるフラストレーションのカップが一杯になって溢れだしたときに、たまたま彼女は銀行の契約社員で大金をせしめることができるシチュエーションにいたということ。舞台は整っていて、幕が上がったのです、彼女のもう一つの人生の。
小林聡美演じる隅より子に「でももうここまで、おしまい」と言われ、窓ガラスを椅子でぶち破った梨花。おしまいにしてたまるか!という梨花の凄まじい執念を感じます。
宮沢りえは本当に美しいが、やはりちょっと細過ぎる。顔ももう少しふっくらして欲しい。なんか見ていて辛くなる。あと、あのラブシーン。大女優になりたいのなら、あんな中途半端な撮らせ方してちゃダメだと思う。
本作で一番イイ味出していたのは石橋蓮司さんですね。大島優子も頑張っていて、演技は悪くないけど、何だかちょっとオバサンぽかった。人は良いけど鈍い夫を田辺誠一が好演。役者さんたちは皆素晴らしかった、、、けど、なんだか今一つパワー不足というか、心にグッとくるものがなかったので、

私のものは私のもの。あなたのものも私のもの。
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