映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

グリーンブック(2017年)

2019-03-10 | 【く】



以下、上記リンクよりストーリーのコピペです。

=====ここから。

 1962年、アメリカ。ニューヨークのナイトクラブで用心棒を務めるイタリア系のトニー・リップ(ヴィゴ・モーテンセン)は、粗野で無教養だが、家族や周囲から愛されている。

 “神の域の技巧”を持ち、ケネディ大統領のためにホワイトハウスで演奏したこともある天才黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー(マハーシャラ・アリ)は、まだ差別が残る南部でのコンサートツアーを計画し、トニーを用心棒兼運転手として雇う。

 正反対のふたりは、黒人用旅行ガイド『グリーンブック』を頼りに旅を始めるが……。
 
=====ここまで。
 

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 言い訳がましいですが、別にオスカーを獲ったから見に行ったわけではありません。ヴィゴが結構好きなので見に行ったのです。……それにしても、史上最低のオスカー作品賞だそうで。まぁ、どんな作品でも文句言う人は必ずいます、ってことね。


◆予定調和にもクオリティってものがある。

 冒頭から、ヴィゴが出ているんだけど、容貌が違いすぎて、最初の1分くらい、それがヴィゴだと分からなかった!! 何この顔がデカいおっさん!! と思ったらヴィゴだった!

 それもそのはず。本作のために、何と14キロも増量したってんだから、そら顔も膨れるわ。頬張った顔の細マッチョのイメージしかなかったヴィゴ。腹も出ているし、立派なおっさん体型で、何だかちょっと可愛かった。

 ヴィゴ演ずるトニーは、何とも愛嬌のある男で、憎めない。一方のマハーシャラ・アリ演ずるドン・シャーリーはちょっと気取った感じ。バディものとしてはお約束の対照的なキャラ。

 予備知識はほとんどなく見に行ったけど、もうこの冒頭10分の展開で、最後までの成り行きが想像でき、それを大きく裏切ることなく本当にラストまで行くという、実に予定調和そのものな作品なのに、むしろ“お約束ならでは”の安心感と、人種差別という取扱注意なテーマをユーモアを交えて深刻になりすぎずに描写している辺りが、却って良かったのではないかと思う。

 私がいたく感心したのは、トニーは、一見ああだけど、実際には自分の職務に非常に忠実で、最初からドンとの契約を確実に履行する姿勢に徹していること。たとえ黒人が嫌いでも、ただ金が欲しいだけだからでも、とにかく、契約した以上はその内容をキッチリやり遂げようとする。まぁ、アタリマエっちゃぁ当たり前なんだけど。ピアノがスタインウェイかどうか確かめ、そうでないと分かると会場の管理人と喧嘩してでもスタインウェイを準備させるんだけど、私がトニーだったら「この会場にはスタインウェイはないんだってよ」と言って終わらせちゃいそう。また、ドンが面倒なもめ事に巻き込まれた時だって、テキトーに知らん顔することだってできただろうに、敢えてその面倒な場面に身体を張って乗り込み、場を納める手際はさすが!という感じ。ドンが見込んだだけのことはある。

 そして、トニーはとにかく家族思い、特に妻大好き男で、毎日毎日妻に手紙を書いているのが微笑ましい。間違いだらけの手紙でも、毎日送ってくれるのは、私が妻なら感激だ。そして、この手紙にまつわるドンとのエピソードが実に良い。ラストシーンの伏線になっているし、妻のキャラもよく表れていて、この辺りのシナリオはとっても上手い。

 人種差別にまつわる描写も多いが、私が一番、心に響いたのは、雨の中でドンがトニーに自分の心の内を叫ぶシーン。黒人でありながら、多くの黒人とは違う自分、白人に尊敬されながらも白人から差別される自分、アイデンティティの部分で完全な黒人とはいえず、白人になれるわけでもないという、我が身の置き所のなさは、想像することしか出来ないが非常に孤独だろうと感じられ、いたたまれない気持ちになる。それを聞いているトニーの表情がまた切ない。

 また、トニーがある場所で同じイタリア系のダチに遭遇するシーンがあるのだが、彼らのイタリア語での会話を聞いたドン(イタリア語も解すると後で分かる)は、トニーが仕事を辞めてしまうのではないかと本気で心配し、ダチたちと飲みに行こうとするトニーに「給料を上げるから、仕事を継続してくれ」と、それはそれは切羽詰まった表情で申し出る。この場面は、私は思わず涙してしまった。当然、トニーは辞める気などなかったのだけど、ドンの気持ちを考えると胸が痛い。

 トニーが石を盗るシーン、2人でフライドチキンを食べるシーン、、、などなどトニーとドンの心の距離がどんどん縮まるエピソードが描かれ、人種差別の露骨なシーンにギョッとなりながらも、十分楽しめる内容になっていると思う。

 
◆史上最低の作品賞、、、?

 私は、障害者モノと、人種差別モノは、基本的にあまり好きじゃないから見ない。好きじゃない理由は一応あるけど、書くと長くなるのでここでは割愛するが、まあ、誤解を恐れず簡単に言ってしまえば、見方が難しいからである。

 とはいっても、出演者次第では今回のように見るわけだけど、“やっぱり見なきゃ良かった”と後悔する作品が多い中、本作は見て良かったと素直に思える良作だったと思う。

 本作が、アカデミー賞で作品賞に輝いたことで、かなり批判が出ているんだとか。作品賞に値しないなどと、散々な言われ様だ。批判の主流は、「『グリーンブック』が現代的な問題を描いていない」というものらしい。授賞式では、スパイク・リー監督が、結果に不満で会場から退席しようとして止められたというエピソードもある。まあ、出て行きたいなら出て行かせてあげれば良かったんじゃないの? と思うが。

 大体、アカデミー賞が、そこまでの賞なのか??っていう素朴な疑問を一映画ファンとしては抱いてしまうけれども、まあ、映画業界の人々にとっては、そりゃ、ノミネートで終わるのと受賞するのじゃ天と地の差があるのだろうという想像はつく。実際、はぁ?という受賞作は過去にも結構あるけど、受賞作となれば劇場が激混みになったりもするわけで。

 そもそも、映画というのは本来娯楽であり、何も、社会問題を提起することにその本質的な役割があるわけじゃない。人種差別を描いているからといって、それを深刻かつリアルに描かなければダメだというのは、勝手な思い込みだろう。本作のように、ちょっと一緒に旅したくらいで、差別者と被差別者の間に友情が成立する、というのは安易すぎるという批判は、そっちの方が安易だと思うんだけどね。一体、映画にどんな高尚さを求めてんだよ、って話。少なくとも、本作は、差別を茶化したり揶揄したり等というふざけた態度ではなく、至極マジメに作られていることは間違いない。それだけじゃダメなの?

 上記のリンク先に書いてあるように、「入り口」になることの意義は大きい。たとえ、当事者にとって満足する内容でなくとも、そういう事実があったことを知るだけでも大きな一歩になる人々も大勢いるのだ(もちろん私もその一人)。

 映画に過剰な期待をするのもヘンだし、映画の影響を過小評価するのも傲慢だと思う。所詮映画、されど映画、なのだ。

 

 





音楽が良かったのでサントラを買います。




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4 コメント

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Unknown (Lunta)
2019-03-11 01:26:37
この映画に「史上最低の作品賞」なんて批判があるとは、知りませんでした。
ひどい作品賞なんて過去にいくらでもあるし、特に高尚ぶるとろくな映画選んでませんけどね。
ハリウッドはハリウッドらしく、わかりやすい映画がいいと思うけど。
↓インド旅行記、楽しみに拝見します。
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Unknown (すねこすり)
2019-03-11 19:53:14
Luntaさん、ご来訪ありがとうございます。
コメントまでいただき、嬉しいです。
アメリカではかなり評判悪いみたいで、私もビックリでした。
でも、こういうセンシティブだったり政治的だったりするテーマを取り上げて、ちゃんとエンタメに仕上げることができるアメリカは、ある意味羨ましいです。
Luntaさんのアフリカ旅行記、続き楽しみにしています♪
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観ました!! (フキン)
2019-03-19 16:19:14
ヴィゴは好きなので観に行きました!!
すねこすりさんもやっぱり、ヴィゴの事お好きだったんですね♪

いろいろ言われているかもしれないですが、単純に楽しめた映画です。

しかも、見終わってこんなに幸福感に包まれる映画って素晴らしいじゃないですか!
(映画館が幸せな笑いに包まれてた)笑
ヴィゴは男女問わず人気のある俳優ですね。

なんか、人柄がにじみ出ているような気がするんですが実際の彼はどうなのかな??

「運び屋」とどっちをみるかめちゃくちゃ悩んだんです。
「グリーンブック」は、エピソードもいろんなもので紹介しつくされてたから、いっぱい知りすぎてて楽しめるかどうか不安だったけど、それでも全く損した気にならずに見終えることができ、大満足の作品でした!!

ますます、ヴィゴが大好きになりましたわ♬

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運び屋も見たいかな…… (すねこすり)
2019-03-19 21:54:16
フキンさん、ご覧になったんですね!
そそ、幸福感に包まれる、本当そうでした、私も。
映画は見終わったときに「あぁ、見て良かった」と思いたいですよね。
ヴィゴ、私の勝手なイメージでは“頭の良い変人”なんですが、、、。実際はどうなんですかね??
似ていると言われるマッツ・ミケルセンもそうですが、何とも言えない色気を感じるところが好きなんです。
でも、この作品ではだいぶイメージちゃうちゃう、って感じでした
ヴィゴ、これからもいろんな作品に出てほしいものです。
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