作品情報⇒https://moviewalker.jp/mv85335/
以下、公式HPからあらすじのコピペです。
=====ここから。
1941年、ポーランド・ワルシャワのゲットーで暮らすポーランド系ユダヤ人フィリップ(エリック・クルム・ジュニア)は、恋人サラとゲットーで開催された舞台でダンスを披露する直前にナチスによる銃撃に遭い、サラと共に家族や親戚を目の前で殺されてしまう。
2年後、フィリップはフランクフルトにある高級ホテルのレストランでウェイターとして働いていた。そこでは自身をフランス人と名乗り、戦場に夫を送り出し孤独にしているナチス上流階級の女性たちを次々と誘惑することでナチスへの復讐を果たしていた。
嘘で塗り固めた生活の中、プールサイドで知的な美しいドイツ人のリザ(カロリーネ・ハルティヒ)と出会い本当の愛に目覚めていく。
連合国軍による空襲が続くなか、勤務するホテルでナチス将校の結婚披露パーティーが開かれる。その日、同僚で親友のピエールが理不尽な理由で銃殺されたフィリップは、自由を求めて大胆な行動に移していく…。
=====ここまで。
ポーランド映画。
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予告編を見て、こりゃ劇場行きだな、、、と思って公開を待っていた作品。本当は、公開初日に行きたかったんだけど、翌日、朝早くから予定があったので断念。1週間後のサービスデーに、大雨の中ようやく見に行ってまいりました。
ポーランド語、ドイツ語、フランス語と、必要な言語が必要な個所で話されており、どんなシーンも英語のブルドーザーでなぎ倒すハリウッド資本映画とは説得力がゼンゼン違います。英語圏の人はさ、言語の持つ重要性ってのをちゃんと考えなさいよ、、、、と、こういう映画を見ると改めて強く感じますな。ま、英語脳の彼らにそんなこと言っても、文字通り、馬耳東風でしょうけどね。
◆そんなのアリ?な復讐劇
冒頭は、ワルシャワゲットーに始まり、あの『戦場のピアニスト』と同じ舞台である。ゲットーの様子も当然ながらよく似ており、死体が路上にゴロゴロ転がっている脇で、舞踏会に興じている面々もいる、、、という、今から見ればかなりの地獄絵図である。しかし、さらなる地獄絵図が展開される。
フィリップが殺されずに済んだのは、まさに偶然による一瞬の行動の違い。たまたま物陰に入ったことで、銃弾を浴びずに済んだのだが、あのホロコーストを生き延びたユダヤ人って、シュピルマンもそうだったように、ほとんどこういう“運”による紙一重の差、、、だったんだろう、と改めて感じさせられる。
生き残ってしまったフィリップは、フランクフルトでフランス人と自称し、かなり投げやりな生き様である。ドイツ人の女をモノにして捨てる、ってのが彼なりの復讐なんだが、、、恋人を殺されたってのが大きいんだろけど、ハッキリ言って感心しない。見つかれば自身も殺されるわけだから、命がけの行動ではあるし、仮に相手の女が妊娠して子が生まれれば、ナチスの目指す純血主義を穢す、しかもユダヤの血で穢すことが出来るわけだから、、、まあ、復讐たり得てはいるのだが。下半身で復讐ってのが、短絡的だな、と。これはまあ、好みの問題だけど。
それに、人生投げているフィリップにとって、自身の行動が短絡的だろうが何だろうが、どうでも良いわけで。矛盾するようだが、ある意味、復讐は生きるエネルギーになるので、彼は彼なりの行動原理をエネルギーにして、あの状況を生き延びたとも言える。
で、予告編でそういう復讐劇だというのを知った時点で、まあ、多分そうなるんだろうな、、、と予感はしていたが、ありがちに、本当の恋に出会ってしまい、、、という展開になる。
そうすると、どういうオチにするのか、、、が気になるのだが、この場合、オチは2つしかない。復讐を完遂するか、本当の恋に生きるか、である。フィリップとリザの恋の様子を見ていて、これがどっちに転ぶのか、なかなか予想が難しくなっているのは、シナリオとしてよく出来ていると思う。
本当の恋の行方は敢えて書かないが、その後、フィリップは、あることが切っ掛けとなってトンデモな行動に出て、結果的に、こっちの方がナチスへの派手な復讐となる、、、というのが、一応、ラストの見せ場となっている。
なっているけど、……だったら、それまでの彼の身体を張った一連の復讐と称する言動は何だったんだ??という気もしないでもない。だって、ほとんどあのラストは、偶然の産物、フィリップの出来心によるもので、それで復讐を果たせてしまったんだからね。チマチマ焼いた肉をいざ食べようと摘まみ上げて大口開けた瞬間、横からカラスに搔っさらわれちゃった!みたいな感じかなー。
◆その他もろもろ
本作の原作小説は、戦後のポーランドで検閲されまくったものの1961年にどうにか上梓に漕ぎつけた、、、と思ったらすぐに発禁処分となり、2022年にようやくオリジナル版が出たという“問題作”らしい。
本作を見る限り、何が発禁処分の理由となったのか、明確には分からない。ナチス下のドイツで、多数のドイツ人女性と積極的に交わったから、、、か、あるいは、ラストのあの“トンデモな行動”がもっとリアルかつ政治的な背景も含めて詳細に描写されていたから、、、か、うぅむ。戦後のポーランドと言えば、ソ連の衛星国で何でもかんでもダメだった状況下、とりあえずヤバそうなものはダメ、、、みたいな感じだったのかも。
この原作は、まだ邦訳されていないので日本語では読めないのが残念。読めば、発禁になった理由も分かるかも知れないもんね。
フィリップを演じたエリック・クルム・ジュニアは、ドイツ語を懸命に学んで身に付け、撮影に臨んだそう。
エリック君の顔がかなり個性的で、これはイケメンと言って良いのか??とか思いながら、いやしかし、ちょっとなぁ、、、とかいうのも中盤以降の怒涛の展開からは気にならなくなり、いやもう、フィリップ、どーなっちゃうのよ??と手に汗握っていた。リザとの成り行きも、まあ想定内ではあるし、復讐に燃える男が“本当の恋に出会う”だなんて、えらく陳腐な話ではあるが、それをあまり陳腐化させていない監督の手腕はなかなかのものだと感心した。
その本物の恋のお相手リザを演じている女優さんが、誰かに似ている、、、、と見ている間ずーーーーーっと考えていて思い当たらなかったのだが、劇場を出た途端「あー、ウィノナ!!ウィノナだーー!!」とピンと来て、めっちゃスッキリしました。
フィリップのその後が気になる。
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