戦争に加担しても平和の侵害者ではない? すべての戦争を「悪」とすることは正しいのか(中編)【河田成治氏寄稿】
2023.09.23(liverty web)
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《本記事のポイント》
- ウクライナ戦争と台湾有事のアナロジーは成り立たない
- 戦争を否定した国連憲章は穴だらけ
- 「正戦論」の歴史とは?
河田 成治
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。
前編では、アメリカのウクライナへの支援が露北連携を強化させ、日本を取り巻く安全保障環境を極めて悪化させている点について、お話ししてきました。
このような国際政治上の危機を乗り越えるために、"専制国家"で軍事侵攻したロシアは悪、"民主国家"とされるウクライナは善という見方を超えて、大局的な意味で「戦争と正義」の関係について考えを整理していくことが求められていると考えます。
ウクライナ戦争と台湾有事のアナロジーは成り立たない
2022年2月24日に、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以来、1年半以上が経過しました。
いまだ停戦への道筋はまったく見えず、ウクライナ軍の反攻作戦も極めてゆっくりとしか進展しないため、今後も両陣営の果てしない長期消耗戦が続くと見込まれます。
日本を含む西側諸国では、「ロシア側が一方的な犯罪者であり、ウクライナが民主主義を体現した正義の側にある。だからこそ民主国家である国際社会は民主主義陣営の砦であるウクライナを守り、支援しなくてはならない」という論調が多数派を占めてします。
バイデン米大統領は、世界は「民主主義と専制主義国家の戦い」にあると捉えていますから、明らかにこの点に、戦争に善悪を見出していると言ってよいでしょう。
また日本でも保守層を中心として、「『力による一方な現状変更』は許されない。これを放置したならば、次は中国による台湾侵攻を暗に認めることに等しく、絶対に許されない」といった見解が広く支持されています。
確かに中国による台湾への武力侵攻は、絶対に抑止するべきであり、認めることは出来ません。
しかしロシアによるウクライナへの武力侵攻と、中国による台湾へのそれとでは、相違点が多くあります。これらを一つひとつ分析した上で、何が国際的な犯罪行為に当たるのか、一方が完全なる善であり、他方が弁解の余地なく悪だと決めつける根拠はどこにあるのか等を検討していくこと。それで初めて戦争の善悪のモノサシが見えてくるのではないでしょうか。
戦争を否定した国連憲章は穴だらけ
まず現在のように、あらゆる戦争が「違法化」された背景について見ていきましょう。
HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の世界情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ)。