《本記事のポイント》

  • 課題が山積みのウクライナ軍
  • 今後のウクライナ戦争の推移
  • 危惧すべきは、ロシア勝利後の国際秩序の変化

 

 

元航空自衛官

河田 成治

河田 成治
プロフィール
(かわだ・せいじ)1967年、岐阜県生まれ。防衛大学校を卒業後、航空自衛隊にパイロットとして従事。現在は、ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ(HSU)の未来創造学部で、安全保障や国際政治学を教えている。

今回も、Part 2でお話をしたウクライナ情勢について、引き続きお話ししていきます。前回、アメリカからの軍事支援金額が先細る可能性が高いことや、これによって戦争継続が困難になる見込みが高いことを指摘しました。

 

こういった点以外にも、ウクライナ軍には難問が次々と降りかかっています。

 

 

課題が山積みのウクライナ軍

(1) ウクライナ兵の人員不足が深刻化

ロシア-ウクライナ戦争前のウクライナの人口は4100万人程度。ところが現在は、ウクライナ支配地域の人口は約3000万人に減少しました。

 

このため新兵の動員が思わしくなく、一部では嫌がる市民を無理矢理連れ去る事件が多数報告されています。

 

また高齢者に動員がシフトしており、Part 2で触れた米タイム誌は、兵士の平均年齢が43歳まで上昇したと報じています。

 

一方ロシア人口は1億4600万人程度で、ロシア政府は今年だけで、新たに38.5万人の志願兵(註:徴兵ではない)が入隊したと述べています。ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、「遅かれ早かれ、単に戦う人間の数が足りないということになる」と話しており、ウクライナ軍の人員不足が最終的な勝敗を決める要因になる可能性は十分にあるでしょう。

 

(2) 厳しい経済状況

ウクライナの2023年の財政赤字は対GDP比で、マイナス27%とされています。一方ロシアはマイナス2.1%で、こちらも厳しいものの、ウクライナの惨状とは比較になりません。

 

なお同年のアメリカの財政赤字はマイナス6.3%、日本はマイナス6%程度と見積もられますので、ロシアの赤字幅のほうが小さいです。

 

しかもロシア政府は、2024年度はマイナス0.8%と大幅な改善を予測しており、それが本当ならロシア政府の財政は揺らいでいないということでしょう。

 

2024年度のロシア国防費は、過去最大の10兆7754億ルーブル(約14兆円)を予定しており、これは前年度比1.7倍、戦争前の2021年度の国防費の約3倍にも達します。これはロシアのウクライナ戦争への強い継続意思と長期戦への備えを示すものであることは間違いありません。

 

ではロシアは大幅に国防費を増額させても、財政は持ちこたえ、戦争を継続させられるのでしょうか。

 


 

HSU未来創造学部では、仏法真理と神の正義を柱としつつ、今回の世界情勢などの生きた専門知識を授業で学び、「国際政治のあるべき姿」への視点を養っています。詳しくはこちらをご覧ください(未来創造学部ホームページ)。