最近、町でEV(電気自動車)を多く見かけるようになっています。
電動モーターを原動機とした輸送機械は今になって出現したものではなく、意外と古くからありました。思いつくまま挙げてみましょう。鉱山の坑道内で使われたトロッコの牽引車や市場内を鮮魚や野菜などを載せて運搬したターレットトラック というものもありました。また、排気ガスを発生してはならない場所(冷蔵庫内)ではバッテリー式のフォークリフトが使われています。ゴルフコースでは数人が乗車できるゴルフカートもありますね。
これらの電動カーは普段は目にすることが少ないのですが、一方電気乗用車は最近よく目に付くようになっています。
今日はいわゆるEVと呼ばれる乗用車がどのぐらい環境にやさしいのかを考えてみたいと思います。
言うまでもなくEVは動力に電力以外を使っていない事がその特徴で、メーカーではゼロ・エミッション カーと呼んでいるようです。(表題の画像を参照)
さて、EVの所有者は走り終わった車のバッテリーを充電しておき、次の走行の為に備えなければなりません。ここで二人のEVの所有者を仮定してみます。
ひとりの方の自宅には太陽光発電の設備があり、その電力を自宅の電化製品とEVの充電に使えるものとします。そのEVは自宅の電源以外では充電をしないものとします。もう一人のEVの所有者は自宅には商用電源以外の電源はなく、EVの充電は街の充電スポットや自宅での商用電源に依存していると仮定します。
EVに供給される電源はどちらのものがゼロ・エミッションであるのかは明らかです。自宅に太陽光発電があり、それのみで充電している前者のEVは100%のゼロ・エミッションと言えるでしょう。一方、後者の場合はEVに充電されるための電気がどのぐらいの割合で化石燃料に依存しているかにより、EVの「ゼロ・エミッション」の度合いが決められます。
次にわが国の電力がどんな発電方法でどのくらいの割合で供給されているのかの統計を見てみましょう。依拠したのは資源エネルギー庁の電力調査統計 結果概要 【2019年11月分】 のものです。
これによると電力供給は次のようになっていました。
電気事業者の発電電力量は671.6億 kWh で、その内訳は水力(揚水式含む) が53.5億 kWh(8.0%)、火力が548.6億 kWh(81.7%)(燃料種 別:石炭232.1億 kWh(34.6%)、LNG 271.5億 kWh(40.4 %)、石油 9.9億 kWh(1.5%)ほか)、新エネルギー等※2が33.5億 kWh (5.0%)、原子力が52.5億 kWh(7.8%)などとなった。
これによると水力と新エネルギーを合計した電力が全電力供給量に占める割合は13%である。
それ故、一般のEVに供給される電力のエミッションの度合いはゼロではなく「100-13=87」%という事になる。
現行のEVのエンブレムの表記は「Zero Emisson」ではなく「87%Emisson」が現実を反映した正しい表記という事になり「Zero Emisson」は希望する目標と理解した方が良いのであろう。