トランプ大統領がアメリカの自動車会社のGMに人工呼吸器を製造するように命令を出したとの報道があった。
『国防生産法』なる法律がアメリカにあり、アメリカ政府が「国防上、必要な製品を作らせることを製造業者に命令できる」とされる。それを命じられた製造者は政府の命令に従う事を要求される。
これが日本ならば、「製造をお願いする」のであろうが、さすが、アメリカは違う、「命令する」のである。
さて、この法は1950年の朝鮮戦争時にアメリカが軍需品の調達を迅速・確実に行うために制定されたとされる。
「本日午後、私は国防生産法に基づき、ゼネラル・モーターズに、人工呼吸器に関する連邦政府との契約を受け入れ、優先して実行するよう命じた。人工呼吸器は大きな問題だ」(アメリカ トランプ大統領、3月27日、アメリカ東部時間)
この報道を見て思ったのだが、日本ではアメリカのように政府が強大な権力を行使できるような法制があるのか、と思ってしまう。
どこの国にも「戦時立法」というものがあり、戦争が起こった時には国家が強力な権限を行使して、私権を制限できることを認めている。だからトランプ氏は『今は戦時である。わたしは戦時の大統領である』などと発言できるのであろう。
さすがアメリカである。第二次世界大戦以降、絶え間なく戦争に関わってきた国である。
話を『国防生産法』に戻せば、この法律と同じような法制は太平洋戦争時の日本にもあった。「国家総動員法」 である。また、それに先立つもので「軍需工業動員法」 もあった。これらの法律は終戦と同時に廃止され、かってのそのような強大な権力を行使できる法制は現在の日本にはない。
今のコロナウイルスに対処する「都市封鎖」の命令が、わが国の法制上では簡単にはできない理由がそこにあるのだ。命令がないから、まだ安全だと思ってはいけない。
とにかく長引けば被害が大きくなることだけは確かなので、早期の収束の為には、私権の制限を伴う施策も国民は受け入れざるを得ないと思うのだが、どうだろうか。