アメリカはトランプ氏が大統領になる前まではグローバル主義の旗手のようにふるまっていました。しかしかっては孤立主義をとっていたこともありました。それは第二次世界大戦の初期には欧州戦線には参入していなかったのです。当時、ナチスドイツはヨーロッパ大陸諸国を平定し、英国だけがわずかに抵抗している状況でした。英国のチャーチルは、自国戦力だけではナチスドイツに対抗するには限界があることを悟り、アメリカに参戦を促していました。アメリカは当時は欧州の戦争に参戦することは、アメリカ国民の理解を得ることは難しいので、参戦はしないとの立場をとっていたのです。これを「孤立主義」と言います。この政策は別名をモンロー主義と言っています。そのような情勢の元、日本が真珠湾のアメリカ艦隊を攻撃し、太平洋戦争が開始されました。真珠湾攻撃の第一報を聞いたチャーチルは、小躍りして叫んだと言われています。おそらく、「これでアメリカは欧州戦線にも参戦するだろう」からです。
その後の戦局はアメリカの参戦により、結果的には連合国側の勝利に終わったのです。戦後、アメリカは戦争勝利と国土が攻撃を受けなかったこともあり、未曽有の好景気と大量消費社会になって行きます。アメリカは戦後、強大な経済力を背景に自国軍を世界各地に駐屯させ、「世界の警察」としての役割を積極的に担って行く戦略をとってゆきます。これが20世紀におけるアメリカの世界戦略でした。
ところが、21世紀を迎えるようになると、アメリカの世界戦略に陰りがではじめます。それは新興国である中国の躍進です。中国は「開放政策」以降、外国資本の導入による経済大国への道を歩み始めたのです。
これを面白くないと思っているアメリカに、それに輪をかけるかのようにトランプ氏が大統領になってしまう事態が発生しました。トランプの登場によりアメリカの世界戦略は大規模な転換の兆しが現れます。
トランプの大統領選での政策は「アメリカ・ファースト」でした。「アメリカ・ファースト」とは自国第一主義、すなわちかってのモンロー主義の再来です。
実際、最近のアメリカの外交姿勢を見ると、そのような「孤立主義」に進むような危惧を抱かせる言動が顕著です。パリ協定からの離脱、環太平洋パートナーシップ協定(略称: TPP)からの離脱、 外国に駐屯しているアメリカ軍の駐屯費用の大幅な駐屯国への負担要請、WHOからの脱退、などです。アメリカの財政赤字額は 21.5兆ドル(約2362兆円) 対GDP比104.3%)なので、トランプが「これ以上の大判振る舞いは無理だ」いう気持ちも判らないではありませんが、今のトランプが進めようとしている政策は、世界の「グローバリズム」からは明らかに後ろ向きの戦略に見えます。
所で、今仮にアメリカがトランプの言うように完全な「孤立主義」をとった場合、自国だけでやって行けるのでしょうか。自国内での生産と消費だけでアメリカ経済を運営してゆくことが出来るのでしょうか。
ここまで進んだグローバル化に掉さす試みは、はたしてうまくゆくのだろうか。
アメリカの座を奪い取ろうと画策している国家があることは、いくらトランプであろうと知らないはずはない。それでも「アメリカ・ファースト」と称するモンロー主義をとろうとしているトランプは歴史上、最も愚かなアメリカ大統領になっても良いと思っているのであろうか。
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