ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

映画「トランボ」を観て。

2016年12月21日 09時33分40秒 | 映画
先日、「トランボ<ハリウッドで最も嫌われた男>」と言う映画を観ました。

この映画は冷戦期の初期にアメリカ合衆国で吹き荒れたマッカーシズムに引っかかり、ハリウッド10(テン)と呼ばれた一人の脚本家の男の不屈な生き方を描いた作品です。

映画には様々な立場の人たちが登場します。当時のハリウッドの俳優達や映画人は大まかに言うと二つの陣営に分かれていました。
トランボたちの共産党同調者とみなされた人達、それに対して愛国心あふれる保守主義者の陣営、と別れていました。
もちろん、トランボたちは少数陣営です。対する保守主義者の筆頭はジョンウエインとロナルド・レーガンでした。
ロナルド・レーガンは当時の「全米映画俳優組合」の代表でした。ロナルド・レーガンは映画界から政界に進出してカルフォルニア州知事からアメリカ大統領にまでなった事は周知のことです。
また、「アメリカの理想を守るための映画同盟」と言う組織もありました。これの議長を務めていたこともあるのがジョンウエインでした。

少数陣営のトランボたちを支持する俳優や映画制作者もいました。俳優ではカーク・ダグラスでした。
彼は、「スパルタカス」で大ヒットを遂げますが、それの脚本を書いたのがダルトン・トランボでした。
それまで、トランボは「ローマの休日」などの脚本を書いていましたが、当時は映画界から追放されている身でしたので、友人の名を借りて書いていたのでした。
「スパルタカス」のクレジットにためらいもなくトランボの名を出すことにしたのはカーク・ダグラスであったとのことです。
この映画の大ヒットによりトランボは映画界に復帰を果たすことが出来たのでした。

また、B級映画製作会社の社長がトランボを起用するにあたり言ったセリフが振るっていました。
「トランボたちの主義や思想には興味はない。俺が仕事をするのは、酒と女と金のためだ。俺に金を儲けさせてくれるのが俺の味方なんだ。」と言ってトランボに脚本の仕事を与えたのでした。痛快な場面でしたね。思わず、笑ってしまいました。

「トランボ<ハリウッドで最も嫌われた男>」、この映画は冷や飯を食わざるを得ない立場に追い込まれながらも、自分の家族のため、そして友人たちの為に、自分のできることを偽名を使ってまで使命を果たそうとした男の物語でした。
そして、後日汚名が晴れ復帰を果たした時の彼の家族の喜びと幸福感が良く描かれた作品でした。
トランボ、彼は男の中の男と言えるでしょう。

少し前に、かってアメリカで吹き荒れた「赤狩り」に関して、私のブログでも触れたことですが、劇作家のアーサーミラーも赤狩りのブラックリストの対象者でした。
アーサー・ミラーは「るつぼ」という戯曲を書き、それに対抗しようとしたのですが、トランボはまた彼なりの方法で赤狩りの嵐に立ち向かったのだと思いました。










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